『再現!巨大隕石衝突 6500万年前の謎を解く』 松井孝典著
ジュラシックパークというマイクル・クライトンの著書や映画をご存じの方は多いだろう。化石になった恐竜の卵をもとに、クローン恐竜を再生する話だ。かつてジュラ紀といわれる地質時代には、恐竜が地球上にはびこっていた。それが、ある時突然絶滅した。さまざまな原因が考えられたが、どうやら大型隕石が地球に衝突し、そのため気候が激変したのが主要因ではないか、という説が生まれた。
確かにユカタン半島に巨大なクレーターが発見され、それを精密に検証するとどうやら大衝突はあったらしいことが分かってきた。著者の専攻は比較惑星学である。
地質学的に言うと6500年前の地層は専門語としてK-T層と呼ばれている。白亜紀と第三紀との境目という意味だ。地層で「紀」の境目は重要だ。前の紀と次の記で化石どのような変化があるかを調べると、地球上の生命の変化が分かるからだ。
ところがヨーロッパからK-T層の間に化石をまったくも含まない薄い層があるという報告がされた。色めき立った地質学者は直ちに世界中のK-T層の調査を始めた。K-T境界の地層からはわずかだがイリジウムが検出された。
イリジウムは世界中どのK-T境界層でも発見されたが、メキシコ湾岸(カリブ海のユカタン半島)で分厚いK-T境界層が発見され、イリジウムも多く出た。メキシコ湾のユカタン半島沿岸ではT-K境界層の9メートルもの厚い堆積層が見つかった。
世界中の地層学者がその謎を解くべく頭脳を結集した。異常に厚いK-T境界層がメキシコ湾岸で見つかったことで、ひょっとしたらそこが常々言われていた、大隕石の落下地点ではないかという考えが共通認識になってきた。
大隕石の大きさは直径10キロメートルと言われていた。そのような大隕石が秒速8キロメートルほどのスピードでユカタン半島にぶつかった。シミュレーションで計算すると直径200キロメートルほどのクレーターができると推測された。
では直径10キロの隕石(これくらいの大きさの小惑星はいくつもある)が地球と衝突した瞬間になにが起こるか。衝突は大きく深い穴を穿つ。その穴に周囲の海水が流れ込む。周辺の海岸では、それまでになかったような引き潮を観測するだろう。それに続いて何波にも分かれた大津波が押し寄せる。津波の高さもけた外れだ。波高300メートルの津波がアメリカ大陸に押し寄せる。
衝突口の深さは3万メートルほどで、これはちょうど地殻の厚さに相当する。すると地殻が吹っ飛ばされてその下のマントルが露出する。マントルとしてはいきなり地殻の圧力がなくなり、「圧力降下による溶融」という現象が起き、ドロドロに溶けてしまう。海水は蒸発してしまう。
そして、隕石孔に周囲の海水がなだれ込む。相互にぶつかり合い大きな波高の山がうまれる。もっとも恐ろしい水蒸気爆発が起こる。地球は噴出する水蒸気によって完全に雲に覆われる。あらゆる、環境システムが激変する。そこの住む恐竜たちは、もはや生きてはいけない。
直径10キロメートルもあるような隕石の衝突に我々は直面するのか。著者はその可能性はゼロではないが、きわめて低いとう。それでも地球という惑星誕生の当初には何億回もあった。そもそも、地球の素材は隕石だったのだから。数多くの隕石が宇宙空間で一緒になり、太陽の引力と釣り合ったとき、地球が誕生した。そのころは隕石が土砂降りだった。
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