「茂木健一郎の「超一流の仕事脳」」

「自己責任論」の責任

〜 ホームレス支援・奥田知志 〜

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2009年3月10日(火)

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 今回お話を伺った奥田知志さんは、北九州を中心にホームレスの自立支援活動に長年携わっていらっしゃる。奥田さんは「ホームレス」と「ハウスレス」は違うと言う。ハウスレスというのは単に住むところがないことを意味するが、ホームレスとは単に物質的なものや機能的なものの欠落ではなく、人が生きていくうえでかけがえの無い関係性を失ってしまった状態のことだという。

 奥田さんは、その支援活動において「ホーム」を取り戻すことを目指している。奥田さんはひとりの自立支援のために数人でチームを作って取り組んでいる。

 脳科学的に言うと、ホームとは「安全基地」の問題でもある。「ホーム」がない人は、物質的には守られていて社会生活を送っていたとしても、チャレンジができない。そういう意味では、実質的にホームレスという人は、総数として人口のかなりの比率を占めているのではないか。

 ホームレス支援というのは、社会のお互いが助けあうことだ。だから社内や家庭においても、それぞれが「チーム」を作って、お互いに助け合えば「ホーム」ができる。案外、それが社会全体の生産性向上ということにもつながるのではないか。

 現在の日本人にチャレンジ精神が欠けているという背後には、互助の精神がないからかもしれない。自己責任という考え方は、チャレンジ精神を萎えさせる。

 奥田さんは、ホームレス支援の現場から、現在の日本にはびこる「自己責任論」について問いかけを発している。支援活動に対してささやかれる「あの人たちにも自己責任がある」という言葉に対して、言う側の責任回避の言葉にすぎないという。これは「人の人との出会いを軽んじるものだ」と言う。

 外国の海岸などに立っている「at your own risk(自らの責任において)」の看板などとは、意味が違うと思う。あれは自然に対しての話で、社会においては基本的に自己責任というものはない。

 「自己責任論」の責任は思い。

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絆が、人を生かすから
NHKの番組サイトへ
NHK総合テレビ
3月10日(火)
午後10:00〜10:45
再放送
 総合 毎翌週火曜 午前1:00〜1:44
     (月曜深夜)
 BS2 毎翌週水曜 午後5:15〜5:59
 「派遣切り」などの雇用問題が深刻化するなか、激増が懸念されるホームレス。一度転落してしまうと社会への復帰は極めて難しいといわれる。その救済を長年手がけ、支援の第一人者として注目を集める男が北九州にいる。奥田知志(45歳)。牧師でありながら、ホームレスの人々が路上生活を脱し、自らの足で自立するのを支援するNPO法人の代表を務める。現在、北九州を中心に、5カ所の自立支援施設を運営する。この20年で600人以上のホームレスを自立へと導き、自立継続率も9割以上という驚異的な実績を持つ。

 奥田たちが力を入れるのは、週1回の炊き出しと、町中の巡回。そこで新たなホームレスの人に「出会う」ためだ。路上生活の中で再起への意欲を失い、絶望の中にいる人も少なくない。奥田は彼らに何度も何度もこう説き続ける――「けっして、あきらめるな」。

 当事者が施設に入ると、自立に向けてのプログラムがスタートする。就職先の紹介、資格取得のサポート、そして自立後の生活プランに関する相談など、その支援は、多岐にわたる。

 奥田たちが支援を通じて目指すのは、ホームレス状態の中で失った絆の回復だ。彼らは、家族、友人などの人間関係を失っているため、そのまま就職しても、すぐにまた逆戻りしてしまうことが多い。そこで奥田は、彼らの人生と徹底的に向き合い「絆」の回復を目指す。

 単なる「自立」支援を超えて、「人生」と向き合い続ける奥田の現場に迫る。


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著者プロフィール

茂木 健一郎(もぎ・けんいちろう)

茂木 健一郎

1962年、東京都生まれ。東京大学大学院卒業。「クオリア(感覚質)」を手がかりに、脳と心の謎に挑む新進気鋭の脳科学者。現在、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。



このコラムについて

茂木健一郎の「超一流の仕事脳」

毎回、1つの分野で超一流の仕事をしている人物を追うNHKのテレビ番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」。キャスターを務める脳科学者の茂木健一郎氏が、番組を通じてその人物から受けた刺激をさらに深く考察して語るコラム。

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