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「一度行けばいい」感覚で、急に群がるお客

【店に悪い客・ケース01】

  • 吉野 信吾,ロドリゲス 井之介

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2009年4月22日(水)

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はじめに
 

 グローバル・スタンダードなどという言葉に踊らされ、「アメリカの金融工学は正しい」と信じ込んでいた人々も、米国投資銀行リーマン・ブラザーズが消え去り、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーさえも、投資銀行の看板をかけ替えざるを得ないような状況になると、今度は手のひら返しで今まで信じていたものを否定するようになりました。不況の波は人々の気持ちを、180度方向転換させてしまったのです。

 食文化にも同様のことが起こりました。景気が良い時は、都会的でハイブローな非日常的な雰囲気や料理がもてはやされますが、不況になると、一変して地味でお手頃価格のものが注目される、という図式に激変してしまいます。昨今の居酒屋、立ち飲み屋ブームなど、まさにこの象徴的なものでしょう。

 これと同じように今、店の創り手や経営側、それと対峙する客側双方で、「何が良いのか」「何が納得ものか」といった判断基準が急に捩じれてしまい、極めて分かりにくくなっているような気がしませんか。

 これまで信じ込んでいたグルメ批評や、ブログの評判、他人の意見など無視して、いま一度自分の舌と感覚、哲学に立ち戻って店を見てはどうでしょうか。他人の意見や風評に惑わされず、自分の好き嫌いに素直に従って見つめ直してみれば、新たな発見があるかもしれません。そのためには客の立場だけではなく、お店の立場にも立って、店の、経営者の、視点で考えることが大切です。

客と店、どちらも言い分はあるけれど

 「逆もまた真なり」ということわざにもあるように、反対の立場で考えてみることで「なるほど、そういう見方もあるか」と、気づくことも多い。上司と部下、嫁と姑、旦那と女房、男と女、生産者と消費者という立場を、相手側から見てみることと同じです。

 古今東西、お客とお店の関係は、金銭の授受以外にも相容れない要素が多々あります。例えば「あんな客は要らない」とお店が言えば、「おれが来なけりゃ潰れるよ」とのたまう。そうはいいながらも、昔ならお互い上手につき合う術(すべ)を知っていましたが、お店とお客の価値観はまさに地の果てまでの平行線。さらには上から目線の格付けブックや、こともあろうに国家検定でもないのに、勝手に店の格付けをしてしまうレストラン・アナリストなるものまで出現してしまう始末。お店もお店で「本当の良い客」を見抜けないばかりか、金儲けの手段としてだけの飲食業といったことが透けて見えてしまいます。

 では、一体どちらの言い分が正しいのか? 「夜と昼、どちらが本当の地球なのか」という問いに答えるように、お店とお客の双方の見地から、その言い分を検証してしまおうというのがこの企画のポイントであります。

 先にも記したように、店の評論、グルメライターのコメント、格付け、といった利用する側の目線で、お店を批評する風潮が跋扈(ばっこ)しだしてずいぶん経ちました。お店に対しての辛口の評価、さらにそれを飛び越えての罵詈雑言。一方で、確かにとんでもないお店が増えているのも事実です。驚愕に値する言語道断の店に始まり、いちばん気持ち悪い中途半端な「なんか違うんだよなぁ、すべてがいまいちなのに、勘定は一流」という具合の、消化不良のお店が多いのもこれまた事実。

一方的に店側が批判されるおかしさ

 突き詰めれば、お店の良し悪しなど、他人が人の彼女や女房の評価を下すようなもので、それこそ趣味の世界。他人がなんと言おうが、本人が満足していればそれ以上口を挟む必要もありません。同様に、お店の立場を実際経験したこともないのに、一方的に店側が批評されている状況がまかり通っているとは思いませんか。

 野球やアメリカン・フットボールでも、攻撃が終了すると、それまで攻撃していた側が、一転して防御に回ります。一方的に攻撃ばかりでは試合になりません。互いに攻守につくことによって、ゲームが成り立つばかりでなく、お互いの難しさを知るとも言えます。

 本コラムは、まさにこれと同様で、これまでお客の意見、グルメライターのコメント、店の格付け、といった利用する側の目線で一方的にやられっぱなしだった店側に、今度は少しばかり攻撃の順番が回ってきたとお考えください。「お客さんに立場があるのであれば、お店の立場というものもあるんです」というわけです。

 お客自身も、お店の言い分や理屈を理解することで、これまで以上の良い関係を築くことができるのではないでしょうか。「言われてみれば、なるほどな」と、思って頂くことができれば幸いですし、また、お店にも「客に良い店とは? 悪い店とは?」を、これまで以上に知っていただくことで、互いの理屈と立場に歩み寄ることが可能になるのではないでしょうか。そうすることで「店に良い客 客に良い店」という末永い関係ができるわけです。

 長年マスメディアに関わり続け、店舗の設計、プロデュース、メニュー開発、経営という実際に両者の立場を経験してきた私にとって、それぞれの言い分が理解できるからこそ、本コラムはお客の立場である読者の皆さんの役に必ず立つと信じています。

 あらかじめ申し上げておきたいのは、本コラムが対象としているお店の基準は、決してファミリーユースのお店でも、大手外食チェーンのお店でもありません。そして、「どうせ会社の経費だから」という気持ちで行くような手合いの店でもありません。自分の懐を痛めながら、それでもついつい足が向いてしまうような、そんな魅力を湛えた個人店を基本にしていることを念頭に置いて、読んでいただければ幸いです。

 では、さっそく本論に入りましょう。

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