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最強のナビゲーターで「須磨がえり」阻止!~『寂聴と磨く「源氏力」 全五十四帖一気読み!』
「百万人の源氏物語」委員会編(評:三浦 天紗子)

集英社新書、720円(税別)

  • 三浦 天紗子

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2009年2月9日(月)

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評者の読了時間4時間00分

寂聴と磨く「源氏力」 全五十四帖一気読み!

寂聴と磨く「源氏力」 全五十四帖一気読み!』 「百万人の源氏物語」委員会編、集英社新書、720円(税別)

〈「須磨がえり」という言葉があります。これは「燕がえし」のような必殺剣の名前ではなくて、源氏物語を読もうとする時、多くの読者がぶつかる困難のことです〉

 これは、本書であらすじ部分のまとめと解説を担当している伊井春樹氏の言葉だ。

〈読者は、チャレンジしようと思って第一帖「桐壺」から読み始めても、だいたいみんな「須磨」あたりでイヤになってしまう。このことを昔から「須磨がえり」と呼ぶのですが、実は、それでは前半の五分の一までしか、読んだことにはなりません〉

 国文学研究資料館長の伊井氏は、源氏物語を始め、中世日本文学研究の第一人者のひとり。彼でさえ、最初は文法やら文化の違いやら細かいことに気を取られて、『源氏物語』の面白さがわからなかったと苦笑している。

 源氏物語千年紀に当たっていた昨年は、これもいいきっかけとばかり、果敢に挑んだ人も多かったろうが、コミック版なら何とか読み通せても、きちんと日本語の文章で「須磨がえり」せずに通読できた強者は、果たしてどのくらいいただろうか。評者の源氏体験も、古典の教科書か副読本に載っていた『源氏物語』のごく一部と、大和和紀のコミック『あさきゆめみし』しかない。

 『源氏物語』はとにかく長い。原文は全54帖、中公文庫の谷崎潤一郎訳や講談社文庫の瀬戸内寂聴訳でそれぞれ全10巻、新潮文庫の円地文子訳でも全6巻ある。

 これだけ長いと、面白いという保証があってもなかなか食指は動かない。物語のどこにターニングポイントがあり、どこがヤマになるのか、長い道のりをナビしてくれる地図がまず欲しくなる。そういう意味で、新書一冊という薄さで、あらかじめ物語の俯瞰的な流れを理解することができる本書はうってつけだ。

面白いのは、光源氏が死んだあとのお話

 伊井氏が指摘する通り、全体が掴めていれば、〈作者が綿密に書き込んだ伏線や登場人物の心理を、深く読み解いていくことができるようになる〉ので、各作家たちの現代語訳にもぐっと入り込みやすい。

 実際、そうした入門書的な位置づけを意識したらしいこの本は、冒頭からするする読める。聞き手である近藤サト氏のベーシックな質問に、瀬戸内寂聴氏がざっくばらんに答え、それを捕捉する形で、第一帖から順を追って伊井氏の説明が添えられている。

 特に評者が興味を惹かれたのは、『源氏物語』の終盤、第四十二帖「匂宮」から第五十四帖「夢浮橋」までをまとめたパートだ。

 人並み外れたルックスと魅力を持つ光源氏に翻弄される女たちの苦悩の物語という前半部分はよく知られているところ。ところが、源氏は第四十一帖で亡くなってしまう。

 源氏がストーリーの表舞台から姿を消す第三部の「匂宮三帖」と「宇治十帖」以降、主役は匂宮(光源氏の孫)と薫(表向きは光源氏の息子だが、実父は柏木)という二人の若者に引き継がれていくのだが、彼らは光源氏のような華やかさに欠けている。そのせいで物語の認知度がいまいち低いわけだが、本書では、あえてこの部分に力を入れているのである。

 瀬戸内氏によれば、人の世の奥深さを知り、苦難を乗り越えて人生を生きる力、「源氏力」をつけるには、この終盤こそがキモらしい。

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