「NBO新書レビュー」

タイトルで予想は付く…でもつい買っちゃった…〜『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』
佐藤 明男著(評:朝山 実)

幻冬舍新書、760円(税別)

バックナンバー

2009年2月18日(水)

1/2ページ

印刷ページ

評者の読了時間2時間00分

なぜグリーン車にはハゲが多いのか

なぜグリーン車にはハゲが多いのか』 佐藤 明男著、幻冬舍新書、760円(税別)

 会社勤めをしていたときのことだが、ワタシとふたりして取引先を訪問すると、先々で「上司」のもてなしを受ける後輩社員がいた。

 仮名をウエシマ君としておくが、段取りを覚えてもらおうと、ワタシが営業トークをしているその一歩下がったところで、ウエシマ君は、周囲を見回したりしながら腕組みしている。

「なにもすることがないし。話を聞いているのも退屈だったので」

 ウエシマ君は、あとでボソッと口にした。「退屈」の一言にカチンとはきたが、おさえてみた。そのヒマをもてあましていただけの態度は、先方にはちがった印象を与えていた。

 部下の日ごろの仕事ぶりを確認するために、付き添ってきた部長サン──入社3日目のウエシマ君は、そう見えたらしい。

 さて、突然ですが、問題です。次のことは本当でしょうか?

 1. ヘルメットや帽子を被ると薄毛になる。
 2. 海草を食べると髪が増える。
 3. 白髪の人は薄毛にならない。

「脱毛がひどくて、シャンプーをかえてみようかと思っているんです」

 資料の上に落ちた1本の頭髪をつまみあげながら、つぶやいたウエシマ君のことを思い出す、きょうこのごろである。

『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』

 「ハゲの悩みをなんとかします」みたいな書名なら手に取ったりはしなかっただろうが、しかしこのタイトルには、無視しがたいものがある。商売上手の幻冬舎。だいたい何が書いてあるのか予想はつくものの、結局ワタシ、誘惑に負けちゃいました。

そもそもグリーン車にはハゲが多いのか

 で、上記をふくむ薄毛にまつわる10個の風説を書中で検証している。ちなみに、1は×で、2は△(海草を食べたからといって髪の毛が生えることはないが、もずくに含まれるフコダインには育毛作用があるという報告あり)、3も×(医学的な証明なし)。

 肝心のタイトルについては、

〈たとえば新幹線に乗ったときに、社会的地位が高い人が多いであろうグリーン車の乗客を見てください。髪が薄い男性が多いはずです〉

 はず?

〈私もこの本を書くにあたり、グリーン車に乗って調べてみたところ、3車両42人中、17人が薄毛でした。40.4%の男性が薄毛だったのです。/一方、指定席の場合は3車両328人中29人、12.7%の方が薄毛でした〉

 ……タイトルを裏打ちするデータって、まさかこれだけ!?

 おそらく、この書名のために、著者も律儀に調査してみたのでしょう。しかし、1回、それも6両を目視しただけで「データ」とは。結論ありきのお手軽マーケティングというか、バラエティ番組レベルのゆるさだ。まあ、乗客の頭髪にばかり注目して、通路をゆく姿を想像すると十分うさんくさくて、おかしくはあるが。

 著者は、「これまで6000人を超える脱毛症患者を治療してきた、頭髪治療の第一人者」だとプロフィールに記されている。ちなみに、著者近影の髪型は眉にかかる、ふさふさ6・4分けだ。自らも薄毛に悩んでいるというが、若々しい。

 薄毛の原因は「テストステロン」なる男性ホルモンの作用によるものだ、という医学情報を説明しおえたあとは、頭髪にまつわる逸話紹介になっている。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント0件受付中
トラックバック
著者プロフィール

朝山 実(あさやま・じつ)

ルポライター。1956年、兵庫県生まれ。地質調査員、書店員などを経て、ライターとなる。イッセー尾形らの単行本の編集、井筒 和幸監督の映画「パッチギ!」ノベライズ(キネマ旬報社)などを手がける一方、さまざまな媒体で人物ルポを執筆。 本サイトから生まれた初の書籍『イッセー尾形の人生コーチング』の著者でもある。日刊チェンマイ新聞で「という本の話。」を連載中。

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン