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「人生の達人」と、おしゃべりしましょ~『田辺聖子の人生あまから川柳』
田辺聖子著(評:清田隆之)

集英社新書、680円(税別)

  • 清田 隆之

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2009年1月22日(木)

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評者の読了時間3時間00分

田辺聖子の人生あまから川柳

田辺聖子の人生あまから川柳』 田辺聖子著、集英社新書、680円(税別)

 コンコンコン/トントントントン/ドンドンドン!

 これは、08年に行われた「第4回トイレ川柳」(主催:TOTO)において、最優秀賞を獲得した川柳である。ドアをノックする音のみで句を形成し、しかもトイレの内外にいる人の心理状態をも見事に表現した秀作だ。

 本書は、長年の川柳愛好者である女流作家の田辺聖子が、お気に入りの100句を紹介し、ときに妄想を交えながらユーモラスに解説を加えていく川柳集である。

 実を言うと、読み始めたときは、本書に少々物足りなさを感じていた。一冊の本を読んだからには、川柳について「語れる何か」を得ておきたい。そんな下心を抱きながらの読書だったが、著者の語る川柳話からは、期待していたような「成果」や「実用」が見いだせなかったのだ。

〈新聞を切り抜く男職がなし  小島祝平

 新聞を切り抜くというんだから求人広告かしら。戦後はものすごい就職難。町にはどっと復員兵があふれ、町は焼け跡だらけ、きびしい就職難だった〉

〈あの時の恋はよかった角砂糖  岸本水府

 これはかわいらしい句。コーヒーだとか紅茶だとか飲んでるような恋だから、ういういしい。今は、角砂糖よりさらっとしたスティックになってるのか。やっぱり若い人の時代という感じですね、これ。この句を詠んだときの実際のお年はわからないけど、この一つで若い子らの句やなと連想する。不思議です。言葉って。中年の恋も角砂糖は使うでしょうけど。でも、それは想像できなくて、やっぱり若者っていう感じですね〉

 時代を懐古したり、状況を想像したり、川柳の続きを独自につけ加えたり。川柳評というよりは、エッセーのような雰囲気で展開されていく。川柳の歴史が案内されているわけでも、論じる上でのポイントが示されているわけでもない。新書というと、つい手軽な知識や教養を求めてしまうが、それに即応してくれる本ではない。

“田辺聖子ワールド”全開

 しかし、ひとつ句を読み、その解釈に耳を傾ける。「なるほど」と感心したり、「いや、違うだろ」なんてつぶやいてみる。そんな読書を続けるうちに、いつしか川柳をめぐって、田辺聖子とおしゃべりしているような感覚におちいった。身を委ねたくなるような世界観を醸し出すあたり、さすがはベテラン作家の力量である。

 余裕のある読書だ。「何かを得よう」と肩肘張って文字を追いかけていた自分が、少し恥ずかしくなった。

 一般的に川柳といえば、「サラリーマン川柳」のような公募川柳、あるいは新聞に投稿される時事川柳みたいなものが思い浮かぶが、本書に紹介されているのは、すべて川柳作家が「文芸」として詠んだ作品である。

 作家の選定は、1928年生まれである著者の同世代~親世代くらいにしぼられており、その作風も、日常の1シーンや人生の真理を詠むといったものがほとんど。それ以前の、例えば江戸時代に詠まれた名句もなければ、現代の川柳が持つスタンダードなイメージである、政治や社会をチクッと風刺するような作品もここには登場しない。

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