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15. ふだん気に止めていない女子社員に優しくされたら用心せよ。

伊井直行『さして重要でない一日』

  • 千野 帽子

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2009年1月28日(水)

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 日直のチノボーシカです。インフルエンザにやられてしまいました。

 前々回前回と津村記久子の『アレグリアとは仕事はできない』をコピー機がらみの会社ミステリ小説として読んできた。

さして重要でない一日

さして重要でない一日』伊井直行(著)、講談社文庫

 コピー機がらみの会社ミステリ小説として読める純文学作品といえば、伊井直行の『さして重要でない一日』(1989)だろう。

 インターネットも携帯電話も普及していなかったバブル真っ盛りの1989年に、妙なことになっている会社のなかを描き出したこの小説は、カフカ的なビューロクラシー不条理小説としても読めるし、トマス・ピンチョンのメタ歴史小説のパロディとしても読めるのだ。

 昨年から『ミステリマガジン』で『誰が少年探偵団を殺そうと。』という連載をやっていて、その第2回(2008年10月号)とかなり内容がかぶってしまうが、『アレグリアとは仕事はできない』とぜひ併読してほしいので、重複を恐れずここで改めて紹介したい。

*   *   *

 佐藤道郎は29歳、大手企業に勤めている。所属する営業一部第三課は課長、同じ若手の山本君、そして〈女の子1、2、3、おばさんA、B〉などで構成されている。

 会社帰りに、会議資料が途中から乱丁となっていることに気づいた。コピー機のソーターが不調だったらしい。そしてコピーを配った先に原本が行っている可能性が高い。

 翌朝、〈女の子3〉に聞けば、ソーターは3日前から壊れていて、部品の取り寄せを待っているとのこと。初めて聞いた、と言うと〈佐藤さんは嫌われてるから〉。しかし〈女の子3〉はその理由を明かさない。

 会議が始まる4時までに原本を取り返し、正しいコピーを作る必要がある。午前中に半分以上を回収したが、原本が揃わない。〈社内局〉のポストにほうりこんだぶんが未回収なのだ。

 宣伝部に所属する美人キャリアの前田先輩は、佐藤にこんなことを言う。

あなた、最近若い子たちに評判悪いって聞くよ。何したのか知らないけど、あの子たちに嫌われると、会社の中、居心地悪いから〔…〕気をつけて〔…〕。

 しかし佐藤は当面のコピー原本探しで頭がいっぱいだ。

 〈社内局〉についていろいろ調べているうちに、その正体が判明してくる。〈社内局〉はその名に反して、社外の人たちがやっているというのである。といってもアウトソーシングとかそういう話ではない。

 まず、ビルを警備しているS警備の警備員たちが、交代時間の都合で顔を合わせない者どうしの連絡のため、ビルの何階かおきに、給湯室にモロゾフだか泉屋だかの空罐を置いて、連絡用に使っていた。

 あるとき総務がこの罐を見咎めた。S警備は無断で設置したことを陳謝し、仕事上の必要性を説明。総務は新しい連絡箱の仕様を決め、S警備の負担で20階すべての給湯室に紺色の郵便受けが出現した。

競売ナンバー49の叫び

競売ナンバー49の叫び』トマス ピンチョン(著)、志村正雄(訳)、筑摩書房、2835円(税込)

 これとはべつに社員のなかに、馴染の警備員に、巡視ついでに何階の何課にこの書類を届けてくれと頼む者がいた。その延長で、社内の深夜残業常習者たちと警備員とのあいだに、連絡箱の利用についての黙契が発生。総務とはべつの配達組織〈社内局〉の正体はこれだったのだ。

 佐竹という先輩社員などは、〈秘密の郵便配達組織というのは、ピンチョンていうアメリカの作家が考え出したもの〉と『社内局』の存在を否定する。たしかに〈社内局〉は、ピンチョンの『競売ナンバー49の叫び』(1966)の秘密配達組織トライステロのパロディだろう。

*   *   *

 佐藤が〈社内局〉を求めて、行ったことがない地下室まで行って戻ってくると、部長席に原本が乗っている! こともあろうに、あれだけ探したはずのコピー室から見つかったらしい。

 ここにいたって佐藤は推理する。悪意あるだれかがコピー室で原本を見つけ、それを隠して、佐藤が困るのを楽しんでいるのではないか、と。

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