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原油高の犯人はだれだったの?~『石油の支配者』
浜田和幸著(評:山岡淳一郎)

文春新書、730円(税別)

  • 山岡 淳一郎

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2009年1月26日(月)

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石油の支配者

石油の支配者』 山岡淳一郎著、文春新書、730円(税別)

 1月17日現在、ニューヨークの原油先物価格は、1バレル(159リットル)=35ドルまで下落している。2004年春頃の相場に戻った。中野区の哲学堂に近いスタンドのレギュラーは、1リットル=93円。09年の世界需要は減少すると予想され、今後、1バレル=20ドル台まで下がるともいわれる。

 昨年7月、原油先物価格は、1バレル=147.27ドルの史上最高値をつけた。原油高はコスト高、材料高の元凶とされ、産業界は真っ青になった。ところが、9月のリーマン・ブラザース倒産から拡大した金融危機で、一気に最高値の四分の一以下に急降下だ。

 あの狂乱相場ともいえる原油高は、いったい何だったのか。いくら百年に一度の経済危機とはいえ、この乱高下は尋常ではない。裏を返せば、いかに膨大な投機マネーが原油先物市場になだれ込み、価格をつり上げていたかがわかる。実需に見合う価格ではなかった。

 原油価格は、単に需給メカニズムで決まっているのではない。石油は、国際的な「戦略物資」であり、「政治商品」だ。ゆえにその価格は各国政府、団体、企業などの「思惑」で決まるといっても過言ではない。

 のど元過ぎれば……で、わたしたちはガソリン代に一喜一憂し、石油問題の本質を忘れがちだ。しかし各国間の石油戦略の構造は、金融危機以前も以後もさほど変わっていないだろう。不況だからといって石油を使わない生活はありえない。

 投機筋は鳴りをひそめているが、景気が上向けば、またぞろ激しく動くのだろうか? そんな疑問もあり、石油をめぐる国際関係の入門書を探していたら、本書と出会った。

 書名のとおり、一読して、誰が石油を支配しているかが、よくわかる。国際的な石油利権の絡み合いにも踏み込んでおり、興味をそそられる好著だ。

自作自演の出来レース

 では、あの原油高の「犯人」は誰だったのか?

 著者は、〈原油を人質にとった「マーケット・テロリズム」といえるような前代未聞の状況〉が迫っているとし、犯人をしぼり込む。

 通常、相場の世界は「先高見越しの買い 先安見こしの売り」が基本である。一般の先物市場では、値上がりするとみれば買い注文を入れ、下がると思えば売り注文を出す。短期的な売買で利益を確保する。

 ところが、近年の原油先物市場では買い注文のみで、売りがない状態が続いた、という。

 その主役が、先進国の「インデックス・スペキュレーター(商品先物を買う機関投資家)」。具体的には、投資銀行やヘッジファンド、年金ファンド、大学基金、財団、富裕層の個人、政府系ファンドと、見慣れた顔ぶれだ。ただし、「これまでとは一線を画した資産運用の手法」が編みだされた。買い注文だけを膨らまし、売らずに長期保有をもくろみ、「商品先物市場の価格コントロール」を狙ったのだという。

 新手では米国の地方自治体も、財政再建事業と称して、インデックス・スペキュレーターに資産運用を委ねている。

 さらに大手投資銀行のゴールドマン・サックスが、「今後二年以内に1バレル200ドルを突破する可能性あり」とレポートで煽った。ゴールドマンは、ロンドンの先物取引会社の大口出資者でもある。インデックス・スペキュレーターが頼りとする「先物指標」の運営も行う。旗振り役としてはうってつけだった。

 こうして、選手と審判の「自作自演の出来レース」で原油価格が引き上げられた、と著者はみる。

中国とロシアの動向

 欧米の投機筋と同じように、「新セブンシスターズ」と呼ばれるロシア、イラン、サウジアラビア、中国、マレーシア、ブラジル、ベネズエラの政府系石油会社も原油高で儲けた。かつてセブンシスターズといえば、欧米の石油メジャー七社をさしていたが、これらの国々の影響力は日ごと高まっている。新セブンにとって石油は「政治商品」だ。

 たとえば、彼らは原油を埋蔵する途上国に資金援助やインフラ整備、あるいは軍事援助を行い、その見返りに油田開発利権を手に入れる。反米的傾向が強いのも新セブンの特徴だ。サウジアラビアは、米国と敵対するイランに国際価格の六分の一の安値で原油を売る。反米の旗手チャベス大統領が率いるベネズエラは、周辺諸国に1バレル=9ドルの超安値で販売する。石油資源をテコに中南米に反米対立軸を形成している。

 新興国のなかでも、とくに中国とロシアの動向からは目が離せない。

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