「茂木健一郎の「超一流の仕事脳」」

生命を支える「点」と「線」

〜 診療所医師・中村伸一 〜

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2009年1月13日(火)

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 今回お話を伺った医師の中村伸一さんは、福井県の山村にある診療所で、そこに住む人々の生活に寄り添いながら地域の医療を支える活動をしている。高齢化の進む地域で、診療所での診察のほか、各家庭への往診も行う。

 都市部の大きな病院とは自ずと患者さんとの関係も違ったものになっている。「大病院が患者さんの人生と“点”で関与するとするならば、診療所での地域医療は“線”で関わること。さらにその家族や親子の世代の人との関わりから、患者さんの人生と“面”や“立体”で関わること」だと、中村さんは言う。

 非常に高度なスキルを持った医師が中央の病院から地方の病院へ来て、手術だけしてまた帰っていく。こうしたスタイルは患者と「点」でしか関わらない。

 専門性を突き詰めて、高度に構築していくことと、中村さんのようなやり方は、どちらも現代社会において大切だと思う。ただ、中村さんが発しているメッセージは、点でなく、線や面で患者の人生に関わるというやりかたが崩壊しつつあるのだということだ。

 それは医療の問題だけでなく、日本の社会におけるコミュニティのあり方の変化という問題でもある。コミュニティというのは、お互いに支えあっていく姿勢が基本になければならない。これは当たり前のことだが、今回それをあらためて確認させられた。

 中村さんが地域の医療関係者や保健師や介護師などとネットワークを作ったのは、医者は点として支えるだけでは医療問題は解決せず、線や面にしてお互いに支えあわないと、本当の意味で生活を支えることにはならないからだ。

 非常に印象的だったのは、グラウンドゴルフを楽しんでいる患者さんが膝を悪くした時に、「膝が悪い」という“点”だけ見れば止めてもらったほうが良い。しかし、その人の人生全体からみれば、やはりグラウンドゴルフは必要だと判断されたこと。これは“線”で観察していてはじめて下せる判断である。

 人間を「点」だけでなく「線」で見る。こうしたことがいろいろなところで欠落してしまっているのだろう。

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“いい人生やった”その一言のために
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NHK総合テレビ
1月13日(火)
午後10:00〜10:45
再放送
 総合 毎翌週火曜 午前1:00〜1:44
     (月曜深夜)
 BS2 毎翌週水曜 午後5:15〜5:59
 地域医療の危機が叫ばれ、閉鎖する病院が相次ぐ中、全国から注目を集める医師がいる。星降る里として知られる、福井県おおい町名田庄地区で唯一の医療機関、名田庄診療所の所長、中村伸一(45)だ。

 内科はもちろん、外科、整形外科、小児科、皮膚科まで、一人で対応する中村。エコーや内視鏡を使いこなし、早期のがんを次々と発見、切除手術まで行う。しかし、中村が地域医療のプロたるゆえんは、高い技術力だけではない。患者の人生に寄り添い、その人の暮らしぶりや悩みまで熟知した上で、最善の治療を行う。そして、亡くなる最後まで自宅で家族と暮らしたいという住民の思いに応えて、介護や保健スタッフまでも取り込んだシステムを作り、24時間体制で地域の人々の命を見守っている。先進的な中村の取り組みの結果、この地域では、住民の4割が住み慣れた自宅で最後を迎える。全国平均の3倍の数字だ。

 10月。中村が往診を続けてきた一人のお年寄りが肺炎にかかる。今後も自宅で二人で暮らしたいと願う老夫婦。その思いに、中村はどう向き合うのか。小さな山里を舞台に繰り広げられる魂の医療。理想の医療を追い求める、一途な医師の生き様を描く。


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著者プロフィール

茂木 健一郎(もぎ・けんいちろう)

茂木 健一郎

1962年、東京都生まれ。東京大学大学院卒業。「クオリア(感覚質)」を手がかりに、脳と心の謎に挑む新進気鋭の脳科学者。現在、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。



このコラムについて

茂木健一郎の「超一流の仕事脳」

毎回、1つの分野で超一流の仕事をしている人物を追うNHKのテレビ番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」。キャスターを務める脳科学者の茂木健一郎氏が、番組を通じてその人物から受けた刺激をさらに深く考察して語るコラム。

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