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「常識」は、単なる思いこみってこともある~『百鬼夜行絵巻の謎』
小松 和彦著(評:栗原 裕一郎)【奨】

集英社新書ヴィジュアル版、1200円(税別)

  • 栗原 裕一郎

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2009年2月20日(金)

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評者の読了時間6時間00分

百鬼夜行絵巻の謎

百鬼夜行絵巻の謎』 小松 和彦著、集英社新書ヴィジュアル版、1200円(税別)

 ある発見によって、それまでの定説が一挙にひっくり返るということがときおり起こる。この『百鬼夜行絵巻の謎』は、そんな瞬間をほぼリアルタイムに伝えた(かもしれない)一冊である。

 内容もだが、こんな専門性と趣味性の高い発見が、新書という媒体にまず載せられたということに驚かされる。新書爛熟期を象徴する書物といっていいかもしれない。

 専門性は高いものの、よく練られた構成にすっきりとわかりやすい文章、さらにカラー図版をバンバン使った懇切丁寧なつくりのおかげで、予備知識がなくてもすんなり楽しむことができるだろう(固有名詞はメモらないと混乱すると思うが)。

 さて「百鬼夜行絵巻」とは、室町時代に大流行した、妖怪たちがぞろぞろ練り歩いている様子を描いた長い絵巻のことである。

 いくつか有名なものがあるが、なかでも重要文化財に指定されている、大徳寺真珠庵収蔵の伝土佐光信画「百鬼夜行絵巻」(真珠庵本)が、美術的価値の高さもあって研究の中心に置かれてきた。室町中期(16世紀)に描かれたものだ。

 その次に有名なのが、東京国立博物館に収蔵されている模本で(東博模本)、こちらは江戸後期の作品だが、描かれている妖怪の数が真珠庵本より多くごちゃごちゃしており、「祖本」(オリジナル)は真珠庵本よりも以前のものだとされてきた。

 つまり、東博模本の祖本を整理・洗練させるかたちでつくられたのが真珠庵本である、というのがこれまではほぼ定説になっていたのである。

 だが、百鬼夜行絵巻には伝本(コピー)がたくさんあって整理が行き届いておらず、成り立ちや系統の解明をはじめ、全貌は「謎」に包まれたままの状態にあった。そもそも百鬼夜行絵巻というものが一体何を表現しているのか、いまだによくわかっていないのだ。

 ところが、これまでの仮説を根こそぎひっくり返すだけでなく、複雑に混乱する百鬼夜行絵巻の「謎」さえかなりの整合性をもって説明しうるかもしれない重要な絵巻が最近、発見されたのである!

 その絵巻「百鬼ノ図」が本書の主人公だ。

研究者に訪れる「これだ!」という出会い

 きっかけはひょんなことだった。というか、「そんなもんなの?」と拍子抜けするようなあんばいである。とある古書店に売れ残っていた(!)絵巻が、人伝てに「珍しいのがあるんだけど買わない?」と著者のもと(国際日本文化研究センター)に持ちかけられてきたというのだから。

 著者はその「百鬼ノ図」(日文研本)を見た瞬間に、電撃が走ったような衝撃を受ける。

〈研究者というものは、その研究人生で一度や二度は、「これだ!」と叫びたくなるような決定的な資料や出来事に出会うことがあるといいます。私にとって日文研本はまさにそれでした。/たくさんの百鬼夜行絵巻を目にしながら、ぼんやりと感じていた整理のつかない諸々の疑問が、この絵巻によって一挙に氷解する! そう思えたのです〉

 その衝撃的絵巻は現在、日文研のホームページで公開されている。以下のリンク先の「絵巻物一覧」にある「吉光 百鬼ノ図」というのがそれだ。何はともあれ、まずはごらんあれ。

(リンクはこちら

 はい、見ましたか?

 素人目には何がすごいのかさっぱりわからないこの絵巻のすごさは、著者の説をまとめると次の2点に求められる。

(1)描かれている妖怪が、東博模本から真珠庵本を差し引いたものだけで構成されていること。

(2)絵巻の終わりにあたる黒雲のシーンが、全体のじつに3分の1というボリュームを占めていること。

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