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北朝鮮の一子相伝「フラグ芸」

「フラグ」(意味:たいていの場合、結果と一意対応する「ベタ」の言い換え)

2009年3月2日(月)

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 北朝鮮の祖国平和統一委員会の報道官は、26日、日米韓などが長距離弾道ミサイルとして警戒する「人工衛星」発射準備について、「何が打ち上がるかは見ていればわかる」と述べたのだそうだ。

 味のある答弁だ。

 日本の官僚がこのレベルの発言をしたら一発でクビだと思う。
 が、北朝鮮では、逆に、これぐらいカマさないとクビがあぶないのかもしれない。

 ということはつまり、彼の国の官僚は、安全なのだろうか。あるいは、危険な場所にいる人間は、危険な発言をしていないと安全が確保できないものなのであろうか。

 いずれにしても、打ち上がればわかるということは、打ち上がるまではわからないということで、つまり真相は闇だということだ。

 結果として、何が飛んで来るのであれ、実は、どうせたいした問題ではない。

 「衛星」なのだからして、「着弾」の場所や距離みたいなことについては気にしないのが礼儀だよね、ぐらいに鷹揚に構えておくのが平和なのだ、と私は個人的にはそう考えている。

 一番マズいのは、「ニュー・テポドン・フィーチャリング・ストックト・プルトニウム」とかいった調子の、落ち目のヒップホップアーティストの抱き合わせリリース商売みたいなブラフを、こっちが真に受けてしまうことだ。

 ああいうものは架空請求のハガキと同じで、相手にしないのが一番。あわてて手持ちのエロ動画の入手先を洗い直したり、ハガキの番号に問い合わせの電話を入れたりするのは愚の骨頂です。というよりも本当はあれこれ推理することさえ、敵の思うつぼなのだ。

 が、一面、わたくしどもメディアの人間も、北の家族の人たちをネタにすることで、誌面を埋めたり演出進行をにぎやかしたりして、そうやって持ちつ持たれつでミサイルを待っていたりする。だから、彼らの立てたフラグを無理読みに読む。

 因果な商売だと思う。

 不思議なのは、「北朝鮮ウォッチャー」と呼ばれる人々の意見が、いつも決して一致を見ないことだ。

 彼らの見解は、「彼の国の将来は予測しがたい」という一点において軌を一にしているものの、個別の案件について尋ねると、見事なばかりに散乱する。

 たとえば、我が道を行く領導者キム・ジョンイル同志の健康状態について、北朝鮮ウォッチャー諸氏の意見は、この数年、あらゆる時点において、常にバラバラだった。

 ある専門家は、半年ほど前、「キム・ジョンイル氏は既にこの世にいない」と断言していたが、現在は口をつぐんでいる。復活の可能性を勘案しているのか、影武者の健康状態を考量しているのか、真意は不明だ。別の専門家は重症だと言い、さらに別のウォッチャーは回復中だと言っている。

 後継者についても同様。いつもバラバラ。三男を推す向きもあれば、長男で鉄板だと言う人もいる。

 ……と、このあたりの百家争鳴ぶりは、経済方面のアナリストの世界の甲論乙駁状況と相通ずるところがある。
 同じ情報を共有している専門家だったら、もう少し足並みが揃うものではないのだろうか。

 たとえば、気象予報士の皆さんは、どのテレビ局の専属のヒトもほぼ似たような予報をアナウンスしている。しかも、滅多にハズさない。

 北朝鮮ウォッチャーや経済アナリストがこんなにも異論反論オブジェクションなのは、もしかして、彼らが府中競馬場のパドック周りにいる予想屋のおじさんたちとそんなに変わらない人たちだからではないのか?

 ん? 気象予報士は、気象庁の予報をオウム返しにしているだけだと? 
 だとしても、勝手読みをしてハズさないだけ立派じゃないか。

 それに、彼らは天気を操るみたいな大口は叩かない。気候の改善を訴えるテの説教も垂れない。ただただ、予想に徹している。謙虚だと思う。

 その点、政治経済外交の専門家は、予想では飽きたらず、提言をカマしたり、警鐘を鳴らしたり、いったい何様のつもりなんだ?
 まったく。

 「衛星」については、様々な解釈がある。
 ネット上の論客は、これを「フラグ」であると見なしている。
 「フラグ」つまり、「旗」だ。

コメント7

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「北朝鮮の一子相伝「フラグ芸」」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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