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「なぜなの?」と聞かれたらこれで答えよう~『グローバル恐慌』
浜 矩子著(評:荻野 進介)

岩波新書、700円(税別)

  • 荻野 進介

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2009年2月26日(木)

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グローバル恐慌──金融暴走時代の果てに

グローバル恐慌──金融暴走時代の果てに』 浜 矩子著、岩波新書、700円(税別)

 ここ10数年の日本経済や社会を語る際、「バブル崩壊後」というのが便利な枕言葉だった。が、どうやら王座を明け渡すときが来たようだ。つい先日発表された、石油ショック以来という二桁のGDPマイナスは衝撃的だった。後代の歴史書は今回の経済危機をどう名づけるのだろうか。

 本書は、その震源地となったアメリカの金融市場の歴史を追い、未来に向けた処方箋を導き出そうとする。

 副題で分かる通り、原因は「実体経済と離れた金融の暴走にあり」というのが著者の考えだが、いかにして暴走を防ぐか、については期待したほどの深い踏み込みはない。それでも、難解な専門用語で煙に巻くわけではなく、叙述も平易、「なぜこんな事態が起きたのか」を手軽に知る好著といえるだろう。

 昨年9月15日のリーマン・ブラザース破綻に端を発した今回の恐慌。耳タコかもしれないが、問題の本質は〈サブプライム融資に内在するリスクが証券化という手法によって世界中にばら撒かれていったこと〉にあった。

 「証券化」の対象となるのは債権(債務履行請求権)であり、いうならば請求書。証券化を活用する金融機関はツケがよくきく飲み屋のようなもの。債権の証券化商品とは、飲み屋がたまった請求書を切り分けたり、束ねたりしてつくった福袋なのだ、と著者は卓抜な比喩でその仕組みを説明する。

 それを町中で売りに出せば、飲み屋には福袋代という現金収入が入り、貸し(=ツケ)倒れリスクも減る。福袋の購入者は中に入っていた請求書を持参して相手先にツケを払ってもらう。それが自分の懐に入るわけだ。

 ところがこの福袋には大きな落とし穴があった。焦げつきの発生、つまりツケを払ってくれない客が増えたら、福袋を買った投資家たちが大損を蒙る。投資家に購入資金を用立てた人にも不幸が連鎖する。おまけに飲み屋の評判も落としてしまうだろう。福袋がいつの間にか禍(わざわい)袋と化したのだ。

 疑心暗鬼となった人は福袋の購入をやめ、難を逃れている人も、とばっちりを受けたくないから、金を貸すことをいつしかやめてしまう。こうして、町の経済活動が麻痺状態に陥るというわけだ。

ジャパンマネーとサブプライム問題

 債権の証券化自体は資金の流動性を促し、リスクを分散させる手段として、その効用が大いに喧伝されてきた。しかし、一人にとってのリスク分散=他者に対するリスク拡散となる。自己最適が全体最適につながらない、いわば「合成の誤謬」という“悪魔”が債権の証券化という金融手法に潜んでいた、と著者は指摘する。

 一方、斬新な金融商品が開発されても、潤沢な資金がなければ売れ行きが伸びるわけがない。しかし、売れたのである。背景にあったのが世界的な低金利・カネ余り現象だ。それを支えた要因として、著者は、中東産油国のオイルマネー、世界の中央銀行がこぞって実施した低金利政策、中国をはじめとした新興国の高い外貨準備高、長きにわたって続いた日本のゼロ金利政策と量的緩和措置の4つを挙げる。

 そのうち一番大きな影響を及ぼしたのがジャパンマネーだという。世界最大の債権国の金利が実質ゼロに張り付けば、世界的にも低金利となるのは自明の理だからだ。その結果、日本でただ同然の金利負担で資金を調達し、外貨に換えて運用する「円キャリートレード」がさかんに行われた。

 そんななか、だぶついたカネを、少しでも利回りのいい金融資産に廻そうと願う投資家が向かった先が、サブプライム証券化商品だった。

〈日本とサブプライム問題は、このような脈絡の中で密接に絡み合ってきたのである。この問題ほど、グローバル時代が連鎖と融合の時代であることを我々にはっきり示してくれたものはない〉

 ここから著者の筆は歴史を遡る。

 今回のグローバル恐慌の引き金をひいたのはアメリカ経済の行き過ぎた金融自由化だったが、その原点となったのはドルと金との交換を停止した、1971年8月15日の、いわゆるニクソンショックだった。

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