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山頂だけを目指さない生き方~『ひとつとなりの山』池内紀著(評:稲泉連)

光文社新書、800円(税別)

2008年12月24日(水)

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評者の読了時間3時間00分

ひとつとなりの山

ひとつとなりの山』 池内紀著、光文社新書、800円(税別)

 ひとつとなりがいい──と、本書の冒頭で池内紀さんは書いている。

 深田久弥の『日本百名山』に載っているわけでもなく、多くの登山者が行列をなして登ることも決してない山。熊笹が少し生い茂っているくらいの、普段はあまり人の来ない山。 

 静けさに満ちた登山道をゆっくりと、着実に、周囲の風景や植物を楽しみながら登る。

 20の山をめぐるエッセイが収められた『ひとつとなりの山』は、そんな〈ひとり登山〉を愛する著者の眼差しやユーモアに、ほっと癒される一冊だった。

 一つひとつの旅にはもちろん、それぞれテーマがある。

 ただ、そこは〈若いときはともかく、ある程度トシをとると、山とのかかわり方も、「ひとつとなり」がいい〉という著者のこと。

〈ピークハンターのように山頂ばかりめざさない。途中のどこかを自分の山頂にして、そこで切り上げてもいいのである〉

 あくまでも興味の赴くまま、山で見つけた逸話や出来事が、ふとした調子で描かれては後景に退いていく。

旅はつくるもの、材料は好奇心

 宿の主人が噂していた幻の魚を追い、名もない湖を大雪山系の秘境に探した一日。青森県の戸来岳ではキリスト伝説を検証しつつ、ツルの絡まったブナの古木の前でしばし足を止める。

 早池峰山を宮沢賢治の詩とともに登れば、長野県の独鈷山で「にわか修験道者」となり、槍ヶ岳のとなりの燕岳では「山で一泊 麓で二泊」の贅沢な旅程を組む。

 とことん深入りするようなことはないが、といって横目で見ながらあっさり通り過ぎるわけでもない。あれこれと思いを巡らせていた矢先、広大な風景が目前に現れて言葉を失うこともある。ドイツ文学者であると同時に旅エッセイの名手とも呼ばれる著者の筆致は、「旅人」としてのバランス感覚や、程よい好奇心の打ち出し方を教えてくれているかのようだった。

 併せて著者の『ひとり旅は楽し』(中公新書)を読んでいると、こんな記述に出会った。

《実をいうと、ひとり旅にとりわけ欠かせない必需品がある。無限の好奇心であって、それを自分なりに表現する。そのときはじめて旅が自分のものになる。(中略)旅はするものではなく、つくるもの。旅の仕方で、その人がわかる》

 では池内さんはこれら「ひとり登山」の旅を、どのように「自分のもの」にしていくのだろうか。

 「山ごころ」や「山の心」という表現が本書ではときどき使われる。

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