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知らなければ論じられない、だから『クジラを追って半世紀』
~これを読まずして捕鯨問題を語るなかれ

2009年1月14日(水)

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クジラを追って半世紀――新捕鯨時代への提言

クジラを追って半世紀――新捕鯨時代への提言』 大隅清治著、成山堂書店、1600円(税抜き)

 この数年、私は捕鯨の現場に足を運んでいる。一昨年から2年連続で日本近海に棲息するクジラの捕獲調査に同行した。昨夏、80日間の調査で船団が捕獲したクジラは、211頭。海原を泳ぐクジラを何十頭も見た。はじめて航海に参加した20代の臨時調査員の言葉が忘れられない。

「ぼくらの世代にとってクジラは、特別な存在になっていて『クジラって食べてもいいの?』なんていう人もいる。でも、クジラは日本の近海にもたくさんいた。日本人にとって、身近な動物なんですね」

 商業捕鯨の歴史に幕が閉じたのは、1986年のことだった。そのため、1977年生まれの私には、クジラ肉が食卓に上った記憶はほとんどないし、学校給食でクジラの竜田揚げを食べた経験もない。普段の生活でクジラを身近だと感じた瞬間はなかった。

 戦後、各国がクジラを乱獲して資源量の減少が問題になったため、1982年にIWC(国際捕鯨委員会)は、商業捕鯨の一時停止を採択した。しかし、商業捕鯨再開を主張する日本は、1987年からクジラの生態や資源量を解明するため、南氷洋での調査捕鯨を開始した。周知のようにこの調査捕鯨は、アメリカやオーストラリアなどの反捕鯨国から非難を浴び、自然保護団体の抗議運動は、年々、過激になっている。

78歳現役、夢はクジラの「家畜化」

 本書は、そんな戦後捕鯨の最前線で、クジラの研究に取り組んできた大隅清治博士の自伝的な研究史だ。大隅博士は、1930年生まれの78歳。今も日本鯨類研究所の顧問を勤める世界的なクジラ学者である。

 「クジラとの出会いは全くの偶然」だったと大隅博士は振り返る。学生時代、担当教授に紹介されたアルバイト先が、たまたま現在の日本鯨類研究所の前身の鯨類研究所だったのだ。

 大隅博士は、クジラ研究に足を踏み入れた戦後間もないころを、漫画家の手塚治虫や石ノ森章太郎らを輩出した「トキワ荘」になぞらえて、こう語る。

〈「トキワ荘」の漫画家も、「鯨研」の研究者も、敗戦のどん底に喘いでいた日本を早く復興させようとする情熱に日本中が燃えていた、戦後社会の高揚期が生み出した、時代の産物であったかもしれない。その時代には、多くの職業分野の人々が、それぞれの「トキワ荘」で、復興のために夢中で働いていたに違いない〉

 戦後、食糧がなかった時代、クジラ肉は、貴重な動物性タンパクとして日本人の生活を支えたのである。やがて商業捕鯨の継続が難しくなり、日本の捕鯨への風当たりが強くなったころ〈ある先輩には、「今頃クジラにしがみ付いているヤツは、馬鹿だ」と謗られた〉が、クジラの数を減らさぬように資源を合理的に活用する道を模索してきた。そして、78歳になった今も、クジラを飼育、繁殖させる夢を抱き、研究を続けている。

 大隅博士は、著書『クジラのはなし』(技報堂出版)で「クジラの家畜化の可能性」と見出しを立て、「魚群の誘導や監視等に利用する『海の牧童犬』としての利用と、肉や乳を生産する『海のウシ』としての利用」など、「クジラ資源」の新たな未来を拓こうとしている。

 本書を読み進めていくと、時代とともに変化していく日本人とクジラの関わりに、大隅博士たちの研究が、いかに大きな影響を与えたかが分かる。その実感と責任の重みが人生の大部分の歳月をクジラ研究に費やしてきた原動力であるように思えた。

 「頭のいいクジラを殺すな」「捕鯨は日本の伝統なのだから、外国からとやかくいわれる筋合いはない」……。捕鯨というと、声高な主張ばかりが注目を集める。しかし、クジラを保護するにしても、資源として利用するとしても、クジラという動物を理解しなければ、何もはじまらない。

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