2時間00分
会社勤めをしていたときのことだが、ワタシとふたりして取引先を訪問すると、先々で「上司」のもてなしを受ける後輩社員がいた。
仮名をウエシマ君としておくが、段取りを覚えてもらおうと、ワタシが営業トークをしているその一歩下がったところで、ウエシマ君は、周囲を見回したりしながら腕組みしている。
「なにもすることがないし。話を聞いているのも退屈だったので」
ウエシマ君は、あとでボソッと口にした。「退屈」の一言にカチンとはきたが、おさえてみた。そのヒマをもてあましていただけの態度は、先方にはちがった印象を与えていた。
部下の日ごろの仕事ぶりを確認するために、付き添ってきた部長サン──入社3日目のウエシマ君は、そう見えたらしい。
さて、突然ですが、問題です。次のことは本当でしょうか?
1. ヘルメットや帽子を被ると薄毛になる。
2. 海草を食べると髪が増える。
3. 白髪の人は薄毛にならない。
「脱毛がひどくて、シャンプーをかえてみようかと思っているんです」
資料の上に落ちた1本の頭髪をつまみあげながら、つぶやいたウエシマ君のことを思い出す、きょうこのごろである。
『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』
「ハゲの悩みをなんとかします」みたいな書名なら手に取ったりはしなかっただろうが、しかしこのタイトルには、無視しがたいものがある。商売上手の幻冬舎。だいたい何が書いてあるのか予想はつくものの、結局ワタシ、誘惑に負けちゃいました。
そもそもグリーン車にはハゲが多いのか
で、上記をふくむ薄毛にまつわる10個の風説を書中で検証している。ちなみに、1は×で、2は△(海草を食べたからといって髪の毛が生えることはないが、もずくに含まれるフコダインには育毛作用があるという報告あり)、3も×(医学的な証明なし)。
肝心のタイトルについては、
〈たとえば新幹線に乗ったときに、社会的地位が高い人が多いであろうグリーン車の乗客を見てください。髪が薄い男性が多いはずです〉
はず?
〈私もこの本を書くにあたり、グリーン車に乗って調べてみたところ、3車両42人中、17人が薄毛でした。40.4%の男性が薄毛だったのです。/一方、指定席の場合は3車両328人中29人、12.7%の方が薄毛でした〉
……タイトルを裏打ちするデータって、まさかこれだけ!?
おそらく、この書名のために、著者も律儀に調査してみたのでしょう。しかし、1回、それも6両を目視しただけで「データ」とは。結論ありきのお手軽マーケティングというか、バラエティ番組レベルのゆるさだ。まあ、乗客の頭髪にばかり注目して、通路をゆく姿を想像すると十分うさんくさくて、おかしくはあるが。
著者は、「これまで6000人を超える脱毛症患者を治療してきた、頭髪治療の第一人者」だとプロフィールに記されている。ちなみに、著者近影の髪型は眉にかかる、ふさふさ6・4分けだ。自らも薄毛に悩んでいるというが、若々しい。
薄毛の原因は「テストステロン」なる男性ホルモンの作用によるものだ、という医学情報を説明しおえたあとは、頭髪にまつわる逸話紹介になっている。
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