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オバマになってもアメリカは変わらない~『日米同盟の正体』
孫崎 享著(評者:山岡 淳一郎)【奨】

講談社現代新書、760円(税別)

  • 山岡 淳一郎

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2009年4月17日(金)

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日米同盟の正体──迷走する安全保障
日米同盟の正体──迷走する安全保障』 孫崎 享著、講談社現代新書、760円(税別)

 「米国のリーダーシップの再生」を掲げるオバマ外交が、いよいよ動きだした。

 ロンドンのG20金融サミットで国際舞台に本格デビューしたオバマ大統領は、プラハで「核廃絶」を訴え、アンカラでは「トルコは東西が分かれる場所ではない。集う場所だ」とイスラム社会との対話路線を打ち出した。一見、ブッシュ前大統領の唯我独尊ぶりからは、大きく変わったようにみえる。

 しかし、彼は、2011年末までにイラクから米軍を完全撤退させると述べる一方で、アフガニスタンへの1万7千人増派命令をすでに出した。イラクからアフガンへ本格的に「転進」させるのは、ほぼ間違いない。また北朝鮮のミサイル発射については「国連安保理の決議違反」としつつもロシア、中国に配慮し、麻生政権の強硬路線には同調しなかった。

 オバマ外交は、国際関係をほんとうに「協調・融和」へと変革するのだろうか。米国の世界戦略のなかで、日米関係はどのように位置づけられているのか。

 「親米」にしろ、「反米」にしろ、単純化した米国観に縛られると、自らを思考停止に追い込みかねないのだが、まわりを見回すと、客観的に日米関係をとらえた書籍は案外少ない。

 本書の著者は、今春まで防衛大学で教鞭をとっていた、情報分析の専門家である。戦後の日米安保、同盟関係の流れをじつに丁寧にたどっている。

 まず、日本人は歴史的に〈第二次大戦後の米国占領期を除いて、外国の支配をほとんど受けていない〉ために国の安全に係わる戦略的思考が乏しいと指摘する。日本人は、謀(はかりごと)と聞いただけで「ありえないでしょう」と思考をストップしてしまう、と。

 しかし、古今東西の国防には謀略がつきものだ。

 著者は、ベトナム戦争やキューバ危機、シーレーン構想などで米国が巡らせた策謀を具体的に紹介したうえで、〈米国では国民の発言力がどの国よりも強いだけに、国民を誘導する謀略がどの国よりも必要となる〉と、冷静に陰謀論にアプローチした後、日米の安全保障問題のポイントを示す。

アフガンへの自衛隊派遣要請は、確実に強まる

 たとえば「同盟の非対称」論について。戦後、日本は、米国の「核の傘」の下、「専守防衛」をモットーとする自衛隊を維持してきた。米軍は、日本国内に多数の拠点を設け、アジア太平洋地域の安全保障戦略を展開している。しばしば、米国は日本を守るのに日本は米国本土を守らない、これでは非対称的で不公平、日本は他の分野でもっと米国に貢献すべき、との論が唱えられる。

 もっともらしく聞こえるが、著者は反論する。極東からインド洋までカバーする米艦隊の旗艦が横須賀港を母港とし、その重要性がますます高まっている現状や、日本政府が米軍駐留経費の75%を負担してきたのに対し、欧州の重要な米同盟国であるドイツが二十数%に留まっている事実などに触れ、こう述べる。

〈日本の米軍基地は、米国戦略の中で、自衛隊の海外展開よりはるかに重要な意義を持っている。この認識が日米安全保障体制を論ずる時の出発点である。(中略)取引は十分成立している〉

 しかしながら、冷戦終結後も、米国は強大な軍事力の維持を選択し、単独行動主義をとってきた。現在も基本的には、その方針は変わらず、日本は米国の戦略にどんどん組み込まれている。

 この一筋縄ではいかない安全保障問題を、「長いものに巻かれろ」で片付けるのではなく、じぶんの頭で考える、その自律的なスタンスが、本書の特徴である。

 昨今はやりの「敵地攻撃論」に対しても、〈……先制攻撃によって相手国の九割程度の攻撃能力を破壊することが必要となる。しかしそれは実現不可能である。かつ敵基地攻撃は北朝鮮だけに該当する議論であって、中国、ロシアにはまったく該当しない。先制攻撃をした後の展開についてまったく能力を持たない国が先制攻撃能力だけを持とうとするのは極めて危険である〉と断言。感情に左右されがちな北朝鮮への攻撃論を一蹴している。

 では、オバマ政権は、今後、どのような戦略的行動を日本に求めるだろうか。

 著者は、アフガニスタンへの自衛隊派遣の要請は確実に強まると予想する。いずれ米国の安全保障関係者は、日本に対し、「あなたがたは素晴らしい」と賛辞を並べたて、それを日本の政治家や外務省員は真に受けて動きだす、とみている。

 オバマ大統領が、あくまでもアフガンを次の「脅威」とみなし、戦争を継続するであろう理由とは何か。本書の記述をわたしなりに解釈すると、次の二つにしぼられる。

 ひとつは、米国が冷戦後、世界最強の軍隊を維持し、産軍共同体を拡張させる戦略を選んだこと。オバマといえども、その大戦略の範囲内でしか決断を下せないと考えられる。

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