• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

大統領を退きましたが、どう見ても黒幕です。本当に(ry~『ロシアはどこに行くのか』
中村逸郎著(評:荻野進介)

講談社現代新書、740円(税別)

  • 荻野 進介

バックナンバー

2008年12月25日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

評者の読了時間2時間05分

ロシアはどこに行くのか──タンデム型デモクラシーの限界

ロシアはどこに行くのか──タンデム型デモクラシーの限界』 中村逸郎著、講談社現代新書、740円(税別)

 年末に発表される米タイム誌恒例の「パーソン・オブ・ザ・イヤー」、今年はバラク・オバマが選ばれた。順当な人選だろう。そういえば去年はロシアのプーチンだった。

 元KGBのスパイで、2000年に大統領に就任すると、天然ガスや石油の価格高騰を追い風に、一時は債務不履行で崩壊しかけた同国を世界第5位の経済大国にまで成長させた。その一方で、政敵を追い落とし、民主化を後退させ、批判者の口を遠慮なく封じる非情な権力者という面も併せ持つ。

 08年3月に行われた大統領選では、国民からの圧倒的な支持に、「最長2選まで、という憲法規定を変更し、3選目指して出馬か」という憶測も流れたが、結局、後進メドヴェージェフに座を譲り、自身は首相という地位に収まった。

 本書は、そのメドヴェージェフ大統領とプーチン首相が形成する支配体制を「タンデム(※縦並びの二頭の馬)型デモクラシー」と名づけ、その行方を占うものだ。

 プーチンはなぜ大統領の3選を断念したのか。一般的には、支配者が憲法を改正し長期政権化した中央アジアの旧ソ連構成国と一線を画したかったから、といわれている。

 これに対して、著者は反論する。プーチンは中央アジア諸国のどの支配者よりも実は権力志向が強いのではないか、と。

 大統領の任期は最大8年だが首相には任期がない、下院に巨大与党があれば大統領の弾劾が可能(現在がそうだ)、行政機関における裁量権の多くを握るなど、首相のほうが有利な点がいくつもある。それを見越してプーチンは、彼自身の権力の肥大化を警戒する欧米諸国に配慮して任期満了で退いた、と見せつつ、実は任期のない実質的な最高権力者としての首相に就任したのではないか。

 著者は政治学者だが、そうしたプーチン政権の特徴を文献や資料を通して論証していくわけでない。その手法はむしろジャーナリスティックであり、注目するのはマクロではなくミクロの事象である。ごく普通の市民が、不正選挙や脱税、賄賂の授受に手を染めている様子から、同政権の矛盾を浮き彫りにしていく。

 発端は、08年の元日、ロシア人の友人から、つい1カ月前の下院選挙で用いられた本物の投票用紙を渡されたことだった。

行政ぐるみの不正選挙と連鎖する賄賂

 〈未使用の投票用紙は常識的にいって、投票終了時にすぐに処分されるはずである〉。不正の臭いをかぎつけた著者は、モスクワ市内の区役所に勤務する女性職員との接触に成功。取材をもとに、下院選挙当日の行動、投票の仕組み、報酬など、不正選挙の実態を微に入り細に入り描写する。

 当日、彼女は5人組の「部隊」の一員として計28箇所の投票所を廻り、行く先々で別人になりすました。彼女の部隊だけで「総数で250票を投じた」という。なりすましの他にも職場単位の強制投票、投票所変更許可証を悪用した複数回の投票、死者名義での投票など、不正の手口は実に多様だ。

 結局のところ、その地区で5000票が不正に投じられ、与党「統一ロシア」の得票率を13ポイント押し上げた、と著者は試算する。

 区役所職員の彼女に不正を持ちかけたのは、顔見知りの区議会議員で、「指示に従わないと、区長が君を解雇するぞ」と脅してきたそうだ。ロシアでは区長は市長に任命され、市長は大統領に任命される。つまり、「与党を勝たせよ」という指示がプーチン政権の中枢から市へ、そして地区へ下ってきた可能性を著者は示唆するのである。

 不正は選挙だけではない。賄賂も深刻な状態だ。ロシア国内のある調査によれば、全土で流通している賄賂総額が全勤労者への月支給総額の40%に上るという。

 賄賂の横行はプーチンの政策と密接に絡んでいる。エリツィン時代のロシアを「権力の空洞化」「国家の私有化」と非難したプーチンは、「行政手続きの効率化を」というスローガンのもと、連邦職員をはじめ公務員を大幅増員させた。処理の迅速化は確かに進んだものの、それと引き換えに、公務員の賄賂要求が増えた。

 著者が取材したある税関ブローカー(通関代行者)は、毎月、月給の10倍もの賄賂を輸入業者から受け取り、2種類の“犯罪”に手を染めている。

 ひとつは輸入品の等級を低く見積もって関税を下げる「グレー申告」。本来の課税額より賄賂のほうが安上がりで手続きも敏速になるため、輸入業者もブローカーの請求に快く応じる。ブローカーが受け取った金額の何割かは、「グレー」で通してくれる税関職員の懐に流れる。

 もうひとつは申告書類そのものを偽装する「ブラック申告」である。この場合、輸入品の記載欄に「ねずみのための絨毯」など理解不能な品名を書き、税関職員に渡す。

コメント0

「NBO新書レビュー」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

意外なことに、伝統的な観光地が 訪日客の誘致に失敗するケースも 少なからず存在する。

高坂 晶子 日本総合研究所調査部主任研究員