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危機の時代だから考えたい『生きがいについて』
~苦悩といかに向き合うか

  • 澁川 祐子

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2009年3月25日(水)

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生きがいについて(神谷美恵子コレクション)

生きがいについて(神谷美恵子コレクション)』 神谷美恵子著、みすず書房、1600円(税抜き)

 恥ずかしながら、これまで私は神谷美恵子の本を読んだことがなかった。古本屋でこの本をみつけ、古めかしく素っ気ない装丁と「生きがいについて」というタイトルとの違和感に惹かれて手に取った。「自分探し」が話題になる以前から、人は「生きる意味」について悩んでいたのだなと思い、奥付を見ると1980年初版発行、1996年21刷とある。しかもこの本が書かれたのは1966年。ずいぶんなロングセラーである。私は幾ばくかの小銭を支払い、この本を買って帰った。

 家に帰ってから、いつものようにお風呂のなかでこの本を開き、すぐさま「これはただものじゃない」と思った。人間の精神とまっすぐに向き合おうと姿勢。そこには一切の虚勢もごまかしもない。声高に何か責めることもなく、いたずらに高揚することもなく、淡々と綴られた文章からは、不思議と著者の体温が感じられる。もうもうと立ち上る湯気のなかで、私は、この本から発せられる静謐な一語一句に吸い寄せられていった。

 神谷美恵子(1914-1979)は、ハンセン病患者の治療に尽くした人物として知られる。岡山市で生まれ、津田塾大学、コロンビア大学で学んだ後、東京女子医学専門学校へ編入。1944年、東京帝大病院精神科医局に入局。46年、生物学者の神谷宣郎と結婚、二男に恵まれる。神戸女学院大学などで教壇に立つ傍ら、岡山県長島愛生園でハンセン病患者の治療にあたる。その仕事は精神医療の分野だけにとどまらず、作家や翻訳家としての功績も高く評価されている。

 57年、著者は「不治の病」とされ社会から隔離されていたハンセン病患者の施設を調査のために訪れた。そこで、たとい同じ病に苦しむ人でも、ある人は生きる意味を見失って自暴自棄になり、またある人は生きる喜びを見い出していきいきと暮らしている姿を目にした。その違いは何か。人が生の喜びを感じるとは、どういうことなのか。そうした疑問に対し、愛生園でふれあった患者の声、古今東西の書物や自らの思索を通じて、さまざまな角度から考察したのが本書である。

人が「生きがい<」について悩むとき

 最初に、生きがいを感じている状態を「生きがい感」、生きがいの源泉となるものを「生きがい」とはっきり区別したうえで、生きがいを感じる心や生きがいを求める心の状態、生きがいの対象となるものについて論じる。さらには生きがいを失った者の心の世界、生きがいの喪失者が新たな生きがいを発見する過程を描き、生きがいを獲得するプロセスとそのときに起こる内的変革について体系立てて語られていく。

 著者は冒頭で「生きがい」についてこう綴る。少々長いが引用しよう。

〈青年時代に生きがいについて悩むひとはかなりいても、大人になると避けておくのがふつうになる。男のひとは一応まともな職業につき、家族を養うことができれば、自分の生活は生きるに値するものと心のどこかで簡単にかたづけてしまうし、女のひとはなお一層そぼくに、一応平和な家庭を営み、家族そろって健康で仲よく暮せれば、その中心である自分の存在意識を十二分に感じてやすらっている。男のひとにしても女のひとにしても、単に社会的な役割を果たすだけで人間の存在意識のすべてがみたされるかどうか、一個の独立人格としての存在理由は何か、というような問いは意識にのぼらないのが一般であろう。なぜならば、うっかり本気でこういう問題に立ちむかうならば、今まで安全にみえていた大地に突然割れ目ができ、そこから深淵をのぞきこむような不安や不気味さにおそわれるおそれがあるからである〉

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