「ちわぁー、タローでーす」
「まいどぉー、ショーちゃんでーす」
「しかしなんやな、プリン体カットのビール系飲料が評判らしいやないか。木曜日の日経で特集組んではったで」
「なんやそれ。プリン体形のオッサンがビール浴びてるちゅうことか?」
「全然ちがうな」
「じゃあ、不倫で雇用カットのオッサンがやけ酒か?」
「ツッコミにくいボケかますのやめぇ」
「それにしても、『ビール系』いうのはどいうこっちゃ? ビールとちゃうのんか?」
「いや、ビールもビール系や」
「おネエがお姉系なのと同じか?」
「いや、おネエは、お姉系ちゃう。そもそもおネエは男やし」
「じゃあ、ギャルはお姉系か?」
「お前はどうして話を拡散させる? それじゃ会議にならんだろう。ま、とにかく、わからんヤツには教えない。それに、どうせ忘れるヤツには説明しても無駄や」
「つまりこういうことか? プリンなんたらがカットされてるビールは、会議の前に飲んでもかめへん、と」
「あかん。会議の前も会見の席でも、会談の後も会食の最中も、あかんものはあかん。おまはんは当分禁酒や」
「ははぁなるほど、糖分ゼロのビールなら飲んでもよろしいちゅうことやな?」
「あかん。それに淡麗Wがゼロと言うてるのは糖分とちゃう。糖質や。糖質ゼロ」
「糖分と糖質は別なのか?」
「微妙に違う。糖類もまた別」
「わけわからん。もうええわ。上を向いてアルコールや」
「そうやってすぐに投げ出すからあかんのや」
「♪アルコール、アルコール、わたっしは元気ぃー」
……麻生さんと中川さんは、いっそ漫才でもやれば良いのではなかろうかと思って急遽お2人を想定して会話体で原稿を書いてみたのだが、案の定まとまらなかった。申し訳ない。早めに撤退する。勘弁してくれ。
考えてみれば、話を聞かない人と説明しない男が、ロレツを滑らせながら誤読だらけの対話を展開して、でもって、その彼らの会話を通じて用語解説の原稿を書くという設定に、そもそも無理があった。
よろしい。あきらめよう。解散。
以下、ふつうに解説する。
本題は、「プリン体」および「糖質」周辺の言葉たち。「糖類」「糖分」「炭水化物」などなど。ついでに「ビール系飲料」と「ビール」の関係についても順次考えてみたい。
まず、原則から。
産業化された言葉は、本来の語義からはみ出した営業用のニュアンスを帯びる場合がある。
また、税収源として分類されてしまった概念は、その範囲を微妙にシフトする傾向を持っている。
さらに、法の適用を避けようとするCM用語は、微妙な婉曲に逃げ込む。
たとえば、ある髪の毛関連産業のCMは、「3パーセントのお客さんが発毛を実感することができませんでした」という表現を繰り返している。
狙いは「97%の顧客が発毛を実感している」ことを印象づけようとするところにある。見え見え。
問題は、「実感」だ。
「発毛した」とも言っていないし。「発毛する」とも言わない。どのバージョンでも、例外なく「発毛を実感する」という、半歩ズラした表現を死守している。
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