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「あの人にまかせていいのか」の答は案外正しい

“安全。でも安心できない”時代のリスク心理学--中谷内一也氏(後編)

2009年1月29日(木)

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 耐震偽造や年金問題、賞味期限の偽装、BSE(牛海綿状脳症)問題に自然災害と、私たちの暮らしを脅かす事件が多発している。こうしたリスクを前にしたとき思うのは、「どう行動すれば安心と安全を確保することができるのだろうか」ということだ。

 前編では、人間はリスクを伴う行動にあたって、感情と理性に基づく認知を行っていることが明らかにされた。後編では引き続き中谷内一也さんに、安全と安心を獲得する上で欠かせない“信頼獲得のマネジメント”の方法をうかがった。

--前編では、安心を獲得する上で、「あの人に任せておけば大丈夫だ」といったような本質的信頼が重要だとお話いただきました。ビジネスでいえば、よほど悪質でない限り、最初から顧客を騙そうとする企業は少ないと思います。しかしながら、いまや国際分業化によって流通が複雑になっていますし、たとえ取引先が国内でも、どういう経路をたどって物がやってきたのか把握しにくい時代になっています。モラルを守ったつもりでも、文化的違いなどから結果的に本質的信頼を損なうことがありえます。複雑になった社会システムの中でどうすれば安全と安心を保持することができるでしょうか?

中谷内:リスク認知を考える上で注目すべき事例となったのが、生協に対する消費者の評価です。消費者の食の安全をうたっていた生協が、牛肉100%ではないミートホープのコロッケを販売したことで、結果的に消費者を騙すことになりました。ところが、日経BP社が行っている「食の安全・安心ブランド調査2008」の結果を見ると、生協の場合、この事件でかえって信頼が上がったのです。

中谷内 一也(なかやち・かずや) 1962年大阪生まれ。同志社大学大学院心理学専攻博士課程満期退学。現在、帝塚山大学心理福祉学部教授。専門領域は社会心理学、リスク心理学。現代社会のもたらすリスクや不安を抑えることに貢献できる心理学を模索している。主な著書に『安全。でも、安心できない…』(ちくま新書)『リスクのモノサシ』(NHKブックス)など。

中谷内 一也(なかやち・かずや) 1962年大阪生まれ。同志社大学大学院心理学専攻博士課程満期退学。現在、帝塚山大学心理福祉学部教授。専門領域は社会心理学、リスク心理学。現代社会のもたらすリスクや不安を抑えることに貢献できる心理学を模索している。主な著書に『安全。でも、安心できない…』(ちくま新書)『リスクのモノサシ』(NHKブックス)など。

--信頼を築くのは難しく、失うのは簡単だと言われますね。なぜ生協はそういう法則にあてはまらなかったのでしょうか?

中谷内:ある程度の信頼がすでにある人や企業には、不祥事があっても信頼が崩れず、むしろ従来からある信頼性を高める方向で解釈してもらえる働きが生まれるからです。

 生協は食の安全性に関する財産がありました。ミートホープの事件では、むしろ被害者の立場でしたし、すぐに事実を公表して誠実な態度をとったから、ダメージにはならなかったのです。

 「信頼は築きにくく失いやすい」という法則を「信頼の非対称性原理」と言いますが、対して、生協のケースは「信頼の二重非対称性」と呼ばれるモデルを支持するものといえます。

「0か100か」の始まりは「どちらかといえば」

--それにしても、食のグローバル化などで食材が豊富で選択肢も増えています。出所がわからない食材の率が増えるとしたら、それだけ食へのリスクが高まっていると認識しておく必要がありそうですか?

中谷内:確かにグローバル化はリスクを背負い込むことになりますが、見方によってリスク分散にもなります。食料の国内自給率を上げようとして、極端にいえば、私がここ奈良県で採れたものしか食べないとします。もし仮に奈良の土壌が汚染されていたことが発覚したら、私はハイリスクな選択をしていたことになります。そういう意味ではグローバル化は、リスクが高まりもすれば、分散にもなりえます。

--そもそも人間の行うことですから、どういう選択をするのであれ、リスクは完全に排除できないはずです。昨今、完璧なリスクヘッジがあるかのような強迫的な論が目立ちます。

中谷内:企業や行政が「消費者は完璧な安全を求めている」と勝手に思い込んでいるからではないでしょうか。実際、消費者は、“ゼロリスク”が可能だと思っていないし、求めてもいないでしょう。リスクが1%よりはゼロのほうがいいにしても、そのためにパン1斤に5000円が必要となったら、そこまでのリスク管理は求めない。

 コストの議論を抜きにすれば、ゼロリスクを求めるかもしれません。けれど、限られた資源の中で、できる限りの生活を享受したいならばゼロリスクが無理であることくらい、消費者は理解していると思います。

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