「鈴木義幸の「風通しのいい職場作り」」

社員の不満1位は「自分の役割」が見えぬこと

“劇的な職場”はリーダーの演出力から

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2009年1月19日(月)

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 ある企業で管理職の方々を相手にコーチングのトレーニングをしていたときのことです。1人の部長さんが、冗談交じりにおっしゃいました。

 「鈴木さん、部をまとめるのも大変だけど、家庭をまとめるのはもっと大変だよ」

 明るく笑っておられましたが、そういうときに限って内心は真剣に悩んでいたりすることもあるので、どういうことか聞いてみました。部長さんはこう続けます。

 「私は東京に単身赴任で来てるんだけどね。実家は福岡で遠いから、月に1回ぐらいしか帰らない。でも、下の子が小学校の運動会に出る日は何があっても帰ってたわけ。それで一昨日、家に電話して家内に『今週末は運動会だろ。帰るよ』って言ったらさ、『いいわよ、帰ってこなくて。あの子も別に見に来なくていいって』と。なんか寂しくなっちゃってさ」

 いろいろなことを考えさせられる話ですが、1つ言えるのは、人はみんなその場における役割が欲しいということです。だから、家で役割を感じられないお父さんは結構つらい。

 乗せ方がうまい奥さんは、「仕事がつらい」などと不満を漏らす夫に、「なに言ってんの! うちはあんたのおかげで成り立ってるのよ。がんばってくれないと困るじゃない!」と、お尻を蹴飛ばすものです。「そうなの……」と同調したり、「あなたが悪いわけじゃない」とかばったりはしない。

 奥さんは思いっきり夫に役割を課すのがいいのです。人間は役割がはっきりすれば結構動けますから。分かりやすい例として専業主婦の家庭の場合をとりあげましたが、もちろん働く女性に対しても、どんな立場の人に対しても、当てはめられる基本原理です。

「ちょい役」なんてつくらない

 少し前の話になりますが、福島大学陸上競技部の川本和久監督と、NHKの「ラジオ深夜便」という番組で対談したことがあります。同部は現在の日本記録保持者を4名輩出し、またいくつもの学生記録を誕生させるという、知る人ぞ知る驚異的なチームです。

 川本監督からお聞きした話は、どれも書いて机の横に張っておきたいくらい素晴らしいものでしたが、なかでも私がインパクトを受けたのはチームの作り方です。

 チームは家族のようなものだと川本監督は考え、家族になぞらえた役割を選手たちに与えていきます。

 まずは、「お父さん」をつくる。適役の選手を選び、時には監督を代弁して厳しいことを言うくらいのスタンスで振舞って欲しいと伝える。「お父さん」だけだとみんな苦しくなってしまうので、やさしく見守ってくれる「お母さん」もつくる。それから何でも相談できる「お姉さん」、などなど……。

 もちろん組織を機能させるための役割づくりなのですが、選手からすると自分の存在価値が高まるでしょうし、居場所がきちんとつかめるような感覚になるのだと思います。役割意識が個々の選手のモチベーションをも高める。

 企業でも、チームづくりのうまいマネジャーは、メンバーの役割をつくり出すのが上手なようです。「お父さん」「お母さん」のように、どのようなスタンスで振舞ってほしいかという立ち位置から、プロジェクトのリーダー、ミーティングの進行役、風土管理人、飲み会の幹事といった具体的な担当にいたるまで、どんどん役割をつくっては、それをしっかり割り当てていく。飲み会の幹事でさえ、「とても重要な役割だからな」と言って思いっきり任せる。

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著者プロフィール

鈴木 義幸(すずき・よしゆき)

鈴木 義幸 株式会社コーチ・エィ 取締役社長
慶應義塾大学文学部卒。(株)マッキャンエリクソン博報堂にメディアプランナーとして勤務後、渡米。ミドルテネシー州立大学大学院臨床心理学専攻修士課程を修了。帰国後、コーチ・トゥエンティワンの設立に参画。延べ200社以上の企業において管理職を対象とするコーチング研修を行う。また200人を超える経営者、管理職のマンツーマンコーチングを実施。企業におけるコーチング・カルチャーの構築を手がける。著書に『職場スイッチ』(ダイヤモンド社)、『リーダーが身につけたい25のこと』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『ほめる技術』(実業出版)、『プレゼンスマネジメント』(日経BP)、『決断の法則「これをやる!」』(講談社)、『セルフトーク・マネジメントのすすめ』(日本実業出版社)など。



このコラムについて

鈴木義幸の「風通しのいい職場作り」

 空気が淀み、風が通らなくなった職場の中に実際に身を置いていると、一体どうすれば、そこに新鮮な風が通るのか、皆目見当もつかないかもしれません。

 けれども、人の心理が集団の中でどのように動き、どのように変化するのかを知識として備えていれば、そして、少しの勇気と行動力があれば、絡まって団子になってしまった糸も少しずつほぐしていくことができると思います。

 当連載では、組織心理学、行動科学の専門家として、様々な企業の現場をコーチングしてきた私自身の経験を活かし、風通しのよい職場の作り方の一端を、みなさんにご紹介できたらと思っています。このコラムを読んでいただくことで、少しでも、みなさんの職場に新鮮な風が通ることを願ってやみません。

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