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いろいろな角度からの世界史

『毒と薬の世界史――ソクラテス、錬金術、ドーピング』 船山信次著 中公新書 800円(税抜き)

  • 松島 駿二郎

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2008年12月26日(金)

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『毒と薬の世界史 ソクラテス、錬金術、ドーピング』 船山信次著

『毒と薬の世界史――ソクラテス、錬金術、ドーピング』 船山信次著

 毒と薬は紙一重。本書は地球の誕生から、現代までの、この紙一重の毒と薬の世界史となっている。太陽系の中で地球という惑星が現在の形を取り始めたのはざっと46億年前。灼熱した球体が次第に冷えて、地球上に微生物が誕生したのは32億年前。このとき同時に鉱物由来、微生物由来の毒も誕生した。

 微生物から進化した生命はやがて植物や動物の形を取り始め、繁栄を始めた。この時期にすでに毒性物質が地上には溢れていた。

 ところで、地球上に登場した何千億もの生命体の99.9%は絶滅してしまった。この厳しい生き残り競争の中で、現在もっとも繁栄しているのは人類(ホモサピエンス)である。

 それでも、現今の地球上には何千万種とも言われる生命体が生き残っている。その中には生まれながらに毒性を持った生物が多いし、薬効を持った生物も多い。

 毒性は使い方ひとつで薬に転じる。また薬は毒に転じる。

 メソポタミア文明(チグリス川とユーフラテス川に囲まれた地域)では、その遺跡の発掘と、彼らの独特の粘土板に刻まれた楔型文字の解読によって、250種以上の植物性薬、180種の動物性薬、120種の鉱物性薬の記述があった。これらの薬は裏を返せば毒と言うことでもある。

 メソポタミア文明は、そのままエジプト文明に受け継がれる。エジプト文明の記録はパピルスという、織線布に書かれたヒエログリフで伝えられた。なかでも、ドイツ人のエーベルが発見したエーベルス・パピルスには、700種もの動植物鉱物の薬の記録が書かれていた。もちろん毒も。

 古代ギリシア時代の哲人ソクラテスは、死刑を言い渡され、毒殺による死を選んだ。このときソクラテスはドクニンジンの種子のエキスをあおいだ。その毒死の様子は弟子のプラトンによって、詳細に書き記されている。麻痺がゆっくりと足先から進行していき、その麻痺が心臓に達したら、それが死とされた。

 自死を迫られたクレオパトラは、毒ヘビなどを調べ、死の苦悶のいちばん少ないと言われていたエジプト・コブラを選んだ。コブラはイチジクの盛り皿に隠され、イチジクを食べながらコブラに噛まれる手段を選んだという。

 草木に含まれる毒と薬は、草木学と言う学問で大いに発展した。その嚆矢となるのは古代ローマ皇帝ネロの時代西歴77年に発刊された『マテリア・メディカ』だった。この書では動物薬80種、植物薬600種、鉱物薬50種と分類されている。本書には「毒は薬なり」という言葉もあるという。

 本書は中世の錬金術に触れ、やがて、現代の薬物に及んでいく。最後は麻薬やドーピングの問題だ。毒と薬という切り口で、新たな視点の世界史をうまくまとめてある。

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