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上から目線の正論、答え合わせもばっちりです~『人声天語』
坪内 祐三著(評:朝山 実)

文春新書、940円(税別)

2009年4月8日(水)

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評者の読了時間8時間00分

人声天語』 坪内 祐三著、文春新書、940円(税別)

 この頃のテレビには、えぇっ!? と思うことがある。

 たとえば、ペアで行う、ある競技の選手へのコメント取材。CM出演もしている一人の話が終わると、カメラは横にフラれ、プチンと、次のニュースに切り替わった。「顔半分」だけで切られたほうの立場はどうなるのか。

 ザッピングしてみたが、他局では顔半分どころか最初からいないかのような扱いだった。

 視聴者の関心に応じた編集だとの反論もあろうが、いっぱいのカメラが集まったにしては、放映されるところは借り物のようにどこも同じ構図で、もう一人の存在を消していた。どうでもいいようなことではあるが、些細だからよけいに気にかかるというか。ちょっとした場面での阿吽、テレビの人たちが日ごろ批判する、土建屋の「談合」にも似た気脈のあわせ方が気にかかるのは、ワタシのへそが曲がっているからなのか。

 さて。本書は2003年から「文藝春秋」に連載されたコラムを集めたものだ。

 朝日新聞のアレに引っ掛けたとおぼしきタイトルについて、著者はパロディではないと断言し、こう説明している。

〈ここで私が強調したいのは「人声」の部分である。/つまり、「天声」ではなく「人声」。/「天声」にはハプリックなイメージがある。ある種の客観をよそおっている。/それに対して「人声」はプライベートである。あくまで個人的な声(しかもそれが、もしかしたら「天語」につながっていけるかもしれない)〉

 上から目線の正論ってどうよ? という懐疑がコラムの背骨にはあり、第一回の「万引きとビジネス」を読むだけで、著者が腹に力を込めて書いているのがうかがい知れる。

目を向けるべきはそこじゃない

 話題にしているのは、本屋で万引きして通報された少年が、逃走を図り、電車にはねられ死亡した、03年の事件。メディアで報道された直後、店には「たかが万引きで警察を呼ぶな」「人殺し」といった匿名電話が相次ぎ、店主は思い悩んで閉店を決めた。

 この一報が流れると逆に、店主を擁護する意見が殺到した。という一連の流れについて、著者はつらつらと考えを述べはじめる。

 昔も万引きはあった。しかし、どうも今はブックオフに代表される新古本屋の登場で、換金目的の万引きが増加しているとか。亡くなった少年も時代の風潮のなかの一人として扱おうとするメディアの論調を紹介したうえで、著者は「それはこれとは違うだろう」と切り返している。

〈なぜなら、その少年が万引きをはたらいたのは、新刊本屋ではなくて、他ならぬ新古本屋だったのだから〉

 少年は本が欲しくて盗んだ、昔のタイプの犯罪少年だったとみる(盗んだのは、漫画本が数冊だったらしい)。そして、こんな疑問も書き添えている。

〈匿名の悪罵が気持ちにこたえたとはいえ、その古本屋の店主が自分の判断で店を閉じてしまったことも不思議だ。なぜなら、その店は、自家営業の古本屋ではなく、フランチャイズの新古本屋であったのだから。そういう彼が店を閉じようと思ったのは、ただの心労以外の理由があったのではないか。/そのあたりのことをメディアはいっさい何も伝えてくれなかった。/個(万引き少年)と個(新古書店の店長)の問題であったはずなのに、それを一般化して、しかもその一般化は事件の真相と離れて行く。/そういうメディアの視線のずれ方に私の「人声」は異議をとなえたくなる〉

 著者がいうように、閉店の決意にほかにも事情があったかどうか知りたいところだが、ワタシにはよくわからない。コラムを読んで、あったなぁと記憶がよみがえってくるぐらいだから、当時は頻繁にニュースになっていたのだと思う。にもかかわらず、集まったマスコミのなかに、著者がいうような視点で取材したものがなかったのはどうしてなのか。

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