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利益率は50%、高いか安いか~『死体の経済学』
窪田 順生著(評:稲泉 連)

小学館101新書、720円(税別)

2009年2月25日(水)

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死体の経済学

死体の経済学』 窪田 順生著、小学館101新書、720円(税別)

 子供の頃に一緒に暮らしていた家族が亡くなり、東京都内の火葬場へ初めて行ったときのことだ。続々と到着するお棺の多さに、都心の現実を見せられた気がした。

 日本では年間に約110万人が亡くなる、という統計の数字を引くまでもなく、「死」は社会の中に自明のものとしてあるに違いない。ただ、頭ではそう理解しているつもりでも、日々の生活の中でそれを実感する機会はとても少ない。

 火葬場の混雑風景を目にしたとき、近しい人の死が初めての経験だった当時の私は、普段は見えない「死」という日常を突きつけられた気持ちになった。社会には確かに「死」があふれていて、それはとても身近なところにもある。自分にとってかけがえのない別れの場だったからこそ、ふと考え込んでしまった瞬間だった。

 本書はそうした「日常としての死」、とりわけ葬儀ビジネスの現場をリポートした一冊だ。

 タイトルに「経済学」とあるように、葬儀費用の実態がまず明らかにされていくのだけれど、そこに垣間見える業界の特性をどうとらえるかで、印象はだいぶ異なってくるように思う。

 例えば、日本における葬儀の平均費用は231万円。本書には、この額は果たして「高い」のか、それとも「安い」のか、という問いかけが底流している。

 内訳や原価だけをみれば、確かに「高い」。

 元手のほとんどかからないドライアイス代が1日1万円、レンタルされる祭壇は業界通の人物でさえ「本当の値段は分からない」と話すほどだし、中国製が席巻する「棺」の原価などはさらなるブラックボックスだというのだから。

 葬儀業界には「葬儀屋は月に1体死体がでれば食っていける。月に2体死体がでれば貯金ができる。月に3体死体がでれば家族揃って海外旅行ができる」との格言があり、利益率は50%(悪徳な業者だと70%)とも言われているそうだ。

 しかし著者はこのことを指して、不当ではないかと声を荒げるわけではない。

知らぬが仏の葬儀ビジネス

 葬儀は弔いの「儀式」であり、残された者の心と深くかかわるものだ。通夜や告別式をせずに火葬する「直葬」で死者を深く悼む人がいれば、どんなにお金をかけても心を尽くし切れていないと感じる人もいる。

 さらに、様々な過酷な状況で遺体処理を行う重労働であることを考えれば、1万円のドライアイス代を「遺体に触れるサービス料」ととらえる彼らの話は不自然ではない。

 ある関係者が葬儀ビジネスの本質について、「“知らない”ということに尽きる」と著者に本音を漏らす箇所がある。

 祭壇や生花や棺の値段も、一般に知られていないからこそ利益率が高くでき、同時に葬儀の格式を高めることにもつながる。知らぬことは、葬儀社にとっても遺族にとっても好ましい、という理屈がこの世界にはあるというのだ。

 しかし、こうした葬儀ビジネスの「閉鎖性」は、近年徐々に崩れているらしい。

 収益構造への疑問の声は業界への不信を生みかねず、その声に応じるように「格安プラン」を用意する「葬儀ベンチャー」も増えてきた。

 著者は〈これまでのような「祭壇中心主義」ともいえるビジネススタイル〉が崩壊しつつあるという視点のもと、葬儀ビジネスの「最前線」に足を運ぶことで、その変革の兆しを見いだしていく。

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