今回お話を伺った医師の中村伸一さんは、福井県の山村にある診療所で、そこに住む人々の生活に寄り添いながら地域の医療を支える活動をしている。高齢化の進む地域で、診療所での診察のほか、各家庭への往診も行う。
都市部の大きな病院とは自ずと患者さんとの関係も違ったものになっている。「大病院が患者さんの人生と“点”で関与するとするならば、診療所での地域医療は“線”で関わること。さらにその家族や親子の世代の人との関わりから、患者さんの人生と“面”や“立体”で関わること」だと、中村さんは言う。
非常に高度なスキルを持った医師が中央の病院から地方の病院へ来て、手術だけしてまた帰っていく。こうしたスタイルは患者と「点」でしか関わらない。
専門性を突き詰めて、高度に構築していくことと、中村さんのようなやり方は、どちらも現代社会において大切だと思う。ただ、中村さんが発しているメッセージは、点でなく、線や面で患者の人生に関わるというやりかたが崩壊しつつあるのだということだ。
それは医療の問題だけでなく、日本の社会におけるコミュニティのあり方の変化という問題でもある。コミュニティというのは、お互いに支えあっていく姿勢が基本になければならない。これは当たり前のことだが、今回それをあらためて確認させられた。
中村さんが地域の医療関係者や保健師や介護師などとネットワークを作ったのは、医者は点として支えるだけでは医療問題は解決せず、線や面にしてお互いに支えあわないと、本当の意味で生活を支えることにはならないからだ。
非常に印象的だったのは、グラウンドゴルフを楽しんでいる患者さんが膝を悪くした時に、「膝が悪い」という“点”だけ見れば止めてもらったほうが良い。しかし、その人の人生全体からみれば、やはりグラウンドゴルフは必要だと判断されたこと。これは“線”で観察していてはじめて下せる判断である。
人間を「点」だけでなく「線」で見る。こうしたことがいろいろなところで欠落してしまっているのだろう。
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