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病気扱いしないでよ~『女装と日本人』
三橋順子著(評:栗原裕一郎)【奨】

講談社現代新書、900円(税別)

  • 栗原 裕一郎

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2008年12月26日(金)

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女装と日本人

女装と日本人』 三橋順子著、講談社現代新書、900円(税別)

 はとバスのツアーには「ニューハーフ・ショー」が組み込まれたものがあって、定番の人気メニューなのだそうだ。日帰りあるいは一泊程度のプランで東京近郊を観光するのがはとバス・ツアーであるから、その客層は主に(地方在住の)善良な人々といってよいだろうが、そういう人たちが抵抗感少なくニューハーフという存在を受け容れている姿に着目するところから、本書『女装と日本人』は書き起こされている。

〈こうした現象は、世界的に見ると、かなり特殊なことのようです。少なくとも欧米諸国においては。あるアメリカ人の男性研究者は「欧米の大都市にもそういう(女装した男性がショーを見せるような)場所はありますが、それは特別な(性的嗜好の)人たち(男性同性愛者)の場で、かなりアンダーグラウンドで、ポピュラーな場所ではありません」と教えてくれました〉

 「性同一性障害」という概念がそれなりに普及するかたわらで、ゲイや女装者を「変態性欲者」と見る意識も根強く残っているのが現代社会の現状だが、そのどちらの抑圧とも無縁に、ニューハーフのような存在を自然体で許容してしまう、どころか積極的に愛好しさえする独特のメンタリティが日本社会にはあるというのである。

 本書は、異性装ならびにあいまいな性がどれほど日本文化に深く根ざしたものであるか、古代から現代まで総ざらえして追求したものだ。

 著者の三橋順子は、性別違和感に悩んだ末に「女装者」という在り方に自分のジェンダーを見いだした人物。ただし、性的嗜好は「ヘテロ」つまり「異性愛者」だそうだ(妻子あり)。

 一口に「女装者」といってもさまざまなタイプがいて──著者の分類によれば5タイプ──、みんながみんな「性同一性障害」という「症例」に収まるとはかぎらない(「症例」で括れるタイプはむしろ少数であるという)。

 先に「抑圧」と書いたが、著者は、「性同一性障害」という概念もまた性別二元論と異性愛絶対主義に毒されたイデオロギーであると批判している。

〈性同一性障害という考え方は(……)、医学という学問的権威を背景に「性同一性障害」という病名をつけ(レッテルを貼り)、精神疾患をもつ者として囲い込み(病理化)、「治療」という形で「正常化(normalize)」しようとする性格をもっています。その根底には、性別を越えて生きようとすることを社会悪とし、「変態性慾」と決めつけた一九世紀以来の欧米の精神医学の基本思想がまだ息づいています〉

古くはヤマトタケルの神話から

 日本の社会は本来トランスジェンダーを包摂するシステムを備えていたが、近代になるにつれて包容力が薄れ、西欧化とともに同性愛や異性装がタブー視されるようになっていった。一方で、前近代の意識を引きずった庶民のレベルには異性装者や同性愛者に対する親和性が残されることとなった。

 日本の近現代社会はそういう二重性を帯びたものだった、というのが著者の歴史認識である。はとバスツアー客の老若男女たちがニューハーフに示すような柔軟性は、日本社会がもともと持っていたメンタリティそのものであるというわけだ。

 これでだいぶ明らかになったと思うが、著者の認識というか目標は、トランスジェンダーという存在を「あいまいな性」「第三の性」としてありのまま受け容れる社会の実現であり、本書の膨大な検証作業は、ひとえにその目的のためにおこなわれているのである。

 本書は大きく2部に分れている。第1章から第4章では古代から戦後までの女装文化を追っている。第5章から終章は、現代の女装文化と、そこから見ることができるセクシュアリティの多様性の解説に当てられている。

 第5章だけちょっと毛色が違っていて、「現代日本の女装世界」と題されているが、これ、著者自身の生い立ちを振り返った短い自伝なのだ。

 つまり、古代から戦後まで総覧してきた女装文化が、この第5章でググッと著者自身の問題として引き寄せられ、以降は当事者という視点から問題が検討されていくという構成になっているのである。

 女装文化の端緒としてまず置かれているのはヤマトタケルの神話である。父・景行天皇に熊曾建(くまそたける)兄弟の征伐を命じられた小碓命(=ヤマトタケル)は、女装して接近し二人を仕留める。

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