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横山光輝も「レッドクリフ」も描かなかった世界~『「三国志」漢詩紀行』
八木 章好著(評:山川 徹)

集英社新書、680円(税別)

2009年4月10日(金)

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評者の読了時間2時間30分

「三国志」漢詩紀行』 八木 章好著、集英社新書、680円(税別)

 私が横山光輝のマンガ「三国志」(全60巻)を読んだのは、小学校低学年のころだったと記憶している。

 あっと驚くような策略で主君・劉備の劣勢を挽回する諸葛孔明、槍や刀を振り回し何百もの敵を打ち倒す、劉備の義兄弟・関羽と張飛……。物語の筋を理解していたかは怪しいが、個性豊かな英雄たちの活躍に胸を踊らせながらページをめくった。

 そんな私が、三国志が古代中国の歴史をもとにした物語だと知ったのはいつだったか。

 そもそも三国志とは、中国大陸で、魏、呉、蜀という三つの国が争った西暦180年ころから280年までの戦乱の時代を記したもので、大きくふたつの系統に分けられる。ひとつは、歴史書としての「三国志」。もうひとつは、約1300年後の明の時代に、逸話や伝説をまとめてさらに虚構も交えてドラマチックに記された物語「三国志演義」。後者が、いま、読まれている三国志の原点だ。

 小学校卒業後、三国志から遠ざかっていたけれども、昨年末、久しぶりに三国志の世界に触れた。序盤のハイライトである赤壁の戦いを描いた、ジョン・ウー監督の映画「レッドクリフ part 1」。

 ここでも関羽と張飛の強さは群を抜いていた。矛や槍を振るうと、一気に5人から10人ほどの兵士がばたばたと倒れていく。豪傑たちの派手なアクションに、幼いころの興奮を思い出した。

 そんなとき、書店で本書を手に取った。帯の文句に惹かれたのだ。

〈白骨、平原をおおう 戦禍のルポルタージュ〉

 私は、三国志を完全なフィクションとして読んでいた。しかし、「三国志演義」は、「七分の実事、三分の虚構」といわれている。ひとりで何百人もの敵を相手にできた豪傑がいたかどうかはともかく、戦乱が100年間も続いたのは史実だ。

戦乱の世の、名も無き人々

 歴史の陰には、生活が破壊され、家族と引き裂かれた数多くの人々がいた。英雄たちに殺されて野にうち捨てられた名も無き兵士たちがいた……。

 慶應義塾大学で中国語や中国古典文学の教鞭を執る著者は、三国時代の詩人や武将たちが詠んだいくつもの漢詩を解説していく。そこには、物語では顧みられない人々が描かれていた。本書を読み進めていくと、漢詩の一語一語から現場を目撃した者しか捉えられない現実が伝わってくる。

 魏を建国した曹操の部下で、当時を代表する詩人・王粲は、治安が乱れる西の都・長安を脱出し、遥か遠い荊州に向かうなかで「七哀詩」という詩を詠んでいる。

〈西京亂無象  西京 乱れて象(みち)無く
 豺虎方遘患  豺虎(さいこ) 方(まさ)に患いを遘(かま)う
 復棄中國去  復(ま)た中国を棄てて去り
 遠身適荊蠻  身を遠ざけて荊蛮(けいばん)に適(ゆ)く

 親戚對我悲  親戚 我に対して悲しみ
 朋友相追攀  朋友 相追攀(あいついはん)す
 出門無所見  門を出でて見る所無く
 白骨蔽平原  白骨 平原を蔽(おお)う〉

 友や親戚と別れて城門を出た王粲が見たのは、戦乱により何もかも根こそぎ奪い取られた平原と、おびただしい数の白骨だった。詩は次のように続く。

〈路有飢婦人  路(みち)に飢えたる婦人有り
 抱子棄草間  子を抱きて草間(そうかん)に棄つ
 顧聞號泣聲  顧みて号泣の声を聞くも
 揮涕獨不還  涕(なみだ)を揮(ふる)いて独り還らず

 未知身死處  未だ身の死する処を知らず
 何能兩相完  何ぞ能(よ)く両(ふた)つながら相完(あいまった)からん
 驅馬棄之去  馬を駆りて之を棄てて去る
 不忍聽此言  此の言を聴くに忍びず〉

 王粲は、道ばたで赤ん坊を抱いた女性を見つける。焼け出されたのだろうか。見るからに飢えていた。その母親が、草むらに子どもを捨てた。泣き叫ぶ声を耳にして何度も振り返りながら、涙をぬぐい、その場を離れていく。

 母親は、王粲にこういった。

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