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青春知事が「青空」に吠える

2009年4月6日(月)

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 千葉県知事選で101万票を獲得し初当選した元衆院議員の森田健作氏(59)は一夜明けた30日朝、千葉市内で記者会見し、「千葉県は実力がある。もっと青空のように突き進もう」と笑顔を見せた(後略)※日本経済新聞3月30日朝刊

「青空のように突き進む」

 というのは、具体的にどういう状態なのだろう。青空のようなものが、いったいどこに向かって突き進むというのだ? 曇り空に向かって? でなければ、土砂降りか?

 いや、言いたいことはわかるのだ。

 森田新知事は「青雲の志」ないしは「青春の情熱」ぐらいなニュアンスで、自らの初々しさと、千葉県のチェンジをアピールしたかったのだと思う。大丈夫。細かいことは後でついてくる。とにかく思いっきりオレたちの力をぶつけようぜ、と、そういう剣道部のキャプテンの所信表明みたいな余韻が残れば当面は成功だと、半月にわたって街頭で叫び続けてきた元候補者の皮膚感覚として、健作青年はそう考えたのかもしれない。

 でも、森田さん。当選から一夜明ければ、あなたの発言はすなわち知事の発言です。
 記者会見は街頭演説ではありません。

 つまり、威勢の良さと若々しさを印象づけていれば良いという問題ではない。そういうことです。

 立ち会い演説会や、駅頭のマイクパフォーマンスでは、内容よりも声のトーンがものを言う。人と人が面と向かって接している場所では、懸命に発言し続ける人間の熱意が、いつしか聴く者の心をとらえることになっているからだ。フェイス・トゥー・フェイスの現場では、懸命な人間の懸命な声が、人々の心を一つにする。よくある話だ。

 でも、文字になって残る言葉は、空間に消えていく言葉とは違う。
 記録の中では、内容と論理が重視される。当たり前の話だが。
 それゆえ、「青空のように突き進む」みたいな曖昧な表現は、理解してもらえない。

 青空――ってことは、青臭さと空々しさぐらいか? つまり、自らの欠点を自覚した上での青空知事宣言とか?
 だとすると、わからないでもないが。

 もうひとついえば、これは、ホームレス経験のある人から聞いた話なのだが、彼らの間で、「青空」は、「ホームレス生活」を意味している。

「昔、青空やってたから」

 と、そのご老人は言った。

「もう青空には戻りたくないよ」

 とも。
 青空が、ホームレスなのだとすると、「青空のように突き進む」という知事の言葉には、ちょっと不穏なニュアンスがこもる。なんというのか、「無計画」ないしは「無一物」という感じの意味合いが、だ。

 実際、千葉県の財政状態は厳しい。
 借金が2兆3300億円、預金はゼロ。預金ゼロは全国の自治体で千葉県だけだといわれている。

 なのに、私が見ていた30日の「とくダネ!」(フジテレビ系)で、知事閣下は、財源について問われて

「バカヤロウ! 細かいこと言ってんじゃねえよ」

 と、吠えている。

「何をするかって? これから考えるんだよ」

 とも。

 当選翌日の興奮の中で、口を滑らせたといえばそれまでだ。
 でも、きびしい言い方をするなら、当選したその瞬間から、発言には責任が伴う。
 知事という立場に立った以上、慎重に構えないといけない。
 でないと、すぐに揚げ足を取られることになる。いま私がやっているみたいに。

 百歩譲ってフォローしてさしあげると、森田新知事が

「バカヤロウ」

 と言ったのは、一種のサービスで、マジな反応ではない。つまり、彼は、生放送のスタジオに向けて、かつての自分の持ちキャラであった「青春野郎」を演じてみせたのである。そう、茶目っ気。悪く取らないでね(はーと)。

 青春ドラマ「おれは男だ!」の中で、森田キャプテンが発散していた魅力は、「単純な猪突家」としてのそれだった。臆病な優等生の慎重論や、常識の側から森田君をたしなめようとする「吉川君」(←剣道部のマネージャーだった女の子)に対して、彼はいつもあのカン高い声で叫んでいたものだった。

「バカヤロー、やってみないとわからないじゃないか」

 と。
 もしかして、千葉県民は、森田新知事が、あの「森田主将」のキャラクターをそのまま演じることを期待しているのであろうか。
 だとすると、前途はちょっと危ういと思う。

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「青春知事が「青空」に吠える」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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中谷 巌 「不識塾」塾長、一橋大学名誉教授