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出張みやげは誰がために?~デパ地下よりもオトコに優しいあの空間

駅で、空港で、あなたが思わず「東京ばな奈」を買う理由

  • 三田村 蕗子

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2009年2月12日(木)

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「甘いもの、けっこう好きなんだよね」

 甘党を自認する男性に「じゃあ、どこのお店の、どんなケーキが好きですか」とすかさず質問をぶつけてみよう。おおかたの返事はこうだ。

 「ええっ…っと、あれ? 店の名前が出てこないな、どこだっけかな。でも、あるんですよ。●●町においしいケーキ屋さんが」

 店の名前はもちろん、ケーキの具体名など出てきやしない。本当に好きなのかと疑わしくなるほど、口の滑りが悪い。ところが、同じような質問を甘党の女性にすると、「マカロンだったら、やっぱりサダハルアオキかな。高いけどおいしい。『抹茶のマカロン』は絶品ね」といった具合にショップ名、菓子名がすらすら出てくる。

 もちろん、男性にもコアなファンはいる。が、極めてまれだ。一般的には店名にうとい。商品名にも詳しくない。選択するのも苦手らしく、豊富なバリエーションが用意されていても、オーソドックスなイチゴのショートケーキあたりに落ち着きがちだ。

 甘いものはきらいじゃないけれど、漠然とした曖昧な知識しかなく、選ぶのも下手。いや、こき下ろしたくて言っているわけじゃないんです。いい悪いではなくて、男性なんてたいがいがそんなもの。それでよろしい。そんな多数派の男性の心をがっちりとつかんで大ブレイクし、東京土産菓子の「顔」となったのが約20年前に発売された「東京ばな奈」だ。

 東京みやげ市場は、「東京ばな奈」とともに活気づき、拡大してきたといってもいい。
 出張先でどんなお菓子を買って会社に持ち帰るかーーは、ビジネスマンにとって、頭の痛い問題だ。

 お菓子一つで、職場における評価はいかようにも上下する。「さすが、わかってる」とポイントを稼ぐか、「あの人の買う菓子なら間違いないよね」と信頼を勝ち取るのか、あるいは、「またつまんない菓子ばっかり買ってきて」と陰でこきおろされるのか。

写真、ロールケーキを物色するビジネスマン
写真、ロールケーキを物色するビジネスマン写真、ロールケーキを物色するビジネスマン

ロールケーキを物色するビジネスマン。果たして本当にお土産なのか…。

A4書類と“互換性”がある「東京ばな奈」

 「東京ばな奈」が発売される前、東京土産菓子市場にはビジネスマンの評価アップにつながるような菓子はほとんどなかった。人形焼きや甘納豆、芋羊羹、おこし、東海道新幹線開通を機に東京に進出し、東京土産菓子として認知されてきた福岡のお菓子・ひよこといった定番菓子があるにはあるが、もはや新味や面白みはゼロ。歴史はあっても魅力的なラインナップとはいいがたい。硬直化した不毛の地だった。

 そこに登場したのが、「食の総合プロデュース」をコンセプトに78年に創業したグレープストーンが送り出した「東京ばな奈」だった。

写真

「東京ばな奈」は東京土産菓子市場を活性化したパイオニアだ。

 92年に羽田空港に催事として登場するや否や、たちまち市場を席巻。東京土産菓子の総本山であるJR東京駅KIOSKや羽田空港ではいまも売上上位にランクインしている。

 「東京ばな奈」は、ふんわりとしたスポンジ生地でバナナカスタードクリームを包んだ菓子だ。正直言って、特段、見栄えがよいわけでも、洗練されているわけでもない。まずくはないが、無茶苦茶美味でもない、素朴さが先に立つ菓子だ。

 しかし、強烈な個性がないように見える「東京ばな奈」には、菓子の購入者であるビジネスマンと、ビジネスマンの持ち帰る菓子をオフィスで手ぐすね引いて待ちかまえている女性たちのツボを突く巧みな商品設計が幾重にも施されている。

 一つずつ、解きほぐしていこう。

 まず、ネーミングがうまい。
 今でこそ、「東京○○」という菓子はいくらでも見かけるが、当時、商品名にずばり「東京」をうたった菓子は存在しなかった。しかし、グレープストーンは「東京の土産菓子なんだから」とあえて「東京ばな奈」と銘打った。はっきりいってベタである。しかし、このベタさ加減が効いた。何を買おうかと売り場で迷う男性に、「東京」という文字はダイレクトに迫ってくる。命名の勝利だ。

 単なる果物の名前ではなく、ほんのり可愛く「女の子」をイメージさせる「ばな奈」という名称や、動物だの人形だのという子どもっぽいキャラクターに走らずに、バナナにリボンを付け、でも目鼻はつけずに、バナナ自体をキャラクター化した戦略も効いている。
 賞味期限にも注目したい。「東京ばな奈」はカスタードクリームを入れた、1週間の期限付き「生」菓子だ。乾き菓子全盛の時代に「生」は差別化の武器として機能した。高級ではないが、懐かしさを感じさせ、嫌いな人はほとんどいないバナナという主材料の選択も絶妙であろう。

 考え抜かれたサイズ戦略にも脱帽する。

 「東京ばな奈」は、ビジネスマンが手に持つ(A4の書類が入る)アタッシュケースやブリーフケースにすっきりと収まる。土産菓子は小さすぎては格好がつかないが、大きすぎても邪魔になる。運びやすく、土産菓子としての体裁が保てるサイズはビジネスマンのツボを突いた。

 さらに感心するのが、どの向きに入れても中身が崩れにくい商品設計になっている点だ。縦にしようが縦にしようが多少のことでは崩れない。土産菓子の勝負時は、ショーケースに陳列されている時ではない。オフィスに持参され、封が開けられ、女性たちの審判を待つ瞬間だ。「東京ばな奈」は、その晴れ舞台がだいなしにならない仕様になっている。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官