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23. 「一歩間違えたらそうなっていたかもしれない立場の他人」にたいする顧慮はありますか?

黒井千次スペシャル(7)『時間』ファイナル

  • 千野 帽子

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2009年3月25日(水)

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時間

時間』黒井千次著、講談社文芸文庫、1,121円(税込)

 日直のボウシータです。前回まで3週間にわたって、黒井千次の『時間』(1969/講談社文芸文庫『時間』所収)を読んできた。ここからは、おさらいとまとめです。

 『時間』では、同じデモに参加した学生たちのうち、三浦は捕えられ、検挙・起訴されて、15年を被告として過ごしてきた。いっぽう〈彼〉は「日本株式会社」の忠実な社員として、高度経済成長にかかわってきた。

三浦の時間は、それ自体が彼等に対して攻撃的であった。三浦の時間は、常に、彼等にむかって、お前はお前の過去をどう処理するのか、お前はお前の現在をどう過去につなげ、どう未来に向けて伸ばしていくのか、と問いかけるのだ。彼は眼をつぶって今の時間を思った。

いわば〈彼〉と三浦との運命はほんとうに紙一重だったのだ。

 〈彼〉が、三浦の時間〈自体が彼等に対して攻撃的〉だと感じたのは、ひとつには作中にあるように、変化してしまった自分を醜いと思うからだ。なぜそう思うのかといえば、彼のなかで過去にたいする「やましさ」「負い目」があるからだろう。

 浅黄のレインコートの後姿を何度も見てしまうのは、その過去になにかだいじなものがあるとうすうす感じているからだし、それがほかでもない自分が着ていたものであることを思い出せないでいるのは、過去を直視するのが怖くて蓋をしていたからなのだ。「やましさ」「負い目」のゆえんである(なんて、ガラにもなくこんな俗流トラウマ小説みたいな書きかたをしているが、許してほしい)。

*   *   *

 「自己責任」という言葉が他を圧していたころ、私が感じていたのは、「一歩間違えたらそうなっていたかもしれない立場の他人」にたいする顧慮を、この言葉が人から(私からも)奪っていく、ということだった(誤解しないでほしい。私には「自己責任」という考えかたを全否定するつもりはない。どんな考えでも他を圧して流通すると息苦しくなる、という話だ)。

高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院

高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院』水月昭道 著、光文社新書、735円(税込)

 たとえば私は人文系大学院で学んだ。水月昭道『高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院』(光文社新書)をお読みになったかたはわかると思うが、なかなか就職が厳しい世界である。自分は実力で就職したんだと思いこみたくても、こっちよりはるかに優秀・有能な人が就職できているとは限らない現状を見れば、どう考えたって運でしかないということを日々思い知らされるばかりだ。

 アジア通貨危機の影響が長引いて、1999年以降の就職が「超氷河期」となったあたりのことを考えてみたい。ロストジェネレーションと呼ばれる団塊ジュニアに属する人で、苦労して正社員に就職できた人だって、自己責任とか言いながら、「結局、運だけでここまで来た」という観念を力ずくで押しこめているのではないだろうか。これもまた「やましさ」「負い目」のゆえんである。

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