皮膚は、あまりに当然の存在すぎて、改めてああだこうだと考える機会は少ない。顔色の悪さや肌のトラブルといった健康や美容の問題として扱ってしまい、そこに日々生きる上で欠かせない精妙な働きが行われているなど、想像もしない。
だが、「皮膚は第三の脳である」と提唱している人がいる。資生堂新成長領域研究開発センターの傳田光洋さんだ。身体を包む役割に過ぎないという皮膚の常識を覆す宣言だ。成人だと一畳ほどの面積、重さ3キログラム。そんな皮膚の持つ思いもよらぬ働きについて尋ねた。
−−最近では、男性向けのスキンケア製品も店頭に並んでいます。またアトピー性皮膚炎などのアレルギーや化学物質過敏症を患う人も増加傾向にあります。これらを踏まえると、もっぱら美容や健康の観点から関心は高まっていると思われます。しかし、傳田さんは、美容や健康とは違った視点から、皮膚の働きについて研究されています。まず、皮膚の基本的なしくみや役割から教えていただけますか?
傳田光洋(でんだ・みつひろ) 資生堂新成長領域研究開発センター主任研究員。1960年、神戸市生まれ。京都大学工学部工業化学科卒業。同大学院工学研究科分子工学専攻修士課程修了。94年に京都大学工学博士号授与。カリフォルニア大学サンフランシスコ校研究員を経て、02年より現職。主な著書に『皮膚は考える』(岩波書店)『第三の脳』(朝日出版社)。
傳田:皮膚は最深部から順に、「皮下脂肪」、クッションの役割を持つ「真皮」、ケラチノサイトと呼ばれる細胞で構成される「表皮」、その表面を覆う「角層」で形成されています。
皮膚の働きとしては、まずバリア機能が挙げられます。角層が、外からの異物を入れないための防御壁となります。次に、侵入しようとする菌を攻撃する免疫システムの役割もあります。さらに、人間の体内にある水分を蒸発させない働きを備えています。
肌と心的ストレスは切れぬ縁
−−研究の中で改めて分かった皮膚の役割などはありますか?
傳田:ええ。つい一昔前の20世紀まで、皮膚は免疫機能と水分を通さないバリア機能だけに着目されがちでしたが、最近の研究によって、それらの働きも別の方面から考察されるようになりました。
例えば、人の受けるストレスの度合いによって、ばい菌を殺す免疫力も低下することが分かってきたのです。
−−ストレスが多くなると病気になりやすいというのは、あながち俗説ではなかったのですね。
傳田:ストレスで皮膚ガンになりやすくなるという報告もありますから、メンタルの状態と皮膚の重要な免疫システムはリンクしているようです。
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