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いらないと言われた者たちのための『瞼の母――長谷川伸傑作選』
~大衆演劇が「派遣切り」を救う理由

2009年4月15日(水)

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瞼の母――長谷川伸傑作選』 長谷川伸著、国書刊行会、1900円(税抜き)

 日比谷で年末年始を生き抜く――。

 昨年末から年明けにかけて、このスローガンを掲げた東京・日比谷公園の「年越し派遣村」が、連日メディアに取り上げられた。 設置された12月31日から1月5日の撤収まで、約500人の失業者が派遣村を頼り、多くの人々がボランティアとして活動に参加。また、飲食チェーンやタクシー会社、介護施設などが失職者の受け皿になろうと手を挙げた。

 求人募集をした業界のなかでも異色だったのは、大衆演劇業界。旅役者の沢竜二さんが、日本各地を旅しながら芝居を演じる約150の劇団に声をかけ、300人を受け入れると発表した。

 大衆演劇の劇団は、10人から20人ほどで各地の劇場や温泉宿、ヘルスセンターを巡り、芝居を演じる。俳優の梅沢富美男や、人気の若手役者・早乙女太一も大衆演劇出身だ。

 なぜ、大衆演劇の劇団が失業者の雇用に乗り出したのか。旅の一座や大衆演劇を取材した経験があった私は、沢さんに話を聞きにいった。

「こんなに寒いのに、突然、仕事も住む家も失った人を本当に気の毒だと思ったんです。劇団に入れば、衣食住の心配はないし、やる気次第でいくらでも稼げる。昔から旅の一座は、困っている人や事情がある人の駆け込み寺のような役割を果たしてきました。一緒に旅をして、芝居をして、飯を食う。義理と人情がなければできません。まあ、長谷川伸先生の世界そのものですよ」

 長谷川伸。

 大衆文学の父と呼ばれ、池波正太郎や藤沢周平らの時代小説の原点とまでいわれる作家である。その戯曲や小説は、いまも大衆演劇の劇団が演じ続けている。

 本書は、昨年、没後45年周年に合わせて出版された3冊の傑作選のひとつで、七つの戯曲を集めたものだ。

複数のラストがある「瞼の母」

 表題の「瞼の母」は、長谷川伸の代表作だ。昨年、SMAPの草彅剛と女優大竹しのぶが主演を努めた舞台公演が話題を集めた。やくざ者の息子と母親の再会と別れの物語である。

 主人公・番場の忠太郎は、幼いころに生き別れた母・おはまを探す宿無しの渡世人。ようやく探し当てるのだが、おはまはやくざ者に身をやつした息子を拒絶する。おはまにも生き別れてからの人生があり、素直に喜ぶわけにはいかなかったのだ。そんな母の心情を理解した忠太郎は、再び旅に出る。

 面白いのは、いくつかのパターンのラストが用意されていることだ。あきらめきれずにもう一度、母のもとに戻ろうとする。あるいは、思い直して追ってきた母と再会を果たす……。複数のオチから伝わってくるのは、等身大に描かれた登場人物の感情の揺れや心の動きの多様さ、複雑さである。

 思い入れの深い戯曲がある。

 数年前、私は、ある大衆演劇の一座の旅に同行していた。芝居に出てみないか、と役者たちにいわれて舞台に立たせてもらった。それが本書に収録されていた「一本刀土俵入」だ。

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