今回お話を伺ったのは、50年先、100年先を見通して山林の崩壊を食い止めるために尽力されている湯浅勲さん。林業を持続可能なビジネスに再生すべく、現状できちんと採算が取れる仕組みを考えて実践されている。
湯浅さんは、仕事に向き合う際に「心のどん底から納得しているかどうか」を行動原理にしている。例えば、山林の中で作業をする現場の人が日当・出来高払いの雇用を望んだとしても、それは納得できなかったという。
湯浅さんが都会で働いていたとき、下請け、孫請け、さらに下の位置で日ごとに雇われる人の様子を見ていて、それではプロとしての自覚や意識を持てないということを学んだからだ。
ウエーバーが「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の『精神』」で書いているように、もともと経済というのはいかに生きるかという倫理と非常に深く結びついているはずだ。それがマネーゲームのようになってしまい、そのしっぺ返しをいま我々は受けている。それに対して湯浅さんの姿勢は、経済と倫理の原点を見ような思いがした。
そういう意味で言うと、湯浅さんの言葉は非常に印象的である。しかもそれを誰かに教わったのではなく、徐々に自分で学んでいった。
脳科学をやっている立場から、どうしてある人たちは学ぶことができ、ある人たちはできないのか、ということを常に考えている。まったく同じ経験をしても、湯浅さんが学んだようには学べない人もいる。
結局、「心の底から納得しているかどうか」に敏感であることが、学びにもたらす影響が非常に大きいのだと思う。
私自身の経験でも、何か話を聞いたときにだまされてしまう人がいる。その時に、本当に納得できているのかを大切にしている人は、表面的なことではだまされない。もっと深い学びに自分を向けることができる。
なぜ、心の底から納得することが大事なのかと伺ったときに、「そうでないと自分が自分でなくなってしまう」とおっしゃっていた。あれは重い言葉だ。
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