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「認めてほしい」と、いってほしい

2009年2月26日(木)

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 この取材、飲みながらが多いんです。私が飲みたがりというのもありますけれど、たいていが仕事終わりに話を聞くことになるわけで、「今日も一日お疲れ様」の雰囲気で「コーヒー」「ウーロン茶」とはなかなか言えない。

「ねねね、なんでそんな話を俺に聞くの。俺のこと、女々しいって思ってるの?」

女々しいイラスト

 階段をぐるっと降りた地下の店、グラス二つにビールを注ぎ、ヒロセさんはそう言います。

 ですよね、そう受けとめますよね。そう思って当然です。でも決して、私はそう見ているわけでは、と言いますか、私は「女々しい男」はそれ相応の褒め言葉だと思ってるんですけど、そうは思ってもらえませんよね。

「いいけど。俺、実際に中身はオバチャンだし。役に立てるならなんでも話すよ」

 ヒロセさんはとにかく人がいい。怒らないし、断らない。私を含め、周りはどれだけヒロセさんに助けられてきたことか。私を含め、誰かがが調子に乗って生意気言っても「あはは」なんて笑っている。

「女々しいって言うか、気が小さいなと思うことはあるよ。それはたとえばみんなと一緒にいるとき。何か言って、場を壊したくないって思っちゃう。計算しているんだよね。そういうところが、死んだ親父にそっくりなんだ、俺」

 ヒロセさんの父上は、ヒロセさんが20代のころに亡くなっています。

「すごくまじめで、他人と争うことは絶対にしない、いい人だった。飲んでも周りに迷惑をかけることって絶対になかったし。でもそれが結果として、精神的に親父を追い詰めたと俺は思ってる」

 そういう父上のようにはなりたくなかったというヒロセさんですけれど、しかし――。

「似たくなんかないって気持ちはあるのに、似ちゃってる。俺も飲むとホントに気を使うんだ。相手を盛り上げないとって。醒めてからそれで落ち込むことも、よくあるよ。仕事中も引きずったりして」

 ヒロセさんは、結構難儀なお仕事をしています。何度聞いてもその中身を私はよく理解できませんが、仕事相手の大半が女性だということだけは知っています。

 時間のかかる仕事ゆえ、あまり自宅へ帰れていない。オフィスの床に、マットレスを敷いて寝る夜が続きます。

 そうは言っても子どもの学校から呼び出しがあれば、お父さんは必ず出かけていく。

「やっぱり父親としてやらないとならないと思うから。で、その場では子どものために一生懸命やるんだけど、でも、心のどこかで『俺、今、こんなことやっていていいのかな』とも思う。仕事場では俺を待っている人がいるのにって。仕事も家も、どっちも大事なのはわかってる。でも、どっちを重視するのが自分にとって幸せかというと、仕事なんだよね」

 しかしそれは奥さまにはなかなか理解されず「家のことはどうでもいいの?」と責められることもしばしば。

 ここで、去年のクリスマスイブ前日の、その前の日の話です。
 ヒロセさんの仕事は佳境で、そもそも23日が天皇誕生日で休日ということも忘れ、やっぱり仕事をしていました。すると奥さまから電話が入ります。

「ケーキを買って、帰ってきて」

 目の前には顧客がいるのですからヒロセさんは渋ります。しかしこの先、想像できますよね。
 奥さまはそれを許さない。どうして今すぐ帰ってこれないのかと言う。ヒロセさんの口を借りると「キレる」わけです。

「俺だって、仕事:家庭=100:0とは思ってないんだよ。でもさあ、カミさんに対して、俺は外でやるべきことをやるし、必要なときは出ていくから、ふだんの家のことはしっかりやってくれ、なんとかしろって思いがあるわけ」

 仕事を大事にするがあまり、“相対的に”家庭がないがしろになってしまっているヒロセさん。その仕事への情熱を、奥さまにあまり話していません。

「だって野暮でしょう。俺という大黒柱にしてみれば、家で家族が普通にクリスマスを迎えられるように、そのために働いている部分もあるわけで、それは言葉を積んで説明するものじゃないと思う。どう説明していいかわからないし、なんて言うか、間が持たない」

 ではその12月22日、ヒロセさんはどうしたか。

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「「認めてほしい」と、いってほしい」の著者

片瀬 京子

片瀬 京子(かたせ・きょうこ)

フリーライター

1972年生まれ。東京都出身。98年に大学院を修了後、出版社に入社。雑誌編集部に勤務の後、2009年からフリー。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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