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もう、戻らない――ミッシェル・ウィー

I felt like I steadied the ship.(船をちゃんと操ることができた)

  • 舩越 園子

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2009年1月8日(木)

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 賞賛と期待が、嘲笑と批判に一転する現象――どんな世界にもあるのだろうけれど、米ゴルフ界に彗星のごとく現れ、その後の不調で低迷したミッシェル・ウィーに対する評価は、まさにそんな「一転現象」だった。

 なぜ、世間の評価が一転して逆になるのか。その影にメディアの影響力があることは確かだ。ウィーの一挙手一投足を知り得るのはメディア。かつては、何を言っても何をやっても、それを「すごい」「さすが」と報じていたメディアが、ある時期を境に一転して「生意気だ」「とんでもない」と報じれば、そんな報道を受けた大半の人々は、やっぱり「生意気だ」「とんでもない」と思うだろう。そうなってしまったら、もはやウィー自身がどうあがいても、彼女を眺める世間の視線は冷たくなる。

 思えば、ゴルフ界にその名が知られるようになって以来、ウィーはスターへの階段を猛スピードで駆け上っていった。12歳で米女子ツアーに初出場。15歳でプロ転向。10億円超という破格の契約金を手に入れ、夢のマスターズ出場を目指して男子ツアーにも挑戦した。そんな彼女を米国のみならず世界中のメディアが「天才少女」ともてはやし、アーニー・エルスの「ビッグ・イージー」にちなんで、「ビッグ・ウィージー」なんて呼称も生まれた。

 だが、2007年の春に手首を故障。それがきっかけで不調に陥ると、論調は一転した。「プロ転向が早すぎた」「女子の試合にも勝てないのに男子の試合に挑戦することが間違い」「思い上がっている」「やる気がない」「大金を手に入れて、戦うモチベーションが欠如した」等々。

 もう、ウィーのキャリアは終わりだ――そんな声が蔓延する中で、彼女は米女子ツアー出場権の自力獲得を目指し、一般の挑戦者たちに混ざって昨年終盤のQスクール(予選会)に臨み、見事、7位タイで合格。そのとき、彼女が口にした言葉が実に印象的だった。

I felt like I steadied the ship.
(船をちゃんと操ることができた)

 この言葉には、2つの意味合いが含まれていたのだと思う。1つは、世間の荒波の中で自分という船をしっかり操り、プロゴルフ界に生き残ることができたという意味だ。スランプに陥り、冷ややかな目が向けられ続けていた間、ウィーはスタンフォード大学に通いながら、しばしプロゴルフ界から遠ざかり、しかし自身ではゴルフの復調のために必死の努力をしてきた。

 「目を閉じ、耳をふさぎ、私に関して(メディアに)書かれたことをすべて見ないように聞かないようにしてきた。それは、辛い日々だった」

 大人にとっても辛いことを、まだ19歳の彼女が乗り越えた。それこそが、彼女の生まれ持ったスターの資質なのだろうと、つくづく思う。

 「船を操った」のもう1つの意味合いは、自分のゴルフスタイルに関することだ。300ヤード超の飛距離を誇るウィーは、かつては飛ばして攻めるゴルフばかりをしていた。だが、低迷後は、アグレシッブ一辺倒のゴルフでは通用しないこともあるという状況判断を学んだ。

 Qスクールは5日間の長丁場で調子を維持することが最優先課題。そして、ツアーカード獲得が目的ゆえ、必ずしもトップになる必要はない。ミスをできる限り防ぎ、トップ20に食い込むためには、ドライバーをあえて3番ウッドやロングアイアンに持ち替える勇気が求められる。そんなゲームマネジメントをやり通し、「飛ばしたい」という欲望に駆られて暴走しそうになる「自分=船」を抑制できたという意味で、彼女は「船をちゃんと操った」と言ったのだろう。

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