• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

女々しい会社は社員が辞めない

2009年2月19日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

女々しいイラスト

 いやいやいや、私、そういう取材はしないのよ。人に会って楽しく話を聞いて、そこで感じたいろんなことを、誰かに読んでもらえたらいいなとは思うけど、それ以上のことは仕事に人生に求めてないの。社会の闇を暴くとか、世の悪事を糺すとか、そういうのはもっとしっかりした人が、ちゃんとやってくれると思うから。だから今回も最初っからそうだと知ってたら婉曲にお断りしたのに、まったくもう、面白がってるわけ?

 紹介者から携帯に電話が入ったのは、アポイントメントの3分前。

「一応言っとこうと思って。アナタがこれから会う彼、元、さる筋の方だから」

 …あのねだいたいね、そんなこと直前に言うもんじゃありません。もっと事前に知らせておくか、後でこっそり教えてくれたらいいじゃない。
 ああきっと、私の正直な視線は絶対に絶対に、彼の両手に小指を探してしまうに違いない。そしてそれは先方にバレバレで、何か怖いことになってしまうような気がする。

 気が重い。しかしアポの時間は迫ってくる。
 せめて場所を、ホテルのラウンジとかルノアールとか、公共の目があるところにしてもらえばよかった。なのに今から伺うのは、小さなオフィスビル内にある、その彼の会社。

 時々あるんですよね、こういう、ちょっと後ずさりしたくなることが。
 はあ。
 エレベーターを降りて、ドアをノック。すると扉は即座に開いて少し、いや、かなりビビる。
 そこにいたのは、どこか年老いたユースケ・サンタマリアに似た、温和な雰囲気の男性でした。

 その笑顔に感謝。私、腹を決めました。
 あの、ナオエ社長にお目にかかりたいのですが・・・。

「私です。お待ちしておりました」

 えっ、あなたが、元?
 などと聞けるはずもなく、私はナオエさんに招き入れられたのでした。

 労働時間は長いし給料は安いし、その仕事に何か役得があるわけでないし、それどころか傾いて、倒れそうになったこともあるのに、今まで一人も従業員が辞めていない。

 それがナオエさんの会社です。

「いまどきすごいと思わない?」という紹介者の言葉を思い出します。
 確かにすごいと思います。不況とは言うけれど、労働条件があまりよくないところでは、常に人材を募集しています。

 そうそう話はズレますが、失業率とか求人倍率とかで不景気の度合いを測りがちですが、あれって「全国の公共職業安定所(ハローワーク)」にどれだけ求職者がきているか、求人があるかって話なんですよね。店で見かける「スタッフ募集」のポスターみたいなものは含まれていない。無料の求人誌は駅に街頭に積まれている。私、あの手の求人を含めたら、数字が言うほど仕事がないわけじゃないと思うんですよね。

 話を戻します。
 ナオエさんの会社で人が辞めないのは、そういう盃を交わしているからなのでしょうか。

 などと、これもまた聞けるはずがありません。

 おずおずと切り出します。
 どうしたら、誰も辞めない会社を作れるんですか?
 あー、我ながら愚問です。

「そうなんですよね、不思議なんですよね、私も」

 何かこう、「今日から俺とおまえは兄弟だ」って感じの儀式があるんですか。
 もちろん口には出していません。
 頭の中で小さく、作詞・松本隆、作曲・小室哲哉、歌・中山美穂で「JINGI・愛してもらいます」が流れます。

「不思議。他の会社ではどうしてあんなに人が辞めるのか」

 そっちが不思議なんですか。

コメント13件コメント/レビュー

愛は執着である、というのは至言ですね。だからこそ仏教はあれほど、執着を捨てろ、というのだと思います。愛はすべてよいことではない。けれども愛がなくては動けない。会社をやめる本当の理由が、人間関係でなかった人を残念ながら私は知りません。配置転換や支所移動だって結局は人間関係ですし。嫌な上司がいても支えあえる仲間が非常にいい人なら耐えられる(場合もある)。自分はそれがなくて辞めてしまいましたが。どんなに薄くても、結局人は愛してもらいたいのだな、とは思います。報われたいと思うのも結局は「愛して欲しい」ってことですし。(2009/02/26)

「女々しい男でいこう!」のバックナンバー

一覧

「女々しい会社は社員が辞めない」の著者

片瀬 京子

片瀬 京子(かたせ・きょうこ)

フリーライター

1972年生まれ。東京都出身。98年に大学院を修了後、出版社に入社。雑誌編集部に勤務の後、2009年からフリー。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

愛は執着である、というのは至言ですね。だからこそ仏教はあれほど、執着を捨てろ、というのだと思います。愛はすべてよいことではない。けれども愛がなくては動けない。会社をやめる本当の理由が、人間関係でなかった人を残念ながら私は知りません。配置転換や支所移動だって結局は人間関係ですし。嫌な上司がいても支えあえる仲間が非常にいい人なら耐えられる(場合もある)。自分はそれがなくて辞めてしまいましたが。どんなに薄くても、結局人は愛してもらいたいのだな、とは思います。報われたいと思うのも結局は「愛して欲しい」ってことですし。(2009/02/26)

ナオエさん、会ってみたくなりました。毎回、コラムを楽しみに読んでます。コラムに登場する「女々し・いい男」さんたちの一番近くにいるパートナー(恋人や奥方)というのはどんな感じの人なのでしょう…と気になりました。そのあたりも是非是非、取材してみてください。楽しみにしております。(2009/02/20)

同感です。自分も迷ってます。給与や処遇ももちろん大事ですが、これまでは、それらがそこそこでも、つづけられた理由は、「その上司に報いるため、部下のために会社にきてがんばろう、よし、やるぞ!」と思えてきたから続けてこられたのだと思います。組織や仕事が変わり、人も変わり、それでも人間関係がうまく行っていれば続けられたのです。 信頼感が、薄れてコミニュケーションも少なくなれば不信感と猜疑心にあふれるのではないでしょうか?(2009/02/20)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

日本の経営者は、経験を積んだ事業なら 失敗しないと思い込む傾向がある。

三品 和広 神戸大学教授