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「偶然と幸運」で彩られたオバマ物語~『オバマのアメリカ』
渡辺将人著(評:栗原裕一郎)

幻冬舎新書、780円(税別)

  • 栗原 裕一郎

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2009年1月30日(金)

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オバマのアメリカ──大統領選挙と超大国のゆくえ

オバマのアメリカ──大統領選挙と超大国のゆくえ』 渡辺将人著、幻冬舎新書、780円(税別)

 1月20日の大統領就任演説以降、当サイトにもオバマ関連の記事がたくさん上がっていてフィーバー状態だが、ほんの4、5年前まで、バラク・オバマは、アメリカ本国でもほとんど無名にちかい存在だったというのを思い出すとなかなか愕然とする。いや、だからこそのフィーバーという面もあるのだろうけど。

 さて、今回取り上げる本書は、昨年11月にブームに先駆けるように発売された一冊だが、オバマ現象の分析として、これに勝る新書はまだ出ていないと思う。

 著者の渡辺将人は、オバマを大統領候補に担ぎ上げたジャニス・シャコウスキー下院議員のスタッフを務めたり、アル・ゴアの大統領選では集票を担当したこともある人物。オバマが講師をしていたころのシカゴ大学に学び、オバマの大統領選にも参与していた。そういった、アメリカの政治を肌で知る立場から、オバマ現象の“意味”と“メカニズム”を分析したのが本書だ。

 大きく2部に分けられる。前半で解説されるのは、メディアを通しては見えてこないアメリカ政治の泥臭い部分、具体的には全国党大会の本当の機能、広告をはじめとするメディア戦略の変化、大統領選といえども州ごとに分断された地域政治がものをいう知られざる実態、といったところ。

 党大会とは各党が大統領候補者を決めるためのイベントである。たかだか候補が決まっただけなのにあのお祭り騒ぎはいったい何なのだ? と端から(外国から)見ていると不思議に思うわけだが、党大会は第三者つまりテレビを見ている視聴者に向けて演出されるショーなのだ、と著者は断言する。オバマが全米域の知名度を獲得したのは、2004年の民主党大会における基調演説だったことを思い出せば納得がいくだろう。

 メディア戦略については、テレビ広告全盛の80年代から新旧メディアが混在することになった今回の選挙までのメディア・コントロールの変遷がコンパクトにまとめられている。

草の根の「空中戦」をやる時代

 オバマは、YouTubeやマイスペース、フェイスブックなどのITインフラを積極的に利用して草の根的支持基盤を築き、若い世代から莫大なネット献金を集めた。ヒラリーが自嘲気味に「オールド・マネー」と呼んだいわゆる普通の政治献金にあくまで頼っていたことと比較されるが、著者は、ヒラリーのスタイルを「サーバ=クライアント型」、オバマ(やエドワーズ)のスタイルを「ピアツーピア型」と呼んでいる。

 もちろんヒラリーもネットを利用してはいたし、それ以前の選挙でもITインフラは活用されていたわけだが、オバマやエドワーズが見せた「ピアツーピア型」コミュニケーションへのシフトには本質的な構造転換があったというのが著者の認識である。

〈オバマ陣営が目指したのは広告に依拠した「空中戦」の概念そのものを解体してしまうことだった。グラスツール(草の根運動のこと――引用者註)は「地上戦」、情報戦は「空中戦」というかつての「キャンペーン二元論」の終焉だ。グラスルーツの実働部隊が、ユーチューブに動画を載せて草の根の「空中戦」をやる。しかも陣営の命令ではなく。そういう時代が始まっている〉

 地域政治に移ろう。かなり噛み砕かれているものの、それでも、アメリカの地図とそれぞれの地域の特色、大統領選挙のおおよその仕組みが頭に入っていないとイメージがわかないし、固有名詞がバンバン出てきて飲み込みづらい。ここが本書でいちばん難しい(眠くなる)箇所だろう。

 アメリカ大統領選挙は、いまだに200年前の制度を引きずった、きわめて非合理的な前近代的システムで運営されている。

 簡単に説明すると、まず、民主、共和両党が州ごとに予備選挙・党員集会を行ない代議員を選出、その代議員が党大会で投票・指名してやっと候補が決まる。本選は州ごとに一般投票が行なわれるのだが、しかし、この本選で選ばれるのは大統領ではなくて大統領選挙人である。そして大統領選挙人の投票によってようやく大統領が決まる、というシステムになっている。

 つまり、予備選(党員集会)、本選ともに、まず州の総意を代表する代理人が選ばれて、その代理人に決定権が託されるという二重構造になっているわけだ。

 この煩雑なシステムが改善されないのは、〈専門家による選挙制度論のメリット、デメリットとは異なる、アメリカの歴史的、文化的要因で存続している制度〉だからだと著者はいう。その「歴史的、文化的要因」をかたちづくっているのが、党員集会あるいは予備選挙、ならびに党大会に集約される、州ごとに独立した地域政治なのである。

 著者は地域政治のややこしさを、フロリダ州とアイオワ州を具体例に説明している。

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