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「安全」と「安心」の溝はどこから生まれる?

“安全。でも安心できない”時代のリスク心理学--中谷内一也氏 (前編)

2009年1月22日(木)

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 世界を見渡しても希なくらい豊かで安全な暮らしができる国--。海外の日本に対するこうした評判を耳にすることは多い。しかし、生活実感はその評価を裏切るものではないだろうか。

 食べ物に農薬が混じっていた。年金制度は崩壊寸前で老後が心配だ。働きたくても仕事がない……。さまざまなリスクが社会に広がっており、たとえ“安全”でもまったく“安心”できないという思いが正直なところではないか。

 リスクに対する人の心理的側面を解明するのが「リスク認知研究」だ。この分野を専攻する中谷内一也さんは、「なぜ安全が安心につながらないか」をリスク認知の立場から研究している。安全の追求がなぜ安心の確保にならないのか。前編では安全と安心の違いについて聞いた。

--ここ数年、国民の信頼を失墜させた社保庁の年金問題や、中国製の毒入り餃子事件、牛肉偽装事件などのように、暮らしを不安にさせる出来事が多数発生しました。そうした事件への反応として報道などで目立つのは、「安全と安心が脅かされている」といった論調です。安心と安全は一括りにされがちですが、一度問題を起こした行政や企業が安全の確立を約束したからといって、人々の安心につながるとは限りません。安全と安心は、どのような関係にあるのでしょうか。

中谷内:まず、安全とは、「“危険の少ない現実”が守られている状態」のことです。たとえば、毎年、災害で100人が亡くなっていたとします。それが人為的な努力で翌年は90人、翌々年は80人に減ったとしたら、「年々安全になっている」と言えます。

中谷内 一也(なかやち・かずや) 1962年大阪生まれ。同志社大学大学院心理学専攻博士課程満期退学。現在、帝塚山大学心理福祉学部教授。専門領域は社会心理学、リスク心理学。現代社会のもたらすリスクや不安を抑えることに貢献できる心理学を模索している。主な著書に『安全。でも、安心できない…』(ちくま新書)『リスクのモノサシ』(NHKブックス)など。

中谷内 一也(なかやち・かずや) 1962年大阪生まれ。同志社大学大学院心理学専攻博士課程満期退学。現在、帝塚山大学心理福祉学部教授。専門領域は社会心理学、リスク心理学。現代社会のもたらすリスクや不安を抑えることに貢献できる心理学を模索している。主な著書に『安全。でも、安心できない…』(ちくま新書)『リスクのモノサシ』(NHKブックス)など。

 しかし、死者が減っていくのと同じように、人々の心の中で「もう安心だ」という思いが高まるかどうかは別の問題です。

 つまり、安心とは、「大丈夫と感じている心や気持ちの状態」のことです。現実の安全性と同じだけ安心を感じることができれば、安全と安心は比例した関係にあります。ところが実際にはそうではありません。

数字上の「安全」と暮らしの「安心」は別

--現実とそれに対する気持ちが合致していないから、「安全。でも、安心できない……」という状況が生まれてしまうわけですね。中谷内先生が研究されているリスク認知は、安全と安心の関係をどう説明していますか?

中谷内:リスク認知研究は1970年代後半、原子力発電所や遺伝子工学といった科学技術を利用する上でのリスクや、喫煙といった生活上のリスクを人はどう認識しているかを探るために始まりました。

 当時の研究の標語は“How safe is safe enough?”。要するに「どれくらい安全であれば、人は安心してくれるか」というものです。

 1978年、アメリカのスリーマイル島原子力発電所が炉心溶融の事故を起こしました。それ以降、日本の電気事業関係者も原発の安全性を高める努力をしてきました。彼らは「安全を確保しさえすれば、人々は安心してくれるはずだ」と考えていました。ところが、そうはいかなかった。

 技術者の立場からすれば、「台風が日本を襲えば、毎年何十人と死んでいるじゃないか。そうした大きなリスクが現実に存在するのに安全性が高まっている原発をなぜ怖がるのか」と不思議に思うわけです。

 長い間、「リスクに対する考えをちゃんと理解すれば、人々は安心してくれるはずだ」という考え方があったのです。けれど、最近、「どうもそれだけでは済まないな」と理解しはじめたのでしょう。私も、電気事業者たちからリスク認知に関する講演依頼を多く受けるようになりました。

 そういった事態から分かるのは、数字で表せるような「安全」はもちろん確保しないといけないにせよ、それだけでは人の暮らしの「安心」にはつながらないと、気付き始めているということです。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長