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小沢一郎先輩、ごっちゃんです!

「政治とカネ」(「不問に付す」技術の洗練を競い合うゲーム)

2009年3月9日(月)

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イラスト

 1970年代のはじめ、1972年~75年にかけて、私は、東京の巣鴨にある都立小石川高校という学校に通っていた。

 いわゆる昔の名門校で、卒業生には錚々たる名前が並んでいる。
 小沢一郎氏もその一人だ。
 ちなみに言えば、鳩山由紀夫氏も。

 小沢さんは、柔道部の出身だった。
 なぜ知っているのかというと、在学当時、柔道部の連中が自慢していたのをおぼえているからだ。

「OBに小沢一郎っていう議員がいるんだ」

 と。

¥   ¥   ¥

 当時、小沢議員は、1969年の総選挙で初当選を果たしたばかりの若手議員だった。30歳になるかならないかぐらい。ピッカピカのホープである。

 柔道部の連中は、ある時、図々しくも議員宿舎まで寄付を募りに行った。

 で、まんまとゲットしてきた。
 おどろくべきことだ。

 金額は、10万円だったはず。あるいは15万円だったかもしれない。いずれにしても高校生にとっては大金だ。

 その10万円が、どこから小沢さんのところへやってきたカネで、どういう帳簿上の処理を経た上で柔道部の連中の懐に入ったのか、私は知らない。

 柔道部の活動費の中からどこに消えたのかについても、しかとは把握していない。
 が、ごく一部については知っている。

 小沢資金のうちの1000円ほどは、私の胃袋に消えた。
 さよう。われわれは、

「ずるいぞおまえらばっかり」

 といって、柔道部の連中にタカったのである。
 うむ。公私混同。あるいは、より厳しい言い方をするなら、公金横領である。
 法的には時効だが、罪は消えない。恥ずかしいマネをしたと思っている。勘弁してほしい。
 
 その、小沢金脈の末端につながっていた過去を持つ男の一人として、この度の小沢さんの資金処理についてちょっとだけ感想を述べたい。

 小沢さんは、金銭に鷹揚な人だった。

 だからこそ、遠い経歴の片隅から、蜘蛛の糸みたいに細いコネクションをたぐってやってきた巣鴨の高校生たちに、過分な寄付を分かち与えてくれたのだと思う。そういうふうに、義理を大切にする男であるからこそ、彼は「持ちつ持たれつ」の互酬原則で出来上がった組織である旧田中派の中で、出世の階段をのぼり詰めた、と、長い間、私はそう思ってこのヒトを見てきた。

 結局、小沢さんみたいな政治家は、祝儀袋や香典袋と一緒で、ある種の必要悪なのだ、と。

 本当なら、「高校の後輩でーす」みたいなつながりで、代議士に寄付を募る筋合いなんかありゃしないのである。

 そういうふうに、身近に議員が出ると、すぐに直接的な便宜を期待するみたいな連中が、ガみたいにブンブン集まってくるから、議員にしたって誰かにタカらざるを得なくなる。

 いや、タカらざるを得ない、という言い方は違う。
 議員活動の目的が、タカることそのものではないにしても、活動の一部であれ、政治が誰かにタカることで成り立っているのだとしたら、それは恥辱だ。タカりみたいな支持者や、おねだりしかしない後援会が寄生虫みたいにぶらさがっていたのだとしても、それはそれとして、自らの資金については、あくまでも清潔さを保たねばならない。原則を述べればだが。

 いずれにしても、政治が、相互にタカり合い、セビり合い、ネダり合うことで回転している人間関係のスパイラルを含んでいることは、これは否定のしようがない。

 というよりも、オラがクニの先生である陣笠のみなさんは、一人残らず利権誘導のためのパペットなのであり、だとすれば操り人形に糸が付いているのと同じ理屈で、代議士に資金パイプがつながっていることは、理の当然というのか、存在の必然なのだ。

 いや、私は小沢さんを擁護しているのではない。

「ほかの政治家だって似たようなもんだろ」式の擁護は、実は擁護にならない。
 ミソギは、似たようなもののうちの、最も典型的な一人を生け贄にすることで達成される。
 全員を生け贄にできない以上、最も悪質な一人に罪をかぶってもらうのが、この場合のフェアということになる。
 気の毒ではあるが。
 
 さて、私自身にしても、「柔道部ばっかり潤ってやがってずるいぞ」みたいな、そんなガキみたいな理屈でM島にたかって良いはずはなかった。さよう。よくわかっている。

コメント25件コメント/レビュー

 ◆毎度流石!  ◆べらんめい調ネオ文語体って感じがいつも小気味いいです。 ◆しかし今回はまたノリノリでしたね~。 ◆ですが、オチは、冒頭自分に戻らなくても良かったかも。(2009/03/11)

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「小沢一郎先輩、ごっちゃんです!」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

 ◆毎度流石!  ◆べらんめい調ネオ文語体って感じがいつも小気味いいです。 ◆しかし今回はまたノリノリでしたね~。 ◆ですが、オチは、冒頭自分に戻らなくても良かったかも。(2009/03/11)

大変おもしろかったです。「わが国における最も原初的な「徒党」は、すべての成員が同じアナのムジナに化けることによって完成する、言わば「同罪集団」なのだ。紳士同盟の逆。野卑連盟。俗悪共同体。」これは、凄い日本人組織論かも。記憶にとどめておきます。ただこの徒党では世界を相手には戦えないですね。 困ったものです。(2009/03/11)

私の感じる社会の嫌な部分そのものですね。加齢臭が漂ってくるようです。でもこの記事は読んだ方が良い。せめて将来はこうならないように。(2009/03/11)

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