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シー・シェパードがあそこまでやる理由~『エコ・テロリズム』
浜野 喬士著(評:栗原 裕一郎)

洋泉社新書y、760円(税別)

  • 栗原 裕一郎

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2009年4月7日(火)

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エコ・テロリズム──過激化する環境運動とアメリカの内なるテロ』 浜野 喬士著、洋泉社新書y、760円(税別)

 「エコ・テロリズム」──まだなじみの薄い言葉かもしれないが、捕鯨船にガンガン体当たりを食らわせたり、乗船員に酪酸ぶっかけたりといった妨害破壊工作をしているような連中といえば「ああ、あいつらのことか」と得心がいくだろう。

 つい先日(2009年2月6日)も、南極海で、日本の調査捕鯨船にシー・シェパードの抗議船が突っ込んだというニュースが流れた。

 シー・シェパードはアメリカの環境保護団体。「海の自然を守るために警備している」と自称してはいるものの、威嚇発砲に捕鯨船撃沈、捕鯨施設破壊などなど数々の実績(?)を持つ、ほとんど海賊みたいな連中である。

 「エコ・テロリズム」という呼び名はしたがって比喩や形容ではない。シー・シェパードは、FBIに認定された立派な(?)テロ組織なのだ。

 目的のためには手段を選ばない、テロリスト認定された環境団体はほかにも存在する。「動物を守るためなら人命が犠牲になるのもやむなし」、さらには「人類は地球にとって害悪なので滅びるべし」といわんばかりの(実際いっているんだけど)過激な活動について、まあたいていの人は「イカレている」と思っているだろう。

 だが、狂気で片づければ済む問題なのだろうか、と本書は待ったをかける。

〈ある種の狂気は、単に支離滅裂であることより、むしろ強固な論理的一貫性に端を発する。狂気には狂気の論理というものが存在するのだ〉

 著者は、「エコ・テロリズム」はきわめてアメリカ的現象、それもアメリカの歴史・思想史の〈核心部分に触れている〉〈アメリカの建国精神にまでかかわる〉現象であるという。

「自由と権利」のためなら暴力も厭わない

 19世紀にヘンリー・ソローの「非暴力による市民的不服従」から始まったはずの環境運動が、「非暴力」という肝心の一線を越えてしまった歴史、テロを正当化している「論理」を思想的に体系づけようというのが本書の目論見である。

 核心部分からいこう。エコ・テロリズムの何が「アメリカ的」だというのか。

 それはリベラリズムだ。

 アメリカという国はイギリスの植民地化から独立することで成立した。そして、奴隷解放運動、公民権運動、女性解放運動によって「自由と権利」を獲得していったわけだが、〈しかしこの自由と権利の拡大は必ずしも平和裏に行なわれたわけではなく、しばしば法の踏みこえ、場合によっては暴力さえ伴った〉

 「法」の内側で民主的に行動してもラチがあかない場合、「良心」を基準に「法」を踏みこえ血が流れることも厭わない──アメリカのリベラリズムとはそもそもそういう性格を備えたものだった。

 ところで、エコ・テロリズムとは、動物や自然や地球の「自由と権利」を求めるためには、良心を基準に法を踏みこえ暴力も辞さないという「内在論理」で動いている運動である。

 すなわちエコ・テロリズムは、この「内在論理」のあり方において、アメリカ・リベラリズムの伝統の正統な嫡子なのだ。

 それはひとまず了解したとして、疑問が二つばかり出てくる。

・リベラリズムとの相克において、「市民的不服従」の定義そのものともいえる「非暴力」を踏みこえさせたモメントはなにか?

・「動物」や「自然」や「地球」など、人間ではなかったり生物ですらなかったりするものの「自由と権利」とはなにか? またそれらの「自由と権利」を代弁することを正当化しているロジックはいかなるものか?

 この疑問に答えを見つけるには、環境運動の歴史に立ち入る必要がある。本書は全部で4章から構成されているが、第2章「ラディカル環境運動と動物解放運動」と第3章「思想史的背景」の全体が、この二つの問いへの回答になっていると見ることができる。

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