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(花粉症の)ITシロウトが読んでも学ぶところ多し!~『マイクロソフト戦記』
トム 佐藤著(評:清野 由美)

新潮新書、720円(税別)

2009年2月23日(月)

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マイクロソフト戦記──世界標準の作られ方

マイクロソフト戦記──世界標準の作られ方』 トム 佐藤著、新潮新書、720円(税別)

 自慢じゃないが、私は花粉症のベテランである。だからこの時期、頭を使うことは、とてもつらい。

 自慢じゃないついでに言うと、私はことITにかんしては、テクノロジーのことも、業界のこともさっぱり分からない。

 それなのになぜこの時期、頭への負荷があきらかに大きなタイトル『マイクロソフト戦記』を手に取ったのかというと、「その瞬間、ビル・ゲイツは激怒した──。」という帯の文言に「ん?」と、惹かれるものがあったからだ。激怒するビル・ゲイツって、面白そう。

 だがそれ以上に、著者のトム佐藤とは四半世紀にわたる個人的な面識がある、ということも、大きな理由のひとつなのだった。

 とはいっても、トムと最後に会ったのはかれこれ10年ぐらい前だろうか。私の記憶の中では、それよりさらに遡ること10年。80年代後半、IT業界がまだ海のものとも、山のものとも分からぬブレイク前夜に、マイクロソフト日本法人でウィンドウズのマーケティングを担当していたころの彼だ。

 親の赴任に伴って13歳から英国で暮らし、ロンドン大学を卒業したというトムは、日本語がちょっと覚束ないベビーフェイスで、切った張ったのビッグビジネスに携わっている、という雰囲気ではなかった(ごめん、トム佐藤)。

 しかし、帰国子女仲間と英語で会話するトムの姿を見たりすると、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンというアカデミズムの本場で、経済学でも政治学でもない天文物理学という非・実学を学んだ彼の、英国的な教育バックグラウンドが、きらり、と光る瞬間があり、何だか分からないが、さすが、と感じたりしていたのであった。その本領が発揮されたのが本書だといえる。

マイクロソフト流勝利の三原則

 最初にお断りしておくが、この本は私のようなIT業界に詳しくない人には、決して読みやすいものではない。まず、MS-DOS、OS/2、MSX、MSX-2、と随所に出てくるIT界特有の暗号のような記号が、とにかく親しみにくい。それはまるでドストエフスキーの小説の登場人物のようで、いったん「あれ、これ、何だったっけ?」と立ち止まると、筋を追うこともままならなくなる。

 加えて、著者の周辺で起きる数々の事件が、IT業界だけでなく、世界にとって、どんな意味を持つのか。予備知識に乏しい素人には、その辺りの解釈も判然としない。

 それでも本書を面白く読み切ることができたのは、次にあげる3つのキーワードに、IT業界だけではなく、ビジネス界全体に通じるであろう、ある真理を感じたからだ。

 3つのキーワードとは「デファクトスタンダード」「ボース・アインシュタイン凝縮」「最大多数の最大幸福」。つまるところ、ビル・ゲイツ率いるマイクロソフトの勝利は、この3つを達成することだったのだ。

 とはいえ、単語を並べただけでは、さっぱり分からないでしょう?

 「デファクトスタンダード」を直訳すると「事実上の標準」になる。ITに限らず、産業界には、JIS規格など公的な認定機関が定めた標準仕様があるが、デファクトスタンダードはそうではなく、マーケット先導で作り出される標準をいう。

 たとえば家庭用ビデオ規格のVHSなど、デファクトスタンダードを果たした覇者は、世界市場でひとり勝ちして、巨万の富を得る、というのが近年の産業界の流れだ。ビル・ゲイツ率いるマイクロソフトが仕掛けた闘いとは、ウィンドウズをパソコンOSのデファクトスタンダードにすること。その一点にひたすら集約される。

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「(花粉症の)ITシロウトが読んでも学ぶところ多し!~『マイクロソフト戦記』
トム 佐藤著(評:清野 由美)」の著者

清野 由美

清野 由美(きよの・ゆみ)

ジャーナリスト

1960年生まれ。82年東京女子大学卒業後、草思社編集部勤務、英国留学を経て、トレンド情報誌創刊に参加。「世界を股にかけた地を這う取材」の経験を積み、91年にフリーランスに転じる。2017年、慶應義塾大学SDM研究科修士課程修了。英ケンブリッジ大学客員研究員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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