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究極の承認をめざして~『認められる力』太田 肇著、(評:荻野 進介)

朝日新書、700円(税別)

2009年3月16日(月)

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評者の読了時間1時間40分

認められる力 会社で成功する理論と実践

認められる力──会社で成功する理論と実践』 太田 肇著、朝日新書、700円(税別)

 同業のライター同士で集まると、仕事の発注先である編集者に話柄が及ぶことがある。企画を通してくれるのがよい編集者、アポ取りから字数調整まで全部丸投げするのが悪い編集者などと、ひとしきり盛り上がったところで、あるライターがぼそりつぶやいた。

「原稿を送ったら、すぐお礼のメールが来る人がいいな」

 孤独な作業を日夜続けるライターだから特別、ではないだろう。誰もが多かれ少なかれ、人に認められたい。よくやった、お前はすごいなあ、と賞賛されたいという気持ちをもっている。それこそが、この世を動かしているエンジンではないか。

 この「承認欲求」が本書のメインテーマである。お金よりも権力よりも「他人に認められたい」という気持ちに満ち溢れているのが我々なのだ、という人間観のもと、その理由と、どうしたら人に認められ、成功するのかという処世術を説く内容だ。

 著者は既に、そのものズバリな『承認欲求』(東洋経済新報社)をはじめ、同旨の書籍をものしているが、何れも理論寄りのマネジメント本という色合いが濃い。今回は「認められたい」側に立って、自らの経験も交えながら、だいぶ、裃を脱いだ議論を繰り広げている。

 人を認めるにも幾通りの方法がある。著者は、優れた能力や業績、あるいは個性を尊重し加点評価する〈表の承認〉、秩序や序列を守り、分をわきまえているか、という尺度で減点評価する〈裏の承認〉の二種類に分けている。こう書けばもうおわかりだろう。日本社会では表より裏の承認が重視される。それを象徴するのが「出る杭は打たれる」「高木は風に折らる」という諺だ。

 対照的なのがアメリカ。両者の違いが顕著に表れている例として日本青少年研究所が日米の高校生を対象に行った調査が引用される。「人生における最も大切な目標は?」という質問に対して「高い社会的地位や名誉を得ること」と答えた日本の高校生は1.8%、それに対して、アメリカの高校生は40.6%と実に20倍の開きだ。高校生ではなく大人向けにやっても、やはりアメリカ人のほうが上ではないか。

人事部のモットーは「無難であること」

 なぜ日本では「出る杭は打たれる」のか。「出る杭を打つ」ことで利益を得る人が多いゼロサム社会だからだ。学校、会社、地域社会、どこを取っても流動性に乏しく閉鎖的なことがその大きな要因となっている、と著者は分析する。

〈お腹を空かせた兄弟姉妹が一つしかないケーキを囲んでにらみ合っているようなものです。だれかがケーキに手を伸ばすと、必ずだれかにその手をたたかれます〉

 手をはたく人とは、企業でいえばミドルと人事部だという。現在、それなりのポストにつき、若いときの薄給を中年期以降に取り戻す日本型雇用の恩恵を享受しているミドルが抵抗勢力になるのは想像がつく。ではなぜ著者は人事を「戦犯」扱いするのか。

 突出した人材を見出し、育てることより、組織全体の底上げや社内の和を重視してきたのがこれまでの日本企業。その役割を担うのが人事であり、当然、社内にスターが生まれことを好まない。

 一方で人事部員も上司によって評価される。優れた人材の採用や抜擢をどれだけ行ったかという加点評価ではなく、問題を起こす人を雇ったりしなかったどうかが問われる減点評価である。

 しかも欧米企業と異なり、日本企業では人事部員の多くが腰掛けである。人事で失敗すると、その後のキャリアに傷がつく。さらに、傑出した人材を発掘しても、能力が開花する頃には、発掘者たる人事部員は他部署に異動している場合が多く、その功は評価されない。かくして、人事部員は「無難であること」を最優先する結果に陥る、という。

 著者がここでいう人事部員とは大企業の人事と考えていいだろう。しかし私見では、採用数が多いため、個性の強い、異能人材が在籍する率は中小企業より大企業のほうが多い気がする。

 企業で出世するには、仕事の能力とリーダーとしての能力の二つが必須。「個性豊かだが上に行けない」人材には後者が欠けているという意味で、本人の問題も大きいのではないか。「人事部が出る杭を打つ」という見方は面白いが、やや図式的に過ぎるように思える。

 では、日本の組織や社会に足りない〈表の承認〉をいかに増やせばいいのか。実は〈表の承認〉にも二種類ある。日常の職場で、仕事に対する態度、個性が認められる〈日常の承認〉と、出世や名誉をきっかけに、長期のスパンで得られる〈キャリアの承認〉だ。

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