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読書と脳の切っても切れない関係

『プルーストとイカ 読書は脳をどのように変えるのか?』 メアリアン・ウルフ著 小松淳子訳 インターシフト 2400円(税抜き)

  • 松島 駿二郎

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2009年1月9日(金)

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『プルーストとイカ 読書は脳をどのように変えるのか?』 メアリアン・ウルフ著

『プルーストとイカ 読書は脳をどのように変えるのか?』 メアリアン・ウルフ著

 まことに奇妙な組み合わせのタイトルである。プルーストとは、難解至極な『失われた時を求めて』という大長編の著者である。一方のイカは海に泳ぐイカにほかならない。プルーストの読書体験を持つ人は、読書の難しさを思い知っているだろう。では、文字を読むとはどういった脳の働きによって可能となるのだろうか。

 脳の働きは複雑なニューロンのネットワークの発火によって、情報が最適の脳の部分に伝達されることで、最適な結果をもたらす。かつてニューロンの研究家は、もっとも単純なニューロン軸索(神経軸索)を持つイカに注意を集中していた。

 太古の時代、人が文字を発明したとする。実際にいくつもの文字を発明してきた。そのとき、人間の脳はその文字にどう反応してきたのだろう。

 「お気に入りの一冊を手にして過ごした1日・・・子供のころ、あれほど満ち足りて送った日々はあるまい」

 これはプルーストの『読書について』からの引用だが、本書の著者は書物との遭遇をこれほど的確に述べた文はないとする。あたかも、太古の時代に誰かが書いた文字を洞窟の中で見つけたホモサピエンスのように、プルーストにとって本を囲んだ空間は子供にとって聖域だった。

 しかし、そのような聖域はどこにでも、誰にでもある。著者は小児発達という分野の専門家である。「読字」を始めるときの子供の脳の状態を観察し、分析し、小児脳の発達の手順を解明しようとする専門家だ。

 例えば、このコラムを読んでいる読者は、いったいどのようにして脳が本稿を読めるようになるのだろうか。本稿を読むには、一連の認知システムが素早く活動しなくてはならない。注意、記憶、視覚、聴覚というプロセスを素早く、滑らかに駆動させなくてはならない。

 日本語を読む場合、日本語の記憶のほぼすべてから目の前の言葉を検索する。しかも、グーグルよりも素早く、電気火花が散る一瞬よりも速く。

 人間の子供がイカよりましなのは、認知野が、イカよりもゆっくりと出来上がることだ。キリンの赤ちゃんは、誕生1週間で走る。人間の場合は早くても走り出すのに1年はかかる。これが、脳のことになるとさらにゆっくりだ。

 最初に稼働し始める感覚は聴覚であり、出生6カ月前に脳と結びつく。この結びつく機能をミエリン化という。ミエリンはニューロンの軸索にまとわりつく物質で、ミエリン層は伝送速度が滅法速い。しかし、形成されるのはゆっくりだ。ミエリン層が厚いほど、脳の動きは速くなる。

 ミエリン層が十分形成されていない幼い子供に、教育ママが字を教え込むことは、ミリエン層の働きが不完全なために、子供に大きなストレスを与える。ミエリン層が形成されるまでゆっくりと子供を遊ばせておいても、不都合なことは何もない。書物だって同断、放っておけば、ミリエン層が読め読め、と要求し始める。

 そのときに読み始めると、読んだ内容は子供にとって聖域となって、保存される。そうでしょう、プルーストさん。

 世の教育パパやママに読んでもらいたい。

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