現在、日本が輸入しているオーガニックコットンは推計2000トン(原綿および綿製品)。これは日本が輸入する原綿や綿製品の総量約95万トンに対してたったの0.002%だ。
そのため国内のオーガニックコットンの各振興機関は、綿農業の環境問題や公正貿易の必要性を説いて輸入振興を計っている。
もちろんそれらは有意義なことだ。しかし存亡の際にある日本の綿に目を向けることは、それと同等に、あるいはそれ以上に有意義なのではないだろうか。
例えば、これまで地方経済振興と言えば観光産業ばかりが取り上げられる傾向にあった。しかし現在、もっと根本的かつ長期的に故郷の財産を再確認しようという動きが見られる。
鳥取県の挑戦
鳥取県は「弓浜絣産地維持緊急対策事業」として2007年9月から伝統織物の弓浜絣(ゆみはまがすり)(*1)の本格的な後継者養成に取り組み始め、同時に糸の原料となる鳥取県地方の在来和綿、伯州綿の復興に力を注いでいる。
鳥取県境港市にある伯州綿の畑、夏頃の様子。県、市、市民が一体になって在来綿と工芸の復興に取り組んでいる。(写真提供:伯州綿・コットンプロジェクト)
鴨川和棉農園のワークショップに参加した足立あきみさん(第2回参照)はこの事業に深く関わっている。
「20年ほど前、弓浜絣の簡潔な線のみでデザインされた絵柄に惹かれて、明治、大正、昭和の作品を集めたり、地域の各家々に残る絣を見せもらったりしていた」と言う足立さん。絣を織りながら伝統工芸の背景についても勉強し、ここ数年は伯州綿の栽培も手掛けるようになった。
「私の先生でもある織物作家の方は、長年ご自身で伯州綿の栽培をされています。やはり、本当の意味での工芸の伝承を考えると、絣の元来の原料である綿を存続させなければ」(足立さん)と言う。
実際、もはや日本のほとんどの伝統織物の糸は在来の綿ではなく輸入綿でまかなわれている。つまり、伝統を単なる姿形ではなく土に根ざした地域の文化と考えるならば、一番重要な根の部分が消失しかけているということだ。そうした危機感は、県行政の中にもあった。
「現在、弓浜絣は現役の事業者がわずか4社(*2)となり、技術者の高齢化も進んでいます。このままでは産地の維持ができなくなるということで鳥取県弓浜絣協同組合(村上勝芳理事長)を主体として、対策事業に取りかかりました」と語るのは渡邉比呂志さん(鳥取県商工労働部兼農林水産部 市場開拓局)。
既存の施設を改修した「弓浜絣伝承館」(境港市)を拠点とし、全国公募で集まった48名の中から選ばれた3名の研修生が技術研修に従事している。
(*2)現時点での従事者は16名。伝統工芸士は7名。
市民と県が協働して在来種の伯州綿を3000平方メートルで栽培
「後継者育成事業をきっかけに伯州綿への関心が高まり、米子農業改良普及所(鳥取県西部総合事務所 農林局)が中心となって、織物に関わる方や一般市民の方々とともに伯州綿復活に向けた栽培活動が行われています」(渡邉さん)と言うように、足立さんと普及所は協力し合って綿栽培を拡充している。
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