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「すべてが他人事」の環境が、欲望のスタイルを変えた

水島精二監督「機動戦士ガンダム00」(2)

  • 渡辺由美子

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2009年1月8日(木)

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―― “ビッグネーム叩き”という現象があるというお話をうかがいましたが、何か「巨悪」みたいなものを見つけて批判を繰り返す行為は、どうして起きるのだと思いますか。やむにやまれぬ正義感でしょうか、それとも日常で抱える不満のうっぷん晴らしなのでしょうか。

水島 両方じゃないでしょうか。「批判することで良くなるかもしれない」という思いは、心の中にあるでしょう。自分は憂さ晴らししているだけなのだと思ったら、寂しくなりますからね。自分の中で、どこかに正義を保てないと、俺、何をやっているんだろうというところにいってしまうと思うんですよ。人に批判の言葉を叩きつけるためには、そこになにがしかの「正義感」を持っていないと難しいんです。

―― では、その正義は、どのような拠り所に支えられているのだと思いますか。

匿名の正論は、実行できない

「機動戦士ガンダム00」 水島精二監督

水島 精二(みずしま・せいじ)
東京都府中市出身、1966年1月28日生まれ。東京デザイナー学院卒。撮影、制作進行を経てアニメ演出家。『機動戦士ガンダムOO』のほか『ジェネレイターガウル』『鋼の錬金術師』『大江戸ロケット』などで監督を務めている(写真:星山 善一 以下同)

 自分が言っていることが、いわゆる「社会の正義」に同調したものなのだと、そういうふうに思いたいのかなと。

 叩きをする人たちは、ネットが“民意の集合体”のように見える構造を利用して、一番分かりやすい真っすぐな「正義の言葉」を投げてくるわけです。見ていて興味深いと思うし、これが今の時代性なのかなと思います。

―― それが「時代は“正義”を欲望する」ということですね。

 でも、正論を言う人が、本当にそのように行動できているかというと、それはまったく別ですからね。

 正論はあくまでも論でしか無くて、実際に、その通りに行動してみろと言われたらできない人がほとんどですよね。

―― 確かにそうですね。

 たとえば、どこか名前の知られた組織がミスや事故を起こして、それに対して批判が出て、社員が謝罪するというパターンがあって。ネットでよく見るのは、その組織に所属している人間を徹底的に批判することなんですが、批判する側は、いざその批判を自分が受ける側になったらどうするかというのは考えていないんですね。

 批判をする側は、自分の発言をいわゆる社会正義だと思って書き込むんですけど、その個人に対して「あなたは失敗したことはないんですか?」と問うと、みんな、おっとって引いちゃうと思うんです。

―― それはなぜだと思いますか。

 それは言葉に、「自分の行動」というバックボーンがないからです。「その時、自分ならどうするか」という肝心なところがないと、机上の空論になってしまいますよね。頭の中のロジックだけで考えた正論というのは。

―― 社会正義と個人は別物と。「自分ならどうする」というところが肝心なんですか。

 そうですね。それが発言に責任を持つ態度だと思います。

 ネットというのは、名前を伏せて発言ができるから、言いっぱなしになれるというのが「いい」んですよ。発言に相応しい行動をとっているかどうかが問われない、安全なところにいられる。だから叩かれない。自分の身に危険が及ぶというのは、名前をさらしているからこそじゃないですか。

 匿名というのは、名前=「自分」がいなくていい状態なんですよ。

 「人ごと」として発言できるから、その分、無責任になれる。言ったことに、責任を取らなくてもいいという。責任を取らなくていいというのは、現実にはなかなかない場ですよね。

無責任に発言できるメリット・デメリットが社会を大きく変えた

 だから匿名はダメだ、発言は必ず実名にしろ、ということを言いたいんじゃないです。無責任に発言できるということには、もちろんメリットもある。そしてこうした怖さもある。両方を含めて、ネットが利便性だけでなく、欲望やモラル、社会の雰囲気に至るまで、すごく世の中を変え、動かしているのを感じますね。

―― それは監督自身も…

 自分自身も、こうした変化にはものすごく影響を受けています。それはもう自覚した上で、作品作りをしているので。

―― やっかいな時代の欲望と向き合うわけですね。

 ただ、批判を繰り返す人に言いたいのは、ネット上では「正論」は強力な武器になるとしても、それが無記名な、名前を隠している発言である限り、世間での評価というのは、実際には低いんだよ、ということですね。

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