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流されない、ブレない8人の人たち~『悪党の金言』
足立倫行著(評:朝山 実)

集英社新書、760円(税別)

2009年2月5日(木)

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評者の読了時間9時間00分

悪党の金言

悪党の金言』 足立倫行著、集英社新書、760円(税別)

 眉間にしわを寄せ、不機嫌に、つきまとう取材陣を乱暴に追い払う。そんなヒールの顔があるかと思えば、天真爛漫、幼い子のようにあどけない笑みをみせる。どちらも、つくりものではないのが、彼の魅力なのかもしれない。

 近頃また大相撲が人気を盛り返しているとか。貢献者は、もちろん朝青龍関で、このあいだまで悪く言っていたはずの人たちまでもが、「わたしはずっと応援していました」。かと思えば「ガッツポーズ」にめくじらたてる。言わなきゃいけない事情もあるのだろうが、それにしてもころころ言い分を変えるなんて、見ていてつらいものがある。

 本書は、佐藤優、島田裕巳、田中森一、重松清氏ら8人へのインタビューをまとめたものだ。タイトルにある「悪党」は、「世の大勢に流されず異議を申し立てる者、という謂いである」との、編集者の断り書きがある。

 インタビュアーの足立倫行には、『日本海のイカ』『北里大学病院24時──生命を支える人びと』など、現場に足を運んで書いた優れたノンフィクション作品がある。取材相手に自分がどんな人間かわかってもらうために書いたという自伝的ノンフィクション『人、旅に暮らす』を読んだときに心酔してしまったものだ。

 本書のひとつの特色は、ノンフィクション作家として実績のある著者が、「対談」ではなく、本来の自分の職分である「聞き手」に徹し、愚直に聞きだすことに没頭していることだ。

 分量も、ロングインタビューを謳うだけあって、一人につき原稿用紙に換算して30枚。冗長ではなく、濃密。初出は、休刊になったばかりの「PLAYBOY日本版」で、雑誌の世界ではこの分量は異色である。

 山口組へのルポが原因で刺され、それでも書き続けるノンフィクション作家、係争中の外務官僚、元高検の下獄した弁護士、オウム事件で失職した宗教学者など、顔ぶれは多彩にしてバラバラに思える8人だが、共通しているのは、著書が話題になったこと。

 書かれたものを検証し、それぞれがテーマとするものに切り込み、話を掘り下げていく。

仕事バカのもうひとつの顔

 作家の重松清が「〈あとがき〉にかえて」で、著者に逆インタビューしている。そのなかでこんなことを語っている。

〈表情やしぐさから得られるものを地の文で入れれば簡単なんだけど、それなしで表情が浮かぶというのは、ものすごく難しいことなんじゃないかな。そう思うと内容的なものをまとめる難しさよりも、この空気を伝えるところに、足立さんは相当な出力と工夫を費やされている〉

 工夫のひとつは、私生活への質問だ。話も半ばとなると、おもむろに著者は話題を仕事から、生い立ち、親子関係、結婚、恋愛などに転換させていく。よくある人物インタビューの定型とも思えるのだが、このインターミッションが効果を上げており、仕事バカのインタビュイーのほぐれた、もうひとつの顔を浮き立たせている。

 『あの戦争は何だったのか』『昭和天皇』など昭和史研究の著作で知られる作家・保阪正康氏の章の白眉は、氏の長男の自殺にふれるくだりだ。

〈統計では、成人前の子どもに死なれた夫婦の約半分は離婚するそうです。ウチは離婚しなかったけど、女房はノイローゼになりました。息子の死後、夫婦で毎晩のように話し合いましたね。なぜ息子は死んだのか、どうしても気付かなかった、我々夫婦に何が欠けていたのか……〉

 保阪氏は、その後、取材旅行も講演に出かけていくのも夫婦一緒だという。そんな個人の日々の暮らしを間に置き、保坂氏のライフワークである、天皇の戦争責任や東京裁判の問題を聞きだしている。

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