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さようなら新自由主義、こんにちはファシズム~『テロリズムの罠 左巻・右巻』
佐藤 優著(評:尹 雄大)

角川oneテーマ21、各724円(税別)

2009年3月17日(火)

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テロリズムの罠 左巻──新自由主義の行方

テロリズムの罠 左巻──新自由主義の行方』 佐藤 優著、角川oneテーマ21、724円(税別)

テロリズムの罠 右巻──忍び寄るファシズムの魅力

テロリズムの罠 右巻──忍び寄るファシズムの魅力』 佐藤 優著、角川oneテーマ21、724円(税別)

 「アサヒ芸能」から「週刊金曜日」まで、硬軟・左右を問わず著者の名を目にしない日はない。現況もっとも活字メディアに引きがある人物かもしれない。「外務省のラスプーチン」といわれ、鈴木宗男議員とともに激しくバッシングされていた日々が嘘のようだ。

 “国策捜査”や“インテリジェンス(特殊情報活動)”など検察庁、外務省界隈の業界用語が知られるようになったのも、著者によるところが大きいだろう。

 本書は、著者が責任編集を務めるウェブマガジンに連載されていた国家論を二分割してまとめたものだ。左/右巻だからといって、左/右派的な内容になっているのではない。

 左巻は小泉内閣の新自由主義路線がもたらした変革など日本の事例を中心に扱い、右巻はリーマン・ブラザーズの破綻に象徴される、新自由主義が国家と社会に与えた被害、およびロシア・グルジア戦争に見られるような、ポスト新自由主義路線の国権強化について論考している。グローバリゼーションが退潮した後の国家像を、例示を異にしながら、左右で補完し合う関係になっている。

 なぜ国家論という枠組みでポスト新自由主義を語るのか。まずその手がかりとして、3月11日付の産経新聞のある記事に触れたい。

 民主党は、小沢一郎代表に対する違法献金疑惑を「国策捜査である」と批判したが、著者はその姿勢に対し、以下のようにコメントしている。

「事前に世論を盛り上げて象徴的事件を作り出し、時代のけじめとするのが国策捜査だが、今回はそうなっていない。(略)ただ、現場の検察官が青年将校化しているように見える。世直しは、あくまで政治がやること」

 著者は、鈴木議員と自身が起訴された事件は、国策として捜査が進められなければならない理由があったと左巻で述べている。では、この場合の「時代のけじめ」とはなんであったか。それは自民党の、戦後から続く地方に利益を誘導する政治手法からの脱却、および新自由主義路線への転換を意味した。

国家は暴力に支えられている

 「利益誘導」という名のばらまきは腐敗につながるが、著者曰く〈この腐敗は民主主義のコストとして認められていた〉(左巻)。換言すれば、貧困者を生まないための措置であり、富の再分配にもなっていた。

 少なくとも冷戦下は、ばらまきは日本の社会主義化を防ぐ必要経費として計上されてきた。だが社会主義陣営は崩壊、そして〈先進資本主義国は、小さな政府、規制緩和により、強い経済主体を一層強くすることにより、結果として国力を増進しようとした。すべてを市場メカニズムに委ねる新自由主義が世界的流行になった〉(左巻)。

 鈴木議員と著者は「車の数より熊の数の方が多いところに高速道路を造ろう」とした上、「北方領土問題で利権あさり」をしたという疑惑をかけられ、小泉純一郎内閣が「弱肉強食の新自由主義を日本に導入する」ためのスケープゴートとなったわけだ。

 ただし、国策捜査は「善いとか悪いとかいう性質のものではなく、時代の転換期に必ず起こるものである」という認識を著者は持っている。

 比べて、著者が新聞記事にコメントした検察官の「青年将校化」は、国策捜査のような国家の意志の体現とは異なる。本書の表現に置き換えれば、〈政治がだらしないから、検察が国民を代表する機能を果たすべきであると考えているのであろう〉(左巻)。

 だが、本来、社会改革は国民に選出された政治家の行うべきことで、これを官僚に委ねては、「国家の暴力を助長することになりかねない」。国家の本来性を定義しておかないと、いたずらに国家機能を強化することになってしまう。だから国家論が必要となる。

〈国家とは、抽象的な存在ではない。官僚によって運営される実体をもった存在である。官僚は社会から、税という形で収奪を行うことによって生きている。この収奪が可能になるのは、国家が究極的に暴力によって支えられているからだ〉(左巻)

 国家は暴力を占有する。したがって、国家と社会は対立関係にしかなりえない。にもかかわらず、互いの領分を守るという緊張関係とその自覚を、官僚も国民も欠いている。それは新自由主義の奨励したマネーゲームのもたらした価値の一元化のせいだと著者はいう。

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