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エリートを目指し『14歳からの社会学』でいこう!?
~「みんな」が見えない社会の生き方

  • 後藤 次美

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2009年4月1日(水)

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14歳からの社会学――これからの社会を生きる君に』 宮台真司著、世界文化社、1300円(税抜き)

 冒頭に、2枚の写真が掲載されている。どちらも東京・東中野駅付近を写したもので、一枚は1959年、もう一枚は2000年の写真。撮影の時間帯はいずれも夕方6時くらい。

 59年の写真では、仕事から帰ってきた父親が子どもと一緒にフラループで遊んでいる。2000年の写真には、〈外で遊ぶ子どもたちの姿も映っていなければ、それを見守る大人たちも映っていない〉

 この2枚の写真を比較して、著者は、現代の社会を、隣人の顔が見えない社会だと言う。その結果、〈いまの社会では「みんな」という言葉が、誰から誰までを指すのかイメージしにくくなっている〉。中高生を読者対象として、現代社会の特徴を伝えるには、ナイスな入りだ。

 人気社会学者の宮台真司が著した『14歳からの社会学』は、ベーシックに社会学史をたどるような本ではない。ざっくりといえば、現代社会の特性を押さえたうえで、“これからの社会を、どう運営していけばいいのか”“そういう社会のもとで、個人はどのように生きるべきか”という二つの問題意識が本書を貫いている。吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』の現代版ともいえるかもしれない。

 とはいえ、攻撃的な言論で注目を集めてきた宮台真司である。中高生が相手だろうと、挑発的なスタイルは健在だ。たとえば、個人化が不可逆に進んでいる現代の人間関係について、こんなふうに語る。

〈「みんな仲よし」が通用しなくなったいまの社会。ぼくたちは、つき合いたくない人間ともニコニコしなくちゃいけないのか。そんなことないはずだよ。自分に必要な人間とだけ仲よくすればいい。自分に必要でない人間とは、「適当につき合えば」いいだけの話だよ〉

 学校の先生にはなかなか言えない、ぶっちゃけトークに溜飲を下げる宮台ファンも多いだろう。

 しかし、現代社会で、「みんな仲良し」を可能にする「共通感覚」や「共通前提」がくずれていることは、本書を待つまでもなく、これまでさんざん指摘されてきている。「適当につき合えば」も、社会人になってみれば、当たり前のことである。

みんなが幸せになれるルールの作り方

 評者からすれば、“宮台真司ならでは”の主張は、そういう「共通前提」なき社会をどう切り回すか、という点にこそ表われている。

 現実の世の中で進んでいるのは、ルールの厳格化だ。すなわち、暗黙の了解が成立しない以上、〈人々はすき間をルールで補おうとする〉

 「なあなあ」で世の中が回らないなら、ルールでなんとかするっきゃない。そここで“どういうルールを誰が決めればいいのか”という問題が浮上する。

 著者の答えは、“みんなが幸せになるようなルールを、エリートが決める”。

〈民主制を否定するんじゃなく、うまく機能させるために、みんなで決めるんじゃなく、「エリート」が3つくらいに選択肢をあらかじめしぼって、大衆に聞く。さもないと失敗をくり返しているうちに死んでしまう〉

 一見、暴論のようだが、この主張には一定の説得力がある。社会が複雑になればなるだけ、個々人の利害は対立するし、社会全体の公益を見通すことは困難になる。民主主義の形骸化は、誰もが薄々感じていることだろう。

 社会と個人は相互に影響を与え合っている。個人の生き方にフォーカスすれば、「みんな」の顔がよくわからない現代は、他者からの「承認」を調達しづらい時代だ。これを放置したままでは、簡単に人を殺せてしまうような「脱社会的存在」が増えてしまう。

 社会の危機。そこに生きる個人の危機。その歯止めとして、ソーシャル・デザイナーを自称する著者は、「多くの人が幸せになれるルール」を編み出せるエリートの育成に期待をかけるわけだ。こうした考え方を「卓越主義的リベラリズム」と呼んで。

コメント1件コメント/レビュー

 14歳から考えるというよりも、こういうことをディベートの題材として取り上げるのは良いかと思います。その後、どう考えるかは個人の自由になるでしょう。 これだけ子供向けの著書を書いても、公立学校における教育現場と乖離した状態であれば、あまり効果はないのではないかと思います。宮台氏も子供の将来を憂うのであれば、教育改革を内部に入り込んでやってほしいものです。そうしなければ根本的には変わらないでしょうから。(2009/04/01)

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 14歳から考えるというよりも、こういうことをディベートの題材として取り上げるのは良いかと思います。その後、どう考えるかは個人の自由になるでしょう。 これだけ子供向けの著書を書いても、公立学校における教育現場と乖離した状態であれば、あまり効果はないのではないかと思います。宮台氏も子供の将来を憂うのであれば、教育改革を内部に入り込んでやってほしいものです。そうしなければ根本的には変わらないでしょうから。(2009/04/01)

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