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ああ、鉄路は音に満ちている~『鉄道の音』
向谷 実著(評者:朝山 実)

アスキー新書、790円(税別)

2009年3月23日(月)

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鉄道の音

鉄道の音』 向谷 実著、アスキー新書、790円(税別)

 これまで新書には「教養」のイメージがあったが、このところの数の増殖とともに「百花繚乱」の様相を呈してきた。

 といった記事が朝日新聞に載っていた(「新書ブーム市場沸騰」3/12朝刊の文化欄、竹端直樹記者)。

 新聞に記事が出るころには、どんなブームもたいてい下り坂にさしかかっているとよくいわれるが、新書の棚をながめていて連想するのが、大阪の通天閣界隈の商店街だ。

 下町情緒を求めてか近年観光客が増加し、それをあてこみ名物の「串カツ」を看板にする店も急増。昭和レトロな将棋場や時間が停止したかのような喫茶店、ぎょっとするくらい格安の服屋が軒を連ねるなかで、昔ながらふうを装った、真新しい店がオセロのように割って入り、ホンモノとマネモノの混在した一種独特な風情をかもしている。

 さて、新聞記事によれば、2000年に新書を出していた出版社は20社余り、発行点数も年間850点程度だったのが、08年にはいずれも2倍ほどに膨らんだ。背景には、出版不況があると続けている。

 雑誌の休刊が相次ぎ、あぶれた編集者がところてん式に新書編集部に配属された結果が、いまのなんでもあり状態。たしかに、料理のコツからスポーツの奥義、落語論に不況ルポにタレントのエッセイと、従来の「教養」中心の枠組みをこえた多様さは、テレビ番組をザッピングする感覚に近い。

 本書にしても、おそらくこの百花繚乱がなければ新書としては出版されなかっただろう。なにしろ、間口が狭い。電車の車掌さんの独特なアナウンスはどのようにして習うのかを取材してみたり、電車の発着時などに流れる「駅メロ」について記した本だ。

 著者は、フュージョンバンド「カシオペア」のキーボード奏者で、子供のころには、運転席後ろの「かぶりつき」に立って、運転士の動きに見ほれていたという。

マニアに「なにが楽しいの?」は禁句ですから

 一口に鉄道マニアといっても、入れあげる対象はさまざま。車両の撮影に夢中になったり、モノを収集する人たちばかりではない。「右ヨシ、左ヨシ、前方ヨシ」という保線作業員の安全確認のための指差喚呼や、車掌さんの「停車位置ヨーシ」の声に心ときめく人たちもいて、著者はそんな「音」派に属する。

〈私がいちばん好きなのは運転士の喚呼です。とにかく種類が豊富。かぶりつきで運転士の喚呼を聞くことは、鉄道の大きな楽しみのひとつです〉

 タモリの番組で、原田芳雄をはじめとする「鉄男」の面々が、試運転中の地下鉄の先頭車両に乗り込んで、床に耳を押し付け、響きを耳にして、喜びの声をあげていたのを思い出した。フツーの人には「なんでそんなものに興奮するんだ……」なことが、すべて宝島と化するのがマニアのマニアたる所以。好きな理由を問うのがヤボというものだ。

 本書の特色は、半分のボリュームを占める資料頁。「アナウンス・喚呼集」などは、きわめてマニア度の高いものだ。

 たとえば列車の運行チャートにそった「京阪電車の休日特急」では、

「次は三条です。地下鉄東西線と京津線・琵琶湖方面はお乗換えです。三条の次は四条に止まります」
「進行」「戸ジメよし」「発車」

 など、ふだん耳にしても気にとめたりはしない車掌アナウンスや業務連絡のひとつひとつが採録されている。

 あきらかに一般には用をなさない資料である。しかし、なんじゃこりゃと思いつつ、ためしに、「チュウショジマ、中書島です。ウジセンをご利用のお客様は、3番乗り場から宇治行きに……」と声に出してみると、なんだかヘンなのだ。

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