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このカイゼンを見よ!『ラグビー大魂』
~「動じない」人間の育て方

2009年2月4日(水)

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ラグビー大魂(ダイハート)

ラグビー大魂(ダイハート)』 藤島大著、ベースボール・マガジン社、1500円(税抜き)

「困難に立ち向かい、そこで起きる問題を解決していくこと」

 本書でラグビーの価値について問われた元オールブラックス(ニュージーランド代表)のジョナ・ロムーは、そう答えている。

 ロムーは、196センチ、119キロの巨体ながら100メートルを10秒台で駆け、1995年のW杯から2大会連続でトライ王に輝いた選手だ。しかし、彼は、腎臓疾患を患っていた。病と闘いながらプレーを続け、腎臓移植手術をした今も現役にこだわる。冒頭の言葉は、ラグビーに生きる彼の人生観そのもののように思える。

 本書は、スポーツライターの著者が、ラグビーをテーマに約10年に渡り「ラグビーマガジン」や「東京新聞」などに連載した54編のエッセー集だ。著者が取り上げるのは、近年のラグビー事情や、ロムーのようなトッププレーヤーだけではない。地方大会で敗れた高校、仕事の余暇を利用し笛を吹くレフリー、戦中に楕円球を追った青年たち、聴覚障害者のデフラグビー、ラグビーを愛した革命家・チェ・ゲバラ……。著者は、有名無名問わず、ラグビーを愛し、ひたむきに生きる人たちへ視線を向ける。

 都立国立高校や早稲田大学ラグビー部のコーチを務める著者は、若い才能を磨く難しさ、体格や実績が劣るチームが強者に立ち向かう姿勢について言及していく。工夫しなければ劣勢を挽回できないし、磨かなければ才能は錆びついてしまう。それは、ラグビーに限った話ではない。本書は、著者が困難に立ち向かい、そこで起きる問題を解決していく人々に伴走した記録といえる。

 読了後、ひとりの選手のプレーが浮かんだ。私は、ラグビーが好きで年に何度もスタジアムで観戦する。しかし、もう10年近く彼のプレーを目にしていないと気がつき、久しぶりに見たいと思った。

 淵上宗志。

 ジャパンラグビートップリーグで戦うコカ・コーラウエストレッドスパークスに所属する今年32歳になるベテラン選手だ。

 広い視野と抜群のキック技術……。高校時代からゲームコントロールには定評があった。佐賀工業時代、高校日本代表に選ばれ、鳴り物入りで関東学院大学に進学。司令塔として2度の大学日本一に導き、順調に日本代表になった。世代を代表し、将来を嘱望されたスターであった。

 淵上は、派手なプレーで観客をたびたび沸かせた。しかし、その反面、ラグビーの醍醐味である〈タックルすること、地面の球へ身を挺すること、必要に応じては我が身を殺してタックルにさらされること〉など、「痛み」を伴う泥臭い仕事を嫌う選手という評価が定着していた。

 卒業後、淵上は、福岡に本拠を置き、当時は下部リーグだったコカ・コーラウエストに進む。2003年を最後に日本代表を遠ざかってからは、話題にのぼる機会も減っていった。若手の台頭が著しい今、ファンにとっても懐かしい名前かもしれない。

先入観で人を評価することの愚

 淵上が代表から離れて数年が経ったころ。著者は、博多で行われたコカ・コーラウエストの試合を観戦する。そこで「魂を込めて球を動かした」淵上を見る。

 淵上の円熟を目の当たりにした著者は、淵上に対する「そのころの評価が誤りとは思わない。ただし人間は変わる。成長する」と記した後、日本代表の選手選考をこう批判する。

〈この当たり前の事実を、ジャーナリストも、セレクターも忘れてしまう。いわゆる「バイアスをかける」というやつだ。(中略)その時々の注目チームの未完の才能を簡単に選び、国際試合に通用しなければ、そこで見限る。ピークの訪れる前に選んで、おざなりな評価をくだし、後年の充実を見逃す〉

 先入観や思い込みのせいで、人の成長や変化に気がつかずに今を過小評価してしまう。その逆で過去の実績に引きずられる場合もある。仕事の現場でもよくあるのではないか。ただ、先入観のせいで人生や仕事の正否が決まってしまったらやりきれない。それが原因で、組織が弱体化してしまう可能性だってある。

 ラグビーは記録の競技ではない。どんなに足が速く、体が大きくても、いい選手だとは限らない。例えば、体の大きな相手にひるまず向かっていく勇気は、数字に表れない。数値化できない個性を見極めるのが、人を評価するとき大切なのではないかと思う。

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