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ドレスが語る赤裸々な「時代」~『ファッションから名画を読む』
深井 晃子著(評者:稲泉 連)

PHP新書、950円(税別)

2009年4月2日(木)

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評者の読了時間4時間00分

ファッションから名画を読む』 深井 晃子著、PHP新書、950円(税別)

 先日、国立西洋美術館で開催中の「ルーヴル美術館展」を観に行ったときのことだ。

 長蛇の列に並び、ようやく一つ目の展示室にたどり着くと、左手に「マリー・ド・メディシスの肖像」(フランス・プルビュス(子)画)という肖像画が現れた。

 彼女は16~17世紀にかけて、イタリアのメディチ家からアンリ四世のもとに嫁ぎ、フランス王妃となった女性だ。その巨大な絵の前に立った私は、凄まじいまでに豪華なファッションに目がくぎ付けになった。

 35カラットものダイヤモンド(「プチ・サンシー」と呼ばれる彼女の個人所有物)を頂く王冠もさることながら、複雑に編み込まれたドレスの迫力がすごい。フランス王室を表象する百合の紋章、孔雀の羽根のような襟、そして胸元から腹部にかけては、大粒の真珠がこれでもかというほど装飾されている。

 その中心で威厳たっぷりに微笑するメディチ家出身の王妃は、絵の前で圧倒されるしかない私のような現代人に対しても、自身の権力と富の強大さを誇っているように見えた。

 では、彼女の「権力と富」を端的に表現するドレスとは何か、あるいは真珠とはどこから来たのか──?

 本書『ファッションから名画を読む』は、そうした問いをもって絵画を見直す時、今はただ微笑する彼女のような画中の人物が、「時代」を饒舌に語り始めることを教えてくれる一冊だ。

ファッションを描くことは「文化を見せつけること」

 ダ・ヴィンチ「モナ・リザ」から、19世紀末のルノワールやモネまで。服飾研究の権威である著者は、服飾史・美術史という二つの歴史が〈交差する点〉から数々の名画を読み解くことを試みる。

〈特定の時代にだけ、きわめて一時的に現れる流行の服飾=ファッションは、その特徴ゆえに、着ている人を物語る重要な「言葉」となる〉

 好み、地位、はたまた当時の産業や貿易の概況──〈それを着る人の思いといったごく個人的な側面から、それを取り囲むより大きな側面の情報まで〉が社会的、経済的、政治的にも読み解けるとなれば、浮かび上がるのは確かに「歴史」そのもの、というわけだ。

 例えば、ブロンズィーノ「エレオノーラ・ダ・トレドと息子ジョヴァンニ」(1545年)という作品がある。ルネサンスのフィレンツェを生きたコジモ一世の妻・エレオノーラのこの服装を、著者は次のように観察している。

〈対比的な黒と金銀の色彩。大ぶりの大胆な柄。エレオノーラのドレスの唐草文様は、ルネサンスを代表する柄である。複雑なカット・ビロード技術で織り出された〉

 16世紀のイタリアにおいて、繊維産業は「先端産業」と同義だった。

 よって織物技術は門外不出。フィレンツェやレースの生産地であるヴェネチアの職人は街を離れることが許されなかったし、フランスからは産業スパイが放たれていたほどだという。

 ならば、画家には富の象徴たるエレオノーラのドレスの複雑さ、美しさを渾身の技量で描くことが求められる。〈ファッションを描くことこそが、「フィレンツェという都市の文化を見せつけること」〉に他ならなかったからだ。

 あるいは18世紀末、革命前夜のフランスでは、マリー・アントワネットが白い簡素なドレスを着ている(ルブラン「シュミーズ・ドレスを着たマリー・アントワネット」1783年)。

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