日直のチノボーシカです。インフルエンザにやられてしまいました。
前々回・前回と津村記久子の『アレグリアとは仕事はできない』をコピー機がらみの会社ミステリ小説として読んできた。

『さして重要でない一日
コピー機がらみの会社ミステリ小説として読める純文学作品といえば、伊井直行の『さして重要でない一日
インターネットも携帯電話も普及していなかったバブル真っ盛りの1989年に、妙なことになっている会社のなかを描き出したこの小説は、カフカ的なビューロクラシー不条理小説としても読めるし、トマス・ピンチョンのメタ歴史小説のパロディとしても読めるのだ。
昨年から『ミステリマガジン』で『誰が少年探偵団を殺そうと。』という連載をやっていて、その第2回(2008年10月号)とかなり内容がかぶってしまうが、『アレグリアとは仕事はできない
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佐藤道郎は29歳、大手企業に勤めている。所属する営業一部第三課は課長、同じ若手の山本君、そして〈女の子1、2、3、おばさんA、B〉などで構成されている。
会社帰りに、会議資料が途中から乱丁となっていることに気づいた。コピー機のソーターが不調だったらしい。そしてコピーを配った先に原本が行っている可能性が高い。
翌朝、〈女の子3〉に聞けば、ソーターは3日前から壊れていて、部品の取り寄せを待っているとのこと。初めて聞いた、と言うと〈佐藤さんは嫌われてるから〉。しかし〈女の子3〉はその理由を明かさない。
会議が始まる4時までに原本を取り返し、正しいコピーを作る必要がある。午前中に半分以上を回収したが、原本が揃わない。〈社内局〉のポストにほうりこんだぶんが未回収なのだ。
宣伝部に所属する美人キャリアの前田先輩は、佐藤にこんなことを言う。
あなた、最近若い子たちに評判悪いって聞くよ。何したのか知らないけど、あの子たちに嫌われると、会社の中、居心地悪いから〔…〕気をつけて〔…〕。
しかし佐藤は当面のコピー原本探しで頭がいっぱいだ。
〈社内局〉についていろいろ調べているうちに、その正体が判明してくる。〈社内局〉はその名に反して、社外の人たちがやっているというのである。といってもアウトソーシングとかそういう話ではない。
まず、ビルを警備しているS警備の警備員たちが、交代時間の都合で顔を合わせない者どうしの連絡のため、ビルの何階かおきに、給湯室にモロゾフだか泉屋だかの空罐を置いて、連絡用に使っていた。
あるとき総務がこの罐を見咎めた。S警備は無断で設置したことを陳謝し、仕事上の必要性を説明。総務は新しい連絡箱の仕様を決め、S警備の負担で20階すべての給湯室に紺色の郵便受けが出現した。

『競売ナンバー49の叫び
これとはべつに社員のなかに、馴染の警備員に、巡視ついでに何階の何課にこの書類を届けてくれと頼む者がいた。その延長で、社内の深夜残業常習者たちと警備員とのあいだに、連絡箱の利用についての黙契が発生。総務とはべつの配達組織〈社内局〉の正体はこれだったのだ。
佐竹という先輩社員などは、〈秘密の郵便配達組織というのは、ピンチョンていうアメリカの作家が考え出したもの〉と『社内局』の存在を否定する。たしかに〈社内局〉は、ピンチョンの『競売ナンバー49の叫び
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佐藤が〈社内局〉を求めて、行ったことがない地下室まで行って戻ってくると、部長席に原本が乗っている! こともあろうに、あれだけ探したはずのコピー室から見つかったらしい。
ここにいたって佐藤は推理する。悪意あるだれかがコピー室で原本を見つけ、それを隠して、佐藤が困るのを楽しんでいるのではないか、と。
人の名前を覚えるのが苦手な男子・・・まさに私のことです。そういう意味で「とても参考になった」。でも、誰もが該当する訳ではない。そういう意味で「どちらでもよい」。でも、よく考えてみると選択的無関心なんて大抵の男はやっていることだし、私の選択的無関心に気がつく奇特な女性はいない、少なくとも過去にはいなかった。そういう意味では「この記事が今後の私の言動に影響することはない」ということになります。(2009/01/30)