「三田村蕗子の「出張スィーツ」」

三田村蕗子の「出張スィーツ」

2009年3月30日(月)

「成り上がり」スイーツ、ラスクがデパ地下を救うワケ

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売れ残りのフランスパンの再利用? いえいえ、ラスクはいまやデパ地下の立派な主役の一人。写真はガトーフェスタ・ハラダのラスク「グーテ・ド・ロワ(王様のおやつ)」。ラスク界の貴族階級だ。
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 タイトルとは微妙にずれますが、外回りだってプチ出張ということで、今回は「おみやげ」の調達場所、デパ地下に行ってみましょう。ちなみにお読みの男性の方、ご自身で行かれたことはありますか・・・意外と多いですね。

 では、そのデパ地下でいま、「ラスク」人気がエラいことになっているのはご存じだろうか。。お目当てのラスクを買い求める客で、人気の店はちょっとしたパニック状態。わずか5坪足らずのスペースで1日に200万〜300万円も売り上げる店も登場している。

 A ラスクって、売れ残ったパンを再利用したヤツでしょ。あれがなんでまた…。
 B そうか、「ALWAYS 三丁目の夕日」的な懐かしさが受けているわけね。
 C まーた、百貨店の仕掛けに踊らされているんじゃないの。

 これを聞いた人のおおかたの感想はA〜Cのいずれかに該当するのではなかろうか。それぞれ一部は正しいが、でも、どれも間違っている。

いまや「売れ残りのパン」なんて使わない

 その1 いま人気のラスクは、売れ残りを再利用した駄菓子的なものではない。「ラスクに加工することを前提に焼き上げた」フランスパンを使用している。

 その2 ノスタルジーはラスク人気のキーワードではあるが、売れているラスクは単なるノスタル菓子(筆者命名)ではない。

 その3 現在のラスク人気は、デパ地下の仕掛けというより、過熱するデパ地下戦争が招いた産物といった方が正しい。

京王百貨店新宿店のガトーフェスタ・ハラダの売り場への行列。不思議そうにのぞきこむ人も多数。開店直後から売り場はいつも大混雑だ
せっかく並んだんだからと、大半のお客さんが大量に買い込んでいく。
行列はぐるりと回って、売り場後ろの通路にまで達している。その数ざっと30人ほど。

 以下、デパ地下の歴史を振り返りつつ、ラスクがなぜここまで成り上がったのかを検証してみよう。検証後、きっと男性諸氏のラスク観は大きく変わり、「あ、それなら買ってみようかな」と転じるはずだ、多分。

 「デパ地下」という言葉が市民権を得たのはいつか。

 特定するのは難しいが、一つの大きなきっかけとなったのが、渋谷の東急百貨店東横店が食品フロアを大改装し、「東急フードショー」として世に送り出した2000年4月だ。「食」を「流行」「ファッション」として捕らえ直した「東急フードショー」は、「食」のテーマパークとも称された。銘菓・名品、伝統の味を揃えた「格式」が売り物の従来の食品フロアとは一線を画した売り場は新鮮かつ斬新。大成功をおさめる。

 「東急フードショー」の成功に続けとばかりと、他の百貨店も次々と同様のファッション路線に乗り出した。やがて、この動きは駅ビルや駅構内(通称エキナカ)にも波及し、デパ地下型食品売り場は百貨店の専売特許ではなくなっていく。

 そこで、差別化を図るために百貨店が選んだ道が高級化路線だ。

食品売り場のファッション路線、行くだけいった先に・・・

 各社各店しのぎを削って繰り広げられたデパ地下高級化戦争の行き着いた先が、2007年にリニューアルした伊勢丹新宿店の食品フロアだった。世界的に著名なパティシェや伊勢丹限定のブランドを一堂に集めたデパ地下の華麗なこと、美しいこと、そして、お高いこと。ラグジュアリー化するデパ地下の最高峰といってもいい。

 1粒300円のチョコレートや、1個600円〜700円もする絢爛豪華なケーキやデザートが並ぶ光景はまるでジュエリーショップ。選りすぐられた味と売り場の演出は「さすがファッションの伊勢丹」と賞され、グルメやスイーツファンには好評を持って迎えられた。が、洗練と高級化に、置き去りにされた思いを抱く人も現れる。

 普通に買えるモノがない−−。

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著者プロフィール

三田村 蕗子(みたむら ふきこ)

1960(昭和35)年福岡市生まれ。津田塾大学学芸学部卒業。マーケティング会社、出版社等を経てフリージャーナリストに。流通業、化粧品業界を中心に、ビジネス全般を幅広く取材。ビジネス誌に多数寄稿。著書に『論より商い―カッコつけたってモノは売れない 』(プレジデント社)などがある


このコラムについて

三田村蕗子の「出張スィーツ」

緊張感漲るビジネスの現場に、ふと句読点を打つ「おやつ」。気分転換、モチベーションアップ、チームマネジメントのきっかけ…そんな効果も期待しつつ、仕事の現場で味わうひとときの幸せを多面的に考察する「ビジネス人のお八つ学」。その重要なテーマとして「出張」につきものの、職場へのお土産としてのおやつについて、深く楽しく考えてみたい。

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